方向模索中の本読みBlog

書評Blogの予定だけど、現在方向性模索中。基本ネタバレありなので注意してね。

大澤武男「ユダヤ人とローマ帝国」歴史の因果の深さを知る

 

2001年刊行。筆者の大澤武男は1942年生まれの歴史家。

ユダヤ人とローマ帝国 (講談社現代新書)

ユダヤ人とローマ帝国 (講談社現代新書)

 

内容はこんな感じ

第二次大戦中、ナチス・ドイツの大弾圧により悲劇的な運命をたどったユダヤ民族。この大虐殺の淵源は遙か紀元前に遡ることが出来た。ユダヤ民族のなりたちから独立国家の建国、そしてその崩壊、更にローマ帝国による被支配の歴史を通観。帝国内でのキリスト教の台頭により、次第に追いつめられていくユダヤ人の姿を描く。

キリスト教会がユダヤ民族に対しておこなったこと

ユダヤ民族への弾圧は今世紀に入ってからのことではなく、中世から近代に至るまで延々と続いてきたことは史実として知ってはいた。しかしキリスト教がユダヤ教を母胎として発生した宗教でありながら、どうしてこれほどまでに両者が対立するようになったのかは、今ひとつピンときていなかった。それだけに本書の存在は有り難かった。初期キリスト教会がユダヤ民族に対して行った、「生かさず」されど「殺さず」の施策の数々は非常に衝撃的。

こじれるのも仕方ない

ユダヤ民族がその王国を滅ぼされたのはなんと紀元前の話だ。国を失い、奴隷にされ各地に逃散しながらも民族的な同一性を保ちつつ、二千年以上も後に遂に自らの王国を取り戻しイスラエルを建国する。こんな数奇な歴史を持つ民族は史上他には存在しないだろう。現代でのイスラエルの存在は紛争の火種として、世界を焦臭くさせているのだが、この民族の歴史を考えると問題の解決はどう考えても容易ではないだろう。本書を読んで痛切にそれを感じた。