ネコショカ

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梨園を舞台としたミステリ、近藤史恵『散りしかたみに』


探偵今泉文吾シリーズの三作目

近藤史恵は1993年の鮎川哲也賞作品『凍える島』でデビュー。

その後、1994年に『ねむりねずみ』を上梓。これが探偵今泉文吾モノの第一作となる。梨園で起きた事件を題材にしている。本書はそのシリーズの第三作で、1998年に角川書店から刊行されている。ちなみに第二作『ガーデン』は本書より時系列的に後の作品になる。刊行順に読むべきか悩むところだ。

散りしかたみに (書き下ろし新本格ミステリー)

文庫版は2001年に登場している。

散りしかたみに (角川文庫)

散りしかたみに (角川文庫)

 

あらすじ

歌舞伎座。「本朝廿四考」の公演の度に必ず舞い落ちる桜の花びら。女形、瀬川小菊は師に命じられこの事態の調査に乗り出す。しかし探偵の今泉文吾は思わせぶりな態度を示すばかりで一向に真相を明らかにしようとしない。一人で調査を続ける小菊だったが、梨園の輝かしい栄光の陰に潜む、陰惨な悲劇を知ることになる。

三作目から読んでしまった。失敗

なんだよこれ三作目じゃん!一作目の『ねむりねずみ』と二作目の『ガーデン』は東京創元社から出ているのだが、三作目の本作は角川から出ているのである。角川のリストを見るとこの本しか掲載されてなかったので、すっかりこれが最初のエピソードなのかと思い込んでしまった。こういう紛らわしいことはやめて欲しい……。

これから読まれる方は、一作目の『ねむりねずみ』から読まれることを強くお勧めする。ってそんな間抜けなことしているのはわたしだけかもしれないけど。お恥ずかしい……。

歌舞伎の世界を舞台としたミステリ

歌舞伎の世界という特殊な環境を舞台としたこのシリーズ。この世界を知らなくてもそれなりには楽しめるだろうが、知っていればもっとよりよく堪能出来るだろう。偶然にも同じ演目を扱った北森鴻の『狂乱廿四孝』を読んでいたので助かった。

近藤史恵は学生時代に歌舞伎の研究をしていたらしく、この分野への造詣が深い。解説を読んでみると、作者がどれだけ神経を使ってこの作品を書いているのかが良くわかる。

探偵が優秀すぎるのも考えもの

こういうわかったフリをしながら、事件を静観しておいて、結局事態をより深刻な悲劇に陥らせてしまう名探偵って許しがたいと思うのだけど、最初から探偵が動いちゃうと物語が成立しなくなっちゃうから駄目なんだろうね。探偵が優秀すぎて、物語の序盤は活躍させにくくなるというのは、ミステリ作品では時折見かける現象である。

叙述系の引っ掛けは面白かった。主人公が女形というのは珍しいが、こういう職業だと、メンタリティもやっぱりノンセクシャルになってくるのだろうか。けっこう書くのが難しそう。

 

散りしかたみに (書き下ろし新本格ミステリー)

散りしかたみに (書き下ろし新本格ミステリー)

 

北森鴻の『狂乱廿四孝』の感想はこちらから。

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