ネコショカ

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『八月の博物館』瀬名秀明「ベストSF2000」で国内部門第五位


今週のお題「夏休み」ネタに便乗。本日は、少年の日の夏休みの思い出を描いた、瀬名秀明作品をご紹介したい。

瀬名秀明、三作目の作品

2000年刊行作品。『パラサイト・イブ』『ブレインヴァレー』の次に瀬名秀明が世に問うた第三作。「ベストSF2000」で国内部門第五位にランクインした作品である。

八月の博物館

角川文庫版は2003年に登場。

八月の博物館 (角川文庫)

八月の博物館 (角川文庫)

 

その後、僅か三年、2006年に新潮文庫版が登場している。

八月の博物館

八月の博物館

 

あらすじ

小学六年生の亨は夏休みのある日、謎の博物館を発見する。中心部に尖塔を持つ、青石を積み上げた左右対称の洋館。忽然と出現したその館は、古今東西世界のあらゆる場所に存在した博物館にアクセスできる夢のような場所だった。謎を読み解く鍵は古代エジプトに?美宇と名乗る奇妙な少女をパートナーに、亨の小学生時代最後の夏が始まる。

三つの物語が並行して描かれる

小学六年生の亨が体験する最後の夏休みの物語。19世紀の考古学者マリエットの物語。そしてこれらの物語を紡ぎ出す作家としての「私」の物語。これら三つの物語が並行して描かれる。作家としての「私」は、意図的に瀬名秀明自身を投影したキャラクター設定となっている。

中年読者歓喜の夏休み描写

亨パートは、昭和五十年代に小学生だった方には、間違いなく琴線触れまくりであろう。多分に『ドラえもん』へのリスペクト度高し。亨とマリエットの話だけなら、オッサン向けジュブナイル小説。ちょっといい話。しかし瀬名秀明はここで作家自身の「私」として、メタな視点をあえて物語に割り込ませる。物語の力、物語を生み出すこと、そして物語とは何なのか。壮大な入れ子仕掛けが最後にどう発動するのか。

メタ視点の功罪

技巧を凝らした構成は買うものの、このメタな視点が介在することで亨の物語がどんどん希薄になっていくのが惜しいというか、残念な点だろうか。それすらも狙って書いているのだろうけど、デビュー三作目で呻吟を重ねる作者自身の姿が透けて見えるようで、いたたまれない気持ちにさせられてしまうのである。

それでも上野の国立科学博物館には久しぶりに行きたくなった。科博はやっぱりいいよ!

八月の博物館

八月の博物館

 

博物館つながりで、菅浩江の『永遠の森 博物館惑星』もおススメ!

www.nununi.site