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『E.G.コンバット』秋山瑞人、未完のデビュー作、『E.G. Final』はいつ出るんだ~

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『E.G.コンバット』は秋山瑞人のデビュー作

『E.G.コンバット』は1998年作品。もう20年も前の作品になるわけだが、これが秋山瑞人(あきやま みずひと)のデビュー作。「原作/イラスト☆よしみる」となっている。本作に先行して、☆よしみるによるコミック版があるみたいなのだけれども、単行本化されておらず月刊コミックコンプに単発で掲載された読み切り作品らしい(未読なんだよね)。

E.G.コンバット (電撃文庫)

よって、秋山瑞人のオリジナル作品というよりは、ノベライズの領域に属する作品なのだと思う。いろいろ加筆され、魔改造されて、完全にもはや秋山オリジナルの作品になっている気はするけど。

でも、読み切りのコミック作品をノベライズするの?という疑問が出てくるのだけど、これ結局なんだったのだろう。もっと、メディア展開されていく予定があったのだろうか?

※2023/1/31追記

前から噂されていた電子書籍版がついにリリース!ついでに書影画像も綺麗になっていたので差し替えておいた。この機会に是非とも読むべし!

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★★(最大★5つ)

秋山瑞人って聞いたことがあるけど、著作は読んだことがない方。デビュー時の秋山瑞人はどんな作品を書いていたのか知りたい方。完結してない、肝心なところで「つづく」になっていても耐えられる方。何年でも何十年でも続編を待てるドMな方におススメ!

ここからネタバレ

『E.G.コンバット』あらすじ

西暦2067年。救世軍きってのエリートにしてアイドル。北米総司令部最年少大尉、ルノア・キササゲは最前線の地球から、急遽月へと配置転換される。犬猿の仲であるラセレーナ大尉の画策により、現場を外され、訓練校オルドリンの教官へと追いやられたのだ。しかし彼女を待ち受けていたのは、訓練校きっての劣等生アマルス隊の面々。ルノアの常識を超えた猛特訓がオルドリンに大旋風を巻き起こす。

『ガンパレードマーチ』っぽい世界観?

表紙絵の☆よしみるイラストに追従するように、登場人物は全て女の子。天然系から眼鏡っ子、不良娘までポイントは手堅く押さえてある。

しかしながら、うって変わってこの世界の設定はハードだ。「プラネリアム」と呼ばれる謎の敵性生物により存亡の危機に立たされた人類。その人口は激減し現在では僅かに5億を数えるのみ。「プラネリアム」の女ばかりを狙って殺戮する特性から、全ての女性が月へと強制移住させられ、残った男たちは地球上でぎりぎりの攻防を繰り広げている。なんとなく『ガンパレードマーチ』(もうこの例えわからない人いるよね)っぽい世界観だ。

高機動幻想ガンパレード・マーチ

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王道の「ダメチーム再生譚」として手堅く描けてる

エリート主人公が落ちこぼれだらけのグループを率いて立て直すという、いわゆる「ダメチーム再生譚」。中盤までは紹介も兼ねて教え子五人組のダメっぷりをひたすらアピール。処女作ながら独特の改行の間を持つ秋山節は既に健在で、的確にツボを突いてくる泣かせ、随所に挿入されるエスエフ的蘊蓄のバランスも良く、この時点でライトノベル書きとしては頭一つ抜けている感がある。ラストのカタルシスシーンも綺麗に決まり一作目としては十分及第点。

 

『E.G.コンバット 2nd』このころはけっこう書いていた秋山瑞人

シリーズ二作目となる『E.G.コンバット 2nd』は1998年の刊行作品。

前作からなんと僅か半年で二作目が出ている。しかもこの間には『鉄コミュニケイション』の1巻が挟まっているので、恐ろしいことに半年で三冊も書いている!今では考えられないペースだ。これくらいのペースで書いてくれていたら、もう完結してただろうに(遠い目)。

E.G.コンバット2nd (電撃文庫)

シリーズ二作目の本巻では、最初の難関をクリアしたルノア隊に訪れる新たなる試練、哨戒任務同行演習の顛末を描く。段々ハードな話になってきたぞ。

『E.G.コンバット 2nd』あらすじ

緊急出撃訓練の大成功から俄に注目を浴びることになったアマルス隊改めルノア隊。彼女とメンバーとの間には着実に信頼関係が育ちつつあった。しかし難関の哨戒任務同行演習を前にしてルノアは突然隊の指揮権を放棄してしまう。よりによってライバルチームカデナ隊の教官となってしまったのだ。その背景にはまたしてもラセレーナの暗躍があるようなのだが……。

ギャグモードからハードモードへの転換

ほんわかドタバタお笑いモードが突如として容赦ないシリアスモードへ切り替わるのはこの作者ならではの非情さ。作品世界の状況設定が既に相当ハードなので、登場人物たちに悲惨な運命が訪れるであろうということは、予想しておいてしかるべきところではあるが、相変わらずやることが鬼畜だ。

今回はとにかく全編ひたすら、ただ一身に流体脊髄素子「GARP」のための巻。人口生命体の見せる無私の忠誠が心に沁みた。動物だったり、人工知能だったり、「人ならざるもの」の想いの見せ方、読ませ方がすっごく上手。この頃から既にこれは秋山節の王道パターンだったんだなと、今にしてよくわかる。

『E.G.コンバット 3rd』ここで終わりなのはつらい

シリーズ三作目となる『E.G.コンバット 3rd』は1999年の作品。

前作からおよそ7ヶ月で三作目。今回も2巻と3巻の間には『鉄コミュニケイション』の2巻が刊行されているので、実質3ヶ月で1作か。最近でもこのくらいのペースで書いてくれればいいのにね。

E.G.コンバット3rd (電撃文庫)

☆よしみるはこの時期3DCGに夢中だったようで、口絵の半分が3D。3Dイラストだけなのは寂しい。しかもルノアだけだし。この点は激しく残念。反省して欲しい。

『E.G.コンバット3rd』あらすじ

ルノアを庇った罰として懲罰独房入りを命じられたカデナ。不当な判決、意図的な情報遮断、およそ実戦的とは言えない指導要綱、救世軍のあり方に疑問を感じ始めたルノアの元へ、宿敵ラセレーナから助けを求める暗号文書が届けられる。地球では今何が起きているのか。真実を確かめるべく、ルノア隊の一行は軍紀を犯し脱走を図る。

ようやく物語の謎に迫り始めるけど……

今回の犠牲者はカデナ。秋山作品で、巻の冒頭部分で思わせぶりな使われ方をしたら注意信号だ。前回のGARPといい、かなりの確率で終盤、悲惨な目に遭うことになる。それでも安易な事故犠牲に走らなかったのは高評価。カデナのルノア好き好きぶりは1巻から丁寧に書き込まれているだけに、終盤の暗転部分では無理なく感情移入することが出来た。

本巻ではようやく物語の謎に迫り始める。いかにルノアがエリートであるとは言え、おまけを何人も引き連れて、こうも簡単に脱走が成功してしまうのは何らかの意志が背後に秘められているのではないかと思いたい。

『E.G. Final』はいつ出るの??

以上、『E.G.コンバット』の既刊三冊をご紹介してみた。ちなみに現時点では未完。

『E.G.コンバット』シリーズは、本来、全4巻構成を予定されており、最終巻の『E.G.コンバット Final』は2001年のリリースを周知されていた。しかし最終巻の「E.G.コンバットFinal」は未だに発売されていない。実はこのシリーズ既に20年以上も続きが出ていないのだ。『E.G. Final』は何時出るんだ~。

ファンとしてはもはや諦観の境地だが、果たして続きは出るのだろうか。

wikipedia経由での情報だと、

E.G.コンバットFinal(予定。『電撃hp』Volume10では2001年6月10日に発売予定となっているが、10年以上が経過した2015年11月現在でも発売の兆候はない。ちなみに作者は講演会で、上下巻バージョンと全3巻バージョンのものは最後まで書き上げ編集者に渡している。その原稿データは手元にない。現在の全4巻バージョンはネタを使い切ってしまっており、続きを書くのはちょっとしんどい。と述べている。)

とあるので、完結はなんだか絶望的な感じ。でもあれからかなり歳月が過ぎているわけだし、そろそろなんとかなったりしないのだろうか。 

などと思っていたら、Twitterでこんな情報を発見。2020年10月時点の話題。☆よしみる発の情報だけに信憑性は高そう。

とはいえ、既にこれから一年経過してるので、結局出なかったのか……。待っている読者は多いと思うので、なんとかなって欲しいよね。

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