ネコショカ

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2023年に読んで面白かった新書・一般書10選

『嫉妬と階級の『源氏物語』』大塚ひかり

2023-01-01から1年間の記事一覧

『ザリガニの鳴くところ』ディーリア・オーエンズ 2021年本屋大賞翻訳小説部門第1位作品

ディーリア・オーエンズ『ザリガニの鳴くところ』のあらすじ、ネタバレ感想、犯人、タイトルの意味等、作品の魅力についてご紹介します。

『教室が、ひとりになるまで』浅倉秋成 同調圧力の檻の中で

本格ミステリ大賞、日本推理作家協会賞候補作 2019年刊行作品。筆者の浅倉秋成(あさくらあきなり)は1989年生まれ。デビュー作は2012年に講談社BOX新人賞“Powers”にてPowersを受賞した『ノワール・レヴナント』。浅倉冬至の筆名で『進撃の巨人』のノベライ…

『蕨ヶ丘(わらびがおか)物語』氷室冴子 田舎への愛に満ちたコメディ作品

『Cobalt』発表の四編を文庫化 1984年刊行作品。集英社の小説誌『Cobalt』に掲載されていた四つの短編作品をまとめたもの。あとがきを読む限り、当初から全四話での完結を企図して書かれていた作品である。 イラストは『少女小説家は死なない!』『ざ・ちぇ…

『アリアドネの声』井上真偽 無理だと思ったらそこが限界なんだ!

ミステリ系各賞上位ランクインの話題作 2023年刊行作品。書下ろし。表紙イラストは尾崎伊万里(おざきいまり)によるもの。 作者の井上真偽(いのうえまぎ)は、第51回メフィスト賞受賞作、2015年刊行の『恋と禁忌の述語論理』がデビュー作。年齢、性別不明…

『インシテミル』米澤穂信 12人の男女12の凶器、そして鍵のかからない部屋

米澤穂信が描く生き残りゲーム 2007年刊行。書き下ろし作品。学生モノが多いこの作家にしては(当時)珍しい一般?ミステリ作品だった。こういうタイプの本格作品も書けるのねと、刊行当時は少し意外に思った記憶がある。 単行本版のカバーイラストは西島大…

『死体埋め部の悔恨と青春』斜線堂有紀 承認しようそれが全ての正答だ

死体埋め部シリーズの一作目 2019年刊行作品。『キネマ探偵カレイドミステリー(全三作)』『私が大好きな小説家を殺すまで』『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』に続く、斜線堂有紀(しゃせんどうゆうき)の第四作。 web配信サービスのnoteに掲載され…

『むかしむかしあるところに、死体があってもめでたしめでたし。』青柳碧人 昔ばなしシリーズの最終巻が登場!

シリーズ累計50万部突破の人気シリーズ第三段 2023年刊行作品。双葉社から発売されている小説誌「小説推理」に2022年~2023年にかけて掲載された作品をまとめたものである。青柳碧人(あおやぎあいと)による、日本の昔話をベースにしたミステリ作品「昔ばな…

『ルピナス探偵団の当惑』津原泰水 ティーンズハートレーベルから復活した本格ミステリ

津原やすみ時代に書かれた作品をリライト 津原泰水(つはらやすみ)のデビュー作は1989年の講談社X文庫ティーンズハートの『星からきたボーイフレンド』である。当時は津原やすみ名義で作品を刊行していた。 もともと少女小説の書き手であったこの作家が、同…

『むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。』青柳碧人 昔ばなし×ミステリの第二弾!!

累計部数50万部突破の人気シリーズに 2021年刊行作品。青柳碧人(あおやぎあいと)による『むかしむかしあるところに、死体がありました。』に続く、日本の昔ばなしの世界を下敷きとした本格ミステリ短編集の第二弾である。ストーリー的な関係性はないので、…

『ゴリラ裁判の日』須藤古都離 第64回メフィスト賞受賞作品

須藤古都離のデビュー作 2023年刊行作品。第64回のメフィスト賞受賞作品である。作者の須藤古都離(すどうことり)は1987年生まれのミステリ作家。ペンネームから女性作家を想像させられたが、講談社の公式サイトを見る限り、男性作家である様子。本作『ゴリ…

『法廷遊戯』五十嵐律人 第62回メフィスト賞受賞作

五十嵐律人のデビュー作 2020年刊行作品。第62回のメフィスト賞受賞作である。 法廷遊戯 作者:五十嵐 律人 講談社 Amazon 作者の五十嵐律人(いがらしりつと)は1990年生まれ。巻末のプロフィールによると、東北大卒で司法試験合格とある。講談社の文芸サイ…

『むかしむかしあるところに、死体がありました。』青柳碧人 昔話×ミステリの楽しさ

2020年本屋大賞の第10位! 2019年刊行作品。筆者の青柳碧人(あおやぎあいと)は1980年生まれ。2009年に数学を題材としたミステリ『浜村渚の計算ノート』で、講談社Birth小説部門を受賞し小説家デビューを果たしている。デビューしてからの十年で、作品数は3…

『[少女庭国]』矢部嵩 壮大な変奏曲、少女たちに課せられた「卒業試験」

矢部嵩の第四作 2014年刊行作品。早川書房のハヤカワSFシリーズJコレクションからのリリースだった。2013年の『魔女の子供はやってこない』に続く、矢部嵩(やべたかし)の第四作となる。ちなみにタイトルの『[少女庭国]』は「[しょうじょていこく]」と読む…

『invert 城塚翡翠倒叙集』相沢沙呼 「invert」に込められた意味を考えてみよう

文庫化されたのでちょこっと修正しました。 翡翠ちゃんにまた会える! 2021年刊行作品。「雲上の晴れ間」「泡沫の審判」「信用ならない目撃者」の三篇を収録した短編(中編?)作品集。「泡沫の審判」のみ、講談社の小説誌「小説現代」の2021年1月号に掲載。…

『存在のすべてを』塩田武士 未曾有の二児同時誘拐事件と、それからの三十年

塩田武士の新たな代表作になりそう 2023年刊行作品。朝日新聞社の週刊誌「週刊朝日」の2022年4月1日号~2023年6月9日号にかけて連載されていた作品を単行本化したもの。初出時のタイトルは「未到の静けさ」だった。2023年版の週刊文春ミステリ・ベスト10では…

『ボトルネック』米澤穂信の「20代の「葬送」」として書かれた作品

米澤穂信『ボトルネック』あらすじとネタバレ感想です。「夢の剣」の意味、川守の正体、主人公の最後の選択について考察、検証しています。 古典部、小市民シリーズなどの感想も書いてます。

『スモールワールズ』一穂ミチ 歪な家族の在りかたを描いた短編集

本屋大賞で第3位&直木賞候補作 2021年刊行作品。講談社の小説誌「小説現代」に2020年~2021年にかけて掲載されていた作品を単行本化したもの。BL作品の書き手として知られていた、一穂(いちほ)ミチが、2016年の『きょうの日はさようなら』に続いて、一般…

『イクサガミ 地』今村翔吾 明治のバトルロワイアル「蟲毒」、侍たちの最後の戦い

「イクサガミ」の第二巻が登場! 2023年刊行作品。講談社の小説誌「小説現代」の2022年4月号に掲載された「壱ノ章 仏性寺弥助」に、残りの八章分を書き下ろしで追加して上梓された作品。 2022年の『イクサガミ 天』に続く、「イクサガミ」シリーズの第二巻と…

『近畿地方のある場所について』背筋 見つけてくださってありがとうございます。

情報をお持ちの方はご連絡ください 2023年刊行作品。作者の背筋(せすじ)は、KADOKAWAの小説投稿サイトカクヨムを中心に活躍している作家。年齢、性別、属性などは一切公開されていない覆面作家だ。本作『近畿地方のある場所について』がデビュー作ってこと…

『天盆(てんぼん)』王城夕紀 盤戯の優劣で立身が決まる世界の物語

王城夕紀のデビュー作 2014年刊行作品。王城夕紀(おうじょうゆうき)は1978年生まれ。本作の元となった「天の眷属」にてC★NOVELS大賞特別賞を受賞し作家デビューを果たしている。第二作に『マレ・サカチのたったひとつの贈物』、第三作に『青の数学』シリー…

『白い病』カレル・チャペック コロナ禍の今だから読みたい疫病下の世界

疫病が蔓延する世界を描いた戯曲 『白い病(Bílá nemoc)』は、チェコスロバキア(当時)の作家カレル・チャペック(Karel Čapek)が1937年に発表した戯曲である。 岩波文庫版には2020年9月とごく最近の登場である。内容的にコロナ禍の昨今、世に送り出すには…

『レーエンデ国物語』多崎礼 呪われた地、運命との出会い、人生を選ぶということ

国産の骨太ハイファンタジーが登場 2023年6月刊行作品。作者の多崎礼(たさきれい)は生年非公開の小説家。デビュー作は2006年、中央公論新社主催のC★NOVELS大賞を受賞した『煌夜祭(こうやさい)』。現代ビジネスのインタビュー記事によると23歳で広告代理…

『レモンと殺人鬼』くわがきあゆ 全キャラ怪しい!手に汗握る終盤の展開に注目!

「このミステリーがすごい!」大賞文庫グランプリ受賞作 2023年刊行作品。英題は「Lemon and murderer」とわりとそのまんま。作者のくわがきあゆは1987年生まれの小説家。2021年に『焼けた釘』で、産業編集センターが公募した第8回の「暮らしの小説大賞」を…

『おまえなんかに会いたくない』乾ルカ 10年後の同窓会、スクールカーストの闇を描く

乾ルカが描くスクールカーストモノ 2021年刊行。書下ろし作品。作者の乾ルカ(いぬいるか)は1970年生まれ。短編「夏光」(なつひかり)が、2006年の文藝春秋のオール讀物新人賞を受賞。作家デビューを果たしている。著作数は二十作を優に超えるが、恥ずかし…

『ちぎれた鎖と光の切れ端』荒木あかね 孤島に取り残された八人の男女、そして……。

荒木あかね、乱歩賞受賞後一作目 2023年刊行作品。2022年に『此の世の果ての殺人』で最年少の江戸川乱歩賞受賞を果たした、荒木あかね待望の第二作となる。『此の世の果ての殺人』は週刊文春のミステリベストテンで第5位にランクインされるなど高い評価を受…

『夜光貝のひかり』遠藤由実子 少年と少女の出会い、南の島の光と闇

遠藤由実子の第二作が登場 2023年刊行。書下ろし作品。作者の遠藤由実子(えんどうゆみこ)は1991年生まれの小説家。巻末のプロフィールを拝見する限り、本業は学校教員をされている模様。デビュー作は2019年の『うつせみ屋奇譚』。よって四年振りの新作であ…

『盤上に君はもういない』綾崎隼 ただひたすらに「愛の物語」だった!

綾崎隼が将棋小説に挑戦 2020年刊行作品。作者の綾崎隼(あやさきしゅん)は1981年生まれ。作家デビューは2010年。電撃小説大賞で選考委員奨励賞を受賞した『蒼空時雨』(応募時タイトルは『夏恋時雨』)。メディアワークス文庫を中心に、二十冊以上の著作が…

『可燃物』米澤穂信 本格ミステリ×警察小説×群馬県の魅力

米澤穂信の警察小説が登場 2023年刊行作品。文芸春秋の刊行するエンタテイメント系小説誌「オール讀物(よみもの)」に2020年~2023年にかけて、散発的に掲載されていた作品を単行本化したもの。本作には、米澤穂信(よねざわほのぶ)作品のお約束として英題…

『ロボット』カレル・チャペック 人によって作られた存在が反乱を起こしたら?

作者のカレル・チャペック(Karel Čapek)は1890年生まれのチェコスロバキア人(当時)作家、劇作家。1938年没。 本作は1920年に発表され、初演は1920年。『ロボット』のタイトルで知られているが、もともとのタイトルは『R.U.R.(Rossumovi univerzální robo…

『海がきこえるⅡ〜アイがあるから〜』氷室冴子 1990年代の恋愛シーンがよみがえる青春小説の佳品

拓と里伽子にもう一度会える 1995年刊行作品。1993年に刊行された『海がきこえる』の続編である。前作の『海がきこえる』は徳間書店のアニメ情報誌「アニメージュ」の連載作品であったが、本作は書下ろし作品として上梓されている。 前作に引き続き、表紙、…