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2023年に読んで面白かった新書・一般書10選

『嫉妬と階級の『源氏物語』』大塚ひかり

ミステリ

『虹の涯(はて)』戸田義長 天狗党の藤田小四郎を主人公とした歴史ミステリ

戸田義長の第三作 2022年刊行作品。作者の戸田義長(とだよしなが)は1963年生まれのミステリ作家。 2017年、第27回鮎川哲也賞に応募した『恋牡丹』が最終候補作となったものの、惜しくも選外に(この年の鮎川賞は今村昌弘の『屍人荘の殺人』だった)。同作…

『凶手』アンドリュー・ヴァクス 行間から溢れる狂おしいまでの哀しみ

男と女のロマン・ノワール 1994年刊行作品。オリジナルの米国版は1993年刊行。原題は『Shella』。 凶手 (Hayakawa Novels) 作者:アンドリュー ヴァクス 早川書房 Amazon かれこれ30年も前の作品ということになる。作者のアンドリュー・ヴァクス(Andrew H. Va…

『爆弾』呉勝浩 連続爆破事件を警察は止めることが出来るのか

2023年版「このミス」「ミステリが読みたい」二冠! 2022年刊行作品。筆者の呉勝浩(くれかつひろ)は1981年生まれのミステリ作家。デビュー作は、第61回の江戸川乱歩賞を受賞した2015年の『道徳の時間』だ。 その後、毎年コンスタントに新作を上梓。2018年…

『殉教カテリナ車輪』飛鳥部勝則 図像学×ミステリの面白さ

飛鳥部勝則の第一作品 1998年刊行作品。第九回鮎川哲也賞受賞作品。飛鳥部勝則(あすかべかつのり)のデビュー作である。宝島社の99年版「このミステリーがすごい!」では国内部門の12位、「本格ミステリ・ベスト10」で3位にそれぞれランクインしている。 作…

『こわれもの』浦賀和宏 終盤の怒涛の展開に驚かされる一作

浦賀和宏の初徳間作品 2002年刊行作品。 デビュー作の『記憶の果て』以降、主として安藤直樹シリーズを中心に執筆活動を続けてきた浦賀和宏(うらがかずひろ)だが、2001年の『眠りの牢獄』『彼女は存在しない』あたりから、非安藤モノも書くようになってき…

『『ギロチン城』殺人事件』北山猛邦 自動人形の謎とふたりの探偵役

北山猛邦の城シリーズ四作目 2005年刊行作品。北山猛邦(きたやまたけくに)による『『クロック城』殺人事件』 『『瑠璃城』殺人事件』『『アリス・ミラー城』殺人事件』に続く、城シリーズの四作目である。シリーズ最終作(いまのところ)ではあるが、それぞ…

『逆転美人』藤崎翔 紙の本でしかできない驚きの仕掛けを堪能しよう!

いま話題のミステリ本『逆転美人』 2022年刊行作品。作者の藤崎翔(ふじさきしょう)は、1985年生まれのミステリ作家。若いころはお笑い芸人であったことでも知られている。 デビュー作は第34回の横溝正史ミステリ大賞を受賞した『神様の裏の顔』(2014年刊…

『鴉(からす)』麻耶雄嵩 メルカトル鮎が格好いい!!

「本格ミステリ・ベスト10」で第1位! 1997年刊行作品。1998年版の「このミステリーがすごい!」の国内編で16位、「本格ミステリ・ベスト10」では1位に輝いた作品である。銘探偵メルカトル鮎が登場する長編作品としては、1991年の『翼ある闇』、 1993年の『夏…

『『アリス・ミラー城』殺人事件』北山猛邦 ルイス・キャロル作品をモチーフとした城で起こった殺人事件

北山猛邦の城シリーズ三作目 2003年刊行作品。北山猛邦(きたやまたけくに)の『『クロック城』殺人事件』 『『瑠璃城』殺人事件』に続く、城シリーズの三作目。 『アリス・ミラー城』殺人事件 (講談社ノベルス) 作者:北山 猛邦 講談社 Amazon 講談社文庫版…

『栞と嘘の季節』米澤穂信 堀川と松倉の図書委員コンビが帰ってきたよ!

図書委員シリーズの二作目 2022年刊行作品。タイトルの『栞と嘘の季節』の読みは「しおりとうそのきせつ」。作者の米澤穂信(よねざわほのぶ)としては、『黒牢城』で第166回直木三十五賞を受賞した後の第一作でもある。 「図書委員」シリーズは、東京郊外の…

『火蛾(ひが)』古泉迦十 イスラム世界を舞台とした異色のミステリ

謎のメフィスト賞作家、古泉迦十 2000年刊行作品。第17回メフィスト賞受賞作である。 タイトルの『火蛾』は「ひが」と読み、作者名の古泉迦十は「こいずみかじゅう」と読む。『火蛾』は古泉迦十のデビュー作にして、2020年現在、唯一の作品となっている。 刊…

『いざ言問はむ都鳥』澤木喬と「創元ミステリ'90」

「創元ミステリ'90」の一作として 1991年刊行作品。作者の澤木喬(さわききょう)は1961年生まれのミステリ作家。単行本版の帯に「才媛」とあるので性別は女性かと思われる。「創元ミステリ'90」の一冊としての登場であった。 いざ言問はむ都鳥 (創元ミステ…

『『瑠璃城』殺人事件』北山猛邦 時空を超えて連鎖する不可能犯罪の謎

北山猛邦の城シリーズ二作目 2002年刊行作品。デビュー作の『クロック城』殺人事件』 に続く、北山猛邦(きたやまたけくに)の城シリーズ二作目でもある。タイトルの『『瑠璃城』殺人事件』の読みは「るりじょうさつじんじけん」である。 『瑠璃城』殺人事件…

『熊の場所』初の短編集、ミステリのくびきから解き放たれた舞城王太郎

舞城王太郎の四作目 2002年刊行。「群像」掲載の二作に書き下ろし(「ピコーン!」)を加えて単行本化したもの。作中の短編「熊の場所」は第15回の三島由紀夫賞の候補作品である。 舞城王太郎(まいじょうおうたろう)としては、『煙か土か食い物』『暗闇の中…

『『クロック城』殺人事件』北山猛邦の「城」シリーズ一作目

第24回メフィスト賞受賞、北山猛邦のデビュー作 2002年刊行作品。第24回のメフィスト賞受賞作品。作者の北山猛邦(きたやまたけくに)は1979年生まれのミステリ作家。本作『『クロック城』殺人事件』がデビュー作となる。メフィスト賞応募時のタイトルは「失…

『罪の声』塩田武士 グリコ森永事件をベースとした社会派ミステリの傑作

塩田武士の代表作 2016年刊行作品。2017年本屋大賞で3位、2016年度の週刊文春ミステリーベスト10国内部門1位、第7回山田風太郎賞の受賞作品である。 作者の塩田武士(しおたたけし)は1979年生まれ。2001年の『盤上のアルファ』がデビュー作。前職は新聞記者…

『ネクロポリス』恩田陸 聖地アナザーヒルでは死者と再会できる

恩田陸最長クラスの大長編 2005年刊行作品。「小説トリッパー」の2001年冬季号から2005年春季号にかけて連載されていた作品を大幅に加筆修正の上で単行本化したもの。上下巻構成で総ページ数785ページは恩田作品中でも最長クラスの大ボリュームである。 恩田…

『赤ずきん、ピノキオ拾って死体と出会う。』青柳碧人 昔話世界ならではの特殊設定ミステリが面白い!

昔話×ミステリの第四作 2022年刊行作品。双葉社のミステリ小説誌「小説推理」で、2021年~2022年にかけて掲載されていた四作に、書下ろし一作を加えて単行本化したもの。 表紙イラストは今回も、五月女(そおとめ)ケイ子が担当している。五月女ケイ子の「濃…

『金環日蝕』阿部暁子 犯罪はわたしたちの身近なところに

阿部暁子初の単行本、社会派ミステリ 2022年刊行作品。作者の阿部暁子(あべあきこ)は1985年生まれの小説家。集英社が主宰していた公募文学賞「ロマン大賞」で、『いつまでも』(書籍刊行時のタイトルは『屋上ボーイズ』)が大賞を受賞し、2008年に作家デビ…

『君のクイズ』小川哲 奇跡の「ゼロ文字押し」は可能なのか?

2023年、本屋大賞ノミネート作品 2022年刊行作品。作者の小川哲(おがわさとし)は1986年生まれの小説家。2015年、第3回ハヤカワSFコンテストの大賞を受賞した『ユートロニカのこちら側』がデビュー作である。 既刊は以下の通り。 ユートロニカのこちら側(2…

『聖遺の天使』三雲岳斗 探偵の名はレオナルド・ダ・ヴィンチ

三雲岳斗、初の一般レーベル作品 2003年刊行作品。双葉社のミステリ雑誌「小説推理」誌の2002年7月号から2003年4月号にかけて連載されていた作品を加筆修正の上で単行本したもの。 三雲岳斗(みくもがくと)って、電撃文庫や、角川スニーカー文庫みたいな、…

『キドナプキディング 青色サヴァンと戯言遣いの娘』西尾維新 私は玖渚盾。誇らしき盾。

戯言シリーズが帰ってきた! 2023年刊行作品。驚くなかれ、西尾維新の「戯言(ざれごと)シリーズ」に、18年の歳月を経て続巻が登場した。 「戯言シリーズ」は西尾維新のデビュー作『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』に始まる全九冊のシリーズだっ…

『嘘つきなふたり』武田綾乃 “正解を選ぶだけの人生”からの逃避行

友情と嘘の物語 2022年刊行作品。作者の武田綾乃(たけだあやの)は1992年生まれの小説家。代表作はいうまでもなく2013年の『響け! ユーフォニアム』だろう。武田綾乃は同シリーズだけで10作以上の著作があるが、非ユーフォニアム系のノンシリーズも、手堅…

『ななつのこ』加納朋子 第3回鮎川哲也賞受賞の加納朋子デビュー作

「駒子シリーズ」の一作目 1992年刊行作品。作者の加納朋子(かのうともこ)は1966年生まれ。本作が第3回鮎川哲也賞を受賞しデビューを果たしている。配偶者は同じく作家の貫井徳郎(ぬくいとくろう)である。 ななつのこ 作者:加納 朋子 東京創元社 Amazon …

『悪魔の涙』ジェフリー・ディーヴァーの非リンカーン・ライム作品

リンカーン・ライムもちょこっとだけ出てきた 2000年刊行作品。オリジナルの米国版は1999年刊行で原題は『The Devil's Teardrop』。ジェフリー・ディーヴァー(Jeffery Deaver)作品としては、1998年の『コフィン・ダンサー』と、2000年の『エンプティー・チェ…

『女彫刻家』ミネット・ウォルターズ 血まみれのオブジェを作り上げた女の秘密

ミネット・ウォルターズ、二番目の作品 1995年刊行作品。『氷の家(The Ice House)』に続く、ミネット・ウォルターズ(Minette Walters)の第二作。オリジナルの英国版は1993年に刊行されていて、原題は『The Sculptress』。アメリカ探偵作家クラブによるエド…

『再愛なる聖槍』由野寿和 クリスマスイヴ、大観覧車がジャックされる

由野寿和の第一作 著者の由野寿和(ゆうやとしお)さんより作品をご恵投頂き、作品の感想を書かせていただけることになりました。由野さんありがとうございます! 『再愛なる聖槍(さいあいなるせいそう)』は2022年の刊行作品。タイトルは「再愛」であって…

『わが名はレッド』シェイマス・スミス 復讐譚を暗黒小説で

2002年「このミス」海外部門第二位 2002年刊行作品。2002年の「このミス」海外部門で第三位に入っている作品。原題は『Red Dock』。作者のシェイマス・スミス(Seamus Smyth,)はベルファスト生まれのアイルランド人。 プロフィールがかなりユニークなので引…

『フレームアウト』生垣真太郎 第27回メフィスト賞受賞作品

生垣真太郎の第一作 2003年刊行。第27回のメフィスト賞受賞作品。生垣真太郎(いけがきしんたろう)のデビュー作である。メフィスト賞にしては、少し毛色の変わった(もともと変な話ばっかりだけど)お話。アメリカを舞台とし、外国人を主人公に据えた作品で…

『少女は踊る暗い腹の中踊る』岡崎隼人 第34回メフィスト賞受賞作

岡崎隼人、最初で最後の作品 2006年刊行。第34回メフィスト賞受賞作品。作者の岡崎隼人(おかざきはやと)は1985年生まれなので、受賞時は21歳くらいか。わりかし若い作家が受賞することが多いメフィスト賞としてもかなり若い方だよね。 ノベルス版のみで文…