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『十一番目の志士』司馬遼太郎 長州の暗殺剣、天童晋助の生涯を描いた作品

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司馬遼太郎の幕末モノ

文芸春秋の週刊誌『週刊文春』に1965年から1966年にかけて連載されていた作品をまとめたもの。

単行本版は1967年刊行。

最初の文春文庫版は1974年に刊行されている。文庫化に際して上下巻に分冊されている。

2009年に新装文庫版が登場。現在手に入るのはこちらの版になるだろう。

新装版 十一番目の志士 (下) (文春文庫) 十一番目の志士(上) (文春文庫)

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

司馬遼太郎が描く幕末モノの作品がお好きな方。幕末ならだんぜん長州派だという方。暗殺剣を使う男の物語を読んでみたい方。とにかく強い男が登場する作品を読みたい方におススメ。

あらすじ

幕末の長州藩。天童晋助(てんどう しんすけ)は下層階級の出身ではあったが、稀代の風雲児高杉晋作との出会いから、その運命を激変させていく。二天一流を使う晋助の剣技が冴え渡り、京都で、大阪で、そして江戸で暗殺の剣を振るい続ける晋助。しかし突然の政変は長州をして孤立の道を歩ませることとなる。ただひとり残され剣だけを恃みに生き延びていく晋助。その壮烈な生き様を描いた歴史小説。

ここからネタバレ

天童晋助がメッチャ強い!

他と比肩すべくもない圧倒的な強さ。瞬時に危険を嗅ぎ分ける嗅覚。どんな犠牲を払ってでも必ず死地を逃れるバイタリティ。もはや人間ではないというか、動物的ですらある。これも幕末という異常な時代であればこそ、こんな人間も存在し得たのであろう、なんて思っていると解説曰く、このキャラクター完全な司馬遼太郎による創作なのであるそうな。

なお、長州藩の人斬りとしては、現在では和月伸宏のマンガ『るろうに剣心』に登場する、緋村剣心(ひむらけんしん)があまりに有名であろう。天童晋助は、剣心のルーツにあたるキャラクターなのかもと、ちょっと思っていたりもする。

架空のキャラの方が書きやすい?

しかしこれだけ生き生きとした天童晋助像を見せつけられてしまうと、よもやこの人物が架空の人間であったなぞとは到底思えない。現実世界であったなら一瞬たりとも同席は勘弁願いたいタイプだが、強烈な個性が否が応でも印象に残る。なんとも魅力的な男なのだった。司馬遼太郎はお偉い連中を描いた作品よりも、こうした名も無き下っ端連中を描いた作品の方が面白いように思える。制約が無い分好きなように書けたのだろうか。

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