ネコショカ

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2023年に読んで面白かった新書・一般書10選

『嫉妬と階級の『源氏物語』』大塚ひかり

2022-08-01から1ヶ月間の記事一覧

『カンニング少女』黒田研二が描く「カンニング大作戦!」

表紙イラストは西島大介 2006年刊行作品。黒田研二を読むのはデビュー作の『ウェディングドレス』以来。実は西島大介の表紙絵につられて購入。この人の絵はとてもキュート。素晴らしい。西島大介をイラストレータに持ってきただけで売上は一割は違うんじゃな…

『羊と鋼の森』宮下奈都 唯一無二の「森」に出会えた人生

第13回本屋大賞受賞作 2015年刊行作品。第13回の本屋大賞受賞作品。『羊と鋼の森』は「ひつじとはがねのもり」と読む(わりとそのまんま)。文庫の帯なんかだと「伝説の三冠を達成!」などとあるが、本屋大賞のほかに、第4回ブランチブックアワード大賞2015、…

『夏へのトンネル、さよならの出口』八目迷 時間を代償に、欲しいものが手に入るなら?

八目迷のデビュー作 2019年刊行作品。作者の八目迷(はちもくめい)は1994年生まれのライトノベル作家。「僕がウラシマトンネルを抜ける時」が第13回の小学館ライトノベル大賞にて「ガガガ賞」と「審査員特別賞」を受賞。同作は『夏へのトンネル、さよならの…

『君待秋ラは透きとおる』詠坂雄二が描く能力バトル!

詠坂雄二が描く能力バトルもの! 本日紹介するのは詠坂雄二(よみさか ゆうじ)の2019年刊行作品『君待秋ラは透きとおる』だ。タイトルの読みは「きみまちあきらはすきとおる」ね。 君待秋ラは透きとおる 作者:詠坂 雄二 KADOKAWA Amazon 作者の詠坂雄二は19…

『競漕海域』佐藤茂 第9回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞作品

佐藤茂のデビュー作 1997年刊行作品。第9回の日本ファンタジーノベル大賞、優秀賞受賞作品である。作者の佐藤茂(さとうしげる)は1967年生まれ。 ちなみにこの年の大賞受賞作品は井村恭一の『ベイスボイルブック』であった。 なお、文庫化はされていない模…

『『恐怖の報酬』日記 酩酊混乱紀行』恩田陸 飛行機嫌いの作家がイギリスへ!

恩田陸初のエッセイ作品 2005年刊行。講談社がかつて発行していた月刊文芸PR誌「IN☆POCKET」に2004年1月から10月にかけて連載されていた作品を単行本化したもの。 装丁はダイヤモンドビッグ社の有名な旅行ガイド『地球の歩き方』を多分にパロった仕様となっ…

『さみしさの周波数』乙一、最後のスニーカー文庫作品

「白い方」の乙一作品集 2003年作品。乙一(おついち)としては10作目の作品である。せつない系の短編群が集められた初期白乙一を代表する作品の一つと言える。 4編目の『失はれた物語』のみ書き下ろしで、それ以外は角川書店のライトノベル誌「ザ・スニーカ…

『将軍の娘』ネルソン・デミル 軍人一家の父と娘の悲劇

アメリカ陸軍を舞台としたミステリ小説 1996年刊行作品。オリジナルの米国版は1992年刊行。原題は『The General's Daughter』でわりとそのまんま。作者のネルソン・デミル(Nelson Richard DeMille)は1943年生まれのアメリカ人作家。 本作で登場したブレナー…

『神薙虚無最後の事件』紺野天龍 作中作の謎を解く多重解決ミステリの新境地

紺野天龍の館モノが登場 2022年刊行作品。講談社の小説誌『小説現代』2022年4月号に掲載(第三章まで)されていたものを、加筆修正のうえで単行本化したもの。第4章残酷な≪真実≫、第5章解き放たれた≪真実≫、そしてエピローグ部分は完全書下ろしとなる。 表紙…

『血塗られた神話』新堂冬樹 第7回メフィスト賞受賞作

新堂冬樹のデビュー作 1998年刊行作品。第7回メフィスト賞受賞作。いまやすっかりノワール系小説の書き手として地歩を固めた感のある新堂冬樹(しんどうふゆき)だが、実はメフィスト賞の出身の作家なのであった。現在では講談社以外からの作品の方が多いの…

『虐殺器官』伊藤計劃 なぜ殺すのか、大量殺戮を招く“虐殺文法”とは何か?

伊藤計劃のデビュー作 2007年刊行作品。英題『Genocidal Organ』。第7回小松左京賞の最終候補作(ちなみにこの年は受賞作「なし」)で、選には漏れたが、早川書房のハヤカワSFシリーズJコレクションから書籍化された。 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレ…

『エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談 憑かれた鏡』 ゴーリー選、イラストも描いたホラー短編集

ゴーリーが12のホラー短編をセレクト 2006年刊行作品。ダークな作風で知られる、絵本作家エドワード・ゴーリー(Edward Gorey)が、編集者時代に作品選定、及び、イラストを担当したのが本書。原題は「The Haunted Looking Glass」。解説は濱中利信が担当して…

『レべリオン』三雲岳斗 ゼロ年代の学園伝奇アクション

「レべリオン」シリーズを一気に紹介! 「レベリオン」は、2000年~2002年にかけて電撃文庫から刊行されていた作品。異世界ロボットモノだった「コールド・ゲヘナ」に続いて、立ち上げたのがこの「レベリオン」シリーズだった。三雲岳斗(みくもがくと)とし…

『あの図書館の彼女たち』ジャネット・スケスリン・チャールズ 戦時の図書館で働いた女性たちの物語

ジャネット・スケスリン・チャールズの大ヒット作 本日ご紹介する『あの図書館の彼女たち』は、2022年刊行作品。訳者は髙山祥子。オリジナルの米国版は2020年刊行で、原題は『The Paris Library』。 作者のジャネット・スケスリン・チャールズ(Janet Skeslien C…

「早川書房 夏の大感謝セール」電子書籍2000点が50%OFF~、おススメ24作品をセレクト

「早川書房 夏の大感謝セール」がやってきた! つい先月、早川の夏のセールの情報をお届けしたばかりだけど、新たに「早川書房の夏の大感謝セール」が始まったので、本ブログで紹介した作品の中から、おススメを24作をセレクトしてみた。 7月のセールは海外…

『放課後の記憶』森真沙子 25年の歳月を経て明らかになる真実

立風書房から出ていた森真沙子作品 1994年作品。今は亡き立風書房(りっぷうしょぼう)からの刊行。残念ながら文庫化はされておらず、現在では読むのが困難な作品である。電子書籍化も無し。 軽くググってみたが、ほとんどレビューが見当たらない。インター…

『イカロスの誕生日』小川一水 人が空を飛べるようになったらどうなるの?

小川一水の第5作品 2000年刊行作品。『まずは一報ポプラパレスより(河出智紀名義)』、『アース・ガード』『マリアロード・ストーリー』『こちら、郵政省特別配達課』に続く、小川一水の五作目にあたるお話。 相変わらずソノラマのカバーデザインは渋い(と…

『歪んだ創世記』積木鏡介 第6回メフィスト賞受賞作

乾くるみ、浦賀和宏との同時受賞作 1998年刊行作品。この作品も既に四半世紀近くも前の作品となってしまった。メフィスト賞の歴史も、既にけっこうな歳月になってきているよね。 積木鏡介(つみききょうすけ)は1955年生まれ。第六回メフィスト賞受賞となっ…

『黒い悪魔』佐藤賢一 黒い肌を持つフランス人将軍の物語

フランス革命を舞台とした立身出世物語 2002年刊行作品。文藝春秋の小説誌「オール讀物」の2002年1月号から12月号に連載されていた作品を単行本化したものである。 黒い悪魔 作者:佐藤 賢一 文藝春秋 Amazon 文春文庫版は2010年に登場している。 おススメ度…

『海がきこえる』氷室冴子 1990年代の高知、東京を舞台とした青春小説

氷室冴子、最後期の作品 徳間書店のアニメーション情報誌『アニメージュ』の1990年2月号から、1992年1月号にかけて連載されていた作品を大幅改稿(後述)したうえで単行本化した作品。 単行本版は1993年に刊行されている。大長編シリーズであった『銀の海 金…

『八月の博物館』瀬名秀明「ベストSF2000」で国内部門第五位

SF

今週のお題「SFといえば」ネタに便乗。本日は、少年の日の夏休みの思い出を描いた、瀬名秀明作品をご紹介したい。 瀬名秀明、三作目の作品 2000年刊行作品。『パラサイト・イブ』『ブレインヴァレー』の次に瀬名秀明(せなひであき)が世に問うた第三作。「ベ…

『十一番目の志士』司馬遼太郎 長州の暗殺剣、天童晋助の生涯を描いた作品

司馬遼太郎の幕末モノ 文芸春秋の週刊誌『週刊文春』に1965年から1966年にかけて連載されていた作品をまとめたもの。 単行本版は1967年刊行。 十一番目の志士 作者:司馬 遼太郎 文藝春秋 Amazon 最初の文春文庫版は1974年に刊行されている。文庫化に際して上…

『UNKNOWN(アンノン)』古処誠二 自衛隊基地内で起きた事件の謎

自衛隊出身のメフィスト賞作家 2000年刊行作品。第14回のメフィスト賞受賞作品。ノベルス版タイトルの『UNKNOWN』は(アンノン)と読む。 作者の古処誠二(こどころせいじ)は1970年生まれ。航空自衛隊出身と、異色の経歴を持つミステリ作家である。 ゼロ年…

『安徳天皇漂海記』宇月原晴明 漂泊する安徳帝、その奇想に痺れる

山本周五郎賞受賞作品 2006年刊行作品。本日ご紹介するのは宇月原晴明(うつきばら はるあき)の「安徳天皇漂海記(あんとくてんのうひょうかいき)」である。この年の山本周五郎賞受賞作品を受賞している。 宇月原晴明は1963年生まれ『信長 あるいは戴冠せ…