ネコショカ

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メフィスト賞受賞作、浅暮三文の『ダブ(エ)ストン街道』は異色のミステリ作品


第8回メフィスト賞受賞作 

1998年刊行。第8回のメフィスト賞受賞作だが、ノベルスの形態でなく、単行本として上梓された。メフィスト賞と言えば、講談社ノベルスで受賞作が刊行されるという印象が強いが、たまにこういう例外がある。第26回の石黒耀『死都日本』とか、第39回の二郎遊真『マネーロード』、最近だと第52回の宮西真冬『誰かが見ている』なんかもそう。いわゆる狭義のミステリから逸れている作品だからかな、それともそれだけ評価された作品と言うことなのだろうか。

ダブ(エ)ストン街道 (Mephisto club)

ダブ(エ)ストン街道 (Mephisto club)

 

 2003年には文庫版が登場している。

ダブ(エ)ストン街道 (講談社文庫)

ダブ(エ)ストン街道 (講談社文庫)

 

日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作まで残った作品でもある 

ファンタジーノベル大賞のマニアや、ミステリ愛好家たちであれば、比較的知られてるネタだと思うが、本作は第8回の日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作のひとつでもある。

ご本人のサイトにも書いてあった。以下、該当部分を引用させて頂く。

三十の頃、やっと投稿作が最終選考までいき、ちゃんと勉強しようと森下一仁先生の門下生となる。ただただ、七年修行する。ついに初めて長編五百枚を仕上げ、投稿、最終手前までいく。勢いをかって次作も長編、同じ賞に応募、最終候補に残る。ファンタジーノベル大賞だった。しかし受賞を逃し、悶々とするも、もったいないので丁寧に全面改稿をして違う賞に投稿。別作にとりかかっていると、それで受賞してしまう。まさに捨てる神あれば拾う神あり。なんとかデビュー。

朝暮三文公式サイトGURE GROOVE  本人による略歴より

この年のファンタジーノベル大賞は大賞が該当無しで、優秀賞が葉月堅の『アイランド』と、城戸光子(鬼籍に入られてしまった)の『青猫屋』の二作だった。メフィスト賞と、日本ファンタジーノベル大賞、双方の賞に同じ作品でここまで絡んだ作品も、そうそうないのではないだろうか?

あらすじ

夢遊病により失踪した恋人タニヤを追って、遙かなる幻の島ダブ(エ)ストンへとたどり着いたケン。そこは一年中深い霧に閉ざされた不思議な国で、誰もが道に迷いあてどなく彷徨い続けていた。偶然出会った郵便配達夫アップルに同行することになったケンは、恋人の手がかりを求めて、最大の街ドサイへと向かう。

ファンタジーノベル大賞は島が舞台になりやすい?

何故かファンタジーノベル大賞は「島」モノが多い。原岳人の『なんか島開拓誌』、池上永一の『バガージマヌパナス』、葉月堅の『アイランド』、井村恭一の『ベイスボイル・ブック』、沢村凛の『ヤンのいた島』、そして本作とざっと数えてみるだけでも6作もある。大陸という名の現実世界から離れた、地続きでないという安心感?が、ファンタジックな世界観を構成しやすくするのだろうか。あ、いかんいかん、本作はメフィスト賞の受賞作品であった。

ミステリ色の薄い異色のメフィスト賞作品

島中の人間が道に迷い続けるというとぼけた設定の本作。人語を解するモンスターや、暢気な王様とその主従、迷惑きわまりない勘違い野郎の白雪仮面と、全編に漂うトホホ感が秀逸。だいたい地名としてのダブ(エ)ストンですら、ダブエストンだったり、ダブストンだったり、はたまたダベットンだったりと全然統一されてなくて、この辺の適当さ加減も素晴らしい。異色作揃いのメフィスト賞にあっても、これだけミステリ色が薄い作品も珍しい。

といっても、メフィスト賞はミステリ界の一芸入試、エッジの立ち過ぎたハナシも多いので、異色作は目白押しではあるのだが……。