ネコショカ

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『<骨牌使い>の鏡』五代ゆう、国産ファンタジーの傑作


続篇グインサーガの書き手としてばかり、五代ゆうを取り上げてきたが、彼女は国産ファンタジーの書き手としても以前より実績のある作家である。ここで改めて代表作の一つ『<骨牌使い>の鏡』を紹介しておこう。

五代ゆうの代表作

 

2000年刊行作品。「骨牌使い」にはフォーチュン・テラーのルビが当てられている。ライトノベルでいきなりハードカバー(富士見書房)から出るのは珍しいよね。だが、それだけのクオリティは十分保証できる一作である。

“骨牌使い(フォーチュン・テラー)”の鏡 (ファンタジー・エッセンシャル)

富士見ファンタジア文庫版は2006年刊行。文庫化にあたり加筆修正されている。

“骨牌使い(フォーチュン・テラー)”の鏡〈1〉 (富士見ファンタジア文庫)

“骨牌使い(フォーチュン・テラー)”の鏡〈1〉 (富士見ファンタジア文庫)

 
“骨牌使い(フォーチュン・テラー)”の鏡〈2〉 (富士見ファンタジア文庫)

“骨牌使い(フォーチュン・テラー)”の鏡〈2〉 (富士見ファンタジア文庫)

 
(骨牌使い)の鏡 (3) (富士見ファンタジア文庫)

(骨牌使い)の鏡 (3) (富士見ファンタジア文庫)

 

更に、2015年にハヤカワ文庫版も登場している。こちらは上下巻構成。この際に電子書籍化も行われた。富士見版はデジタル非対応だったからありがたいことである。

〈骨牌使い(フォーチュン・テラー)〉の鏡 (上)(ハヤカワ文庫JA)

〈骨牌使い(フォーチュン・テラー)〉の鏡 (上)(ハヤカワ文庫JA)

 
〈骨牌使い(フォーチュン・テラー)〉の鏡(下)(ハヤカワ文庫JA)

〈骨牌使い(フォーチュン・テラー)〉の鏡(下)(ハヤカワ文庫JA)

 

あらすじ

望まれぬ子として生まれた少女アトリは<骨牌>を使った占いをしながら生計を立てている。稼ぎ場である娼館<斥候館>で彼女は奇妙な青年ロナーに出会う。彼を占った骨牌の札は死と破滅を意味する<月の鎌>。不吉な結果にアトリは戦慄を覚える。それは世界の運命を賭した過酷な戦いの始まりだった。骨牌の持つ真の力とは。そしてアトリに秘められた驚くべき出生の秘密とは。

貴種流離譚的な王道展開

本作はパターンとしては非常にオーソドックスな構成の物語だ。辺境に生まれたヒロインが実は高貴なお生まれでした。すごい力を持ってましたと、『西の善き魔女』を想起させられるような展開なのである。超越的な「真の骨牌」の力を受け継いだ<骨牌使い>がこの世には何人か存在する。通常12枚の骨牌だが、禁忌にして最大の力を持つ13枚目が実は存在し、その力を受け継ぐのがヒロインでしたという設定である。典型的な展開ではあるが、心身共に成長し本来の力に目覚めていく過程は、読んでいてとても痛快で気持ちが良いのだ。

作り込まれたファンタジー空間

ファンタジーとしてはきわめてまっとうに取り組んだ意欲作。異世界なのに、時間の単位に「1時間」とか使って読者を萎えさせたりしない。世界観の作り込みはしっかりしている。それだけに読み始めの頃はなかなか世界観が飲み込めずにもどかしくもあるのだが、この世界ならではの価値観、約束事が理解出来てくると面白くなってくる。

魅力的な異世界を構築できたことは評価すべきだろう。惜しむらくは敵側の描写が足りなかったこと。もう少し個々の敵側キャラクターの内面をえぐって欲しかった。モーウェンナの選択とその結果として与えられた運命はなかなかに素敵なエピソードだったのだけど、途中の経過をすっとばしていきなりアレだったので、少々惜しいと思ってしまった。

とはいえ、ファンタジー好きなら読んでおいて損は無い一作。せっかく、ハヤカワ文庫で復刊しているので、もっと読まれて欲しい作品である。

“骨牌使い(フォーチュン・テラー)”の鏡 (ファンタジー・エッセンシャル)

“骨牌使い(フォーチュン・テラー)”の鏡 (ファンタジー・エッセンシャル)