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『ダブ(エ)ストン街道』浅暮三文 第8回メフィスト賞受賞作品

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浅暮三文のデビュー作

1998年刊行作品。第8回のメフィスト賞受賞作である。

最近のメフィスト賞作品は、ソフトカバー形態で刊行されるケースが多い。しかし初期のメフィスト賞作品では、ノベルス形態で登場することが多かった。

ただ、本作に関してはそのいずれでもなく、ハードカバー形態での登場であった。メフィスト賞には、時々こういう例外がある。第25回の日明恩『それでも、警官は微笑う』とか、第26回の石黒耀『死都日本』あたりもそう。いわゆる狭義のミステリから逸れている作品だからかな、それともそれだけ評価された作品と言うことなのだろうか。

ダブ(エ)ストン街道 (Mephisto club)

 2003年には講談社文庫版が登場している。

ダブ(エ)ストン街道 (講談社文庫)

ダブ(エ)ストン街道 (講談社文庫)

 

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

メフィスト賞作品の懐の深さを知りたい方、メフィスト賞らしからぬ奇妙な作品を読んでみたい方。ミステリよりもファンタジーが好き!という方。ファンタジーノベル大賞系の作品が好きな方におススメ。

日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作まで残った作品

ファンタジーノベル大賞のマニアや、ミステリ愛好家たちであれば、比較的知られてるネタだと思うが、本作は第8回の日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作のひとつでもある。

ご本人のサイトにも書いてあった。以下、該当部分を引用させて頂く。

三十の頃、やっと投稿作が最終選考までいき、ちゃんと勉強しようと森下一仁先生の門下生となる。ただただ、七年修行する。ついに初めて長編五百枚を仕上げ、投稿、最終手前までいく。勢いをかって次作も長編、同じ賞に応募、最終候補に残る。ファンタジーノベル大賞だった。しかし受賞を逃し、悶々とするも、もったいないので丁寧に全面改稿をして違う賞に投稿。別作にとりかかっていると、それで受賞してしまう。まさに捨てる神あれば拾う神あり。なんとかデビュー。

朝暮三文公式サイトGURE GROOVE  本人による略歴より

この年のファンタジーノベル大賞は大賞が該当無しで、優秀賞が葉月堅の『アイランド』と、城戸光子(鬼籍に入られてしまった)の『青猫屋』の二作だった。メフィスト賞と、日本ファンタジーノベル大賞、双方の賞に同じ作品でここまで絡んだ作品も、そうそうないのではないだろうか?

あらすじ

夢遊病により失踪した恋人タニヤを追って、遙かなる幻の島ダブ(エ)ストンへとたどり着いたケン。そこは一年中深い霧に閉ざされた不思議な国で、誰もが道に迷いあてどなく彷徨い続けていた。偶然出会った郵便配達夫アップルに同行することになったケンは、恋人の手がかりを求めて、最大の街ドサイへと向かう。

ここからネタバレ

ファンタジーノベル大賞は島が舞台になりやすい?

何故かファンタジーノベル大賞は「島」モノが多い。原岳人の『なんか島開拓誌』、池上永一の『バガージマヌパナス』、葉月堅の『アイランド』、井村恭一の『ベイスボイル・ブック』、沢村凛の『ヤンのいた島』、そして本作とざっと数えてみるだけでも6作もある。大陸という名の現実世界から離れた、地続きでないという安心感?が、ファンタジックな世界観を構成しやすくするのだろうか。あ、いかんいかん、本作はメフィスト賞の受賞作品であった。

ミステリ色の薄い異色のメフィスト賞作品

島中の人間が道に迷い続けるというとぼけた設定の本作。人語を解するモンスターや、暢気な王様とその主従、迷惑きわまりない勘違い野郎の白雪仮面と、全編に漂うトホホ感が秀逸。だいたい地名としてのダブ(エ)ストンですら、ダブエストンだったり、ダブストンだったり、はたまたダベットンだったりと全然統一されてなくて、この辺の適当さ加減も素晴らしい。異色作揃いのメフィスト賞にあっても、これだけミステリ色が薄い作品も珍しい。

といっても、メフィスト賞はミステリ界の一芸入試、エッジの立ち過ぎたハナシも多いので、異色作は目白押しではあるのだが……。

ダブ(エ)ストン街道 (Mephisto club)

ダブ(エ)ストン街道 (Mephisto club)

 

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