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『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』青柳碧人 昔話×ミステリの第二弾!


西洋の昔話がミステリに!

2020年刊行作品。日本の昔話を下敷きにしたミステリ短編集『むかしむかしあるところに、死体がありました。』で好評を博した青柳碧人(あおやぎあいと)が、今度は西洋のおとぎ話をベースにミステリ短編集を出してきた!『むかしむかしあるところに、死体がありました。』は2020年(第17回)の本屋大賞で第10位にランクインするほどの人気作になったので、続篇を出してくるのは正しい選択。

赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。

『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』は双葉社の月刊小説誌「小説推理」に2019年~2020年にかけて掲載された四つの短編作品をまとめたものである。

謎を解く手がかりは、かなりわかりやすく(わざとらしく)作中に散りばめられているので、自分で推理してみたい読み手ならその点も楽しめるはず。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

気軽に手に取れるライトテイストな推理小説を探していた方。自分でも作中の謎について推理してみたい方。ちょっと変わった設定のミステリを読んでみたい方におススメ。

あらすじ

旅の途中の赤ずきんはシンデレラと呼ばれる少女に出会う。舞踏会に出かけた二人だったが、城へ向かう途中で事件に巻き込まれる(ガラスの靴の共犯者)。ヘンゼルとグレーテルの兄妹がお菓子の家で犯した罪とは?(甘い密室の崩壊)。眠り姫の国で起きた殺人事件。複雑に絡み合った事件の真相は?(眠れる森の秘密たち)。旅の終わりに、マッチ売りの少女に出会った赤ずきん。彼女の旅の目的は?(少女よ、野望のマッチを灯せ)。四編の連作短編集。

ココからネタバレ

今度は連作短編集だ!

『むかしむかしあるところに、死体がありました。』と異なる点として、『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』は連作短編の構成を取っている点が挙げられる。

本作では、とある目的をもって旅をしている赤ずきんが、「シンデレラ」「ヘンゼルとグレーテル」「眠り姫」「マッチ売りの少女」の世界に入り込み、それぞれで事件に巻き込まれる。個々の短編の解決とは別に、赤ずきん自身の目的も絡み、四編全てを通して読むと大きな物語として完結する構成である。

では、個々の作品について簡単にコメント。

ガラスの靴の共犯者

初出は「小説推理」2019年8月号。

継母と二人の姉に虐められる可哀そうな少女シンデレラに出会い、意気投合した赤ずきんは魔女のバーバラに姿を変えてもらい、王子様の舞踏会へと出かける。しかし、二人を乗せたカボチャの馬車は炭焼き職人のハンスを轢いてしまう。

元ネタは言うまでもなく「シンデレラ」。魔女からもらったガラスの靴を履いて、赤ずきんもシンデレラと一緒に舞踏会に行くという設定。赤ずきんとシンデレラで、カボチャの馬車での轢き逃げを隠蔽しようとする展開が面白い。

しかし、ノリノリでシンデレラの犯行を暴いているけど、少し前までは赤ずきん本人も死体隠蔽の共犯だったわけで、純粋にハンスの件が事故であったなら彼女も罪に問われるよね。

甘い密室の崩壊

初出は「小説推理」2019年11月号。

魔女が住むお菓子の家から、無事に逃げ延びたヘンゼルとグレーテルの兄妹。二人はお菓子の家を利用して、折から仲の悪かった継母の殺害を目論む。完全犯罪は成立するかに思えたが、たまたま現地を訪れた赤ずきんによってその罪が暴かれていく。

元ネタは「ヘンゼルとグレーテル」。物語はヘンゼルとグレーテルによる、継母殺害シーンから始まる。あらかじめ犯人が判っている、「倒叙(とうじょ)」型の作品である。グレーテルへのヘンゼルの異常な執着。敢えてボロを出して、犯行露見へと導くグレーテルの気持ちが切ない。

眠れる森の秘密たち

初出は「小説推理」2019年12月号。

古びたお城のあるグーテンシュラー王国を訪れた赤ずきんは、そこで眠り続ける美女と、彼女を見守るキッセン宰相らに出会う。街で起きた殺人事件と、焼失した眠れる美女の謎。果たして真相は?

元ネタは「眠り姫」。ただし、眠り姫本人はずっと寝ているだけである。

街の人々の抱えた秘密が大きな謎を作ってしまう。複数人の思惑が連鎖した結果、思わぬ事態が発生してしまう。仮にも一国の王女なのに、「あんなこと」のためにベッドを奪われる眠り姫がホントに可哀そう。国家の重大機密を知ってしまった赤ずきんは、そのまま亡き者にされてもおかしくなかったと思うぞ。

少女よ野望のマッチを灯せ

初出は「小説推理」2020年2月号。

貧しい少女エレンは、マッチを擦ると「自分の見たい夢をみることが出来る能力」を天使から授かる。叔父のマッチ工場を乗っ取り、天使からもらった能力を使い、巨万の富を築くエレン。しかし、そこに赤ずきんが訪れたことでその運命は暗転していく。

元ネタは「マッチ売りの少女」。エレンが作ったマッチを擦ると「見たい夢をみることが出来る」。結果として、世の中にはマッチの幻影に心を奪われる廃人が続々と出現してしまう(酷い!)。赤ずきんの祖母は、エレンのマッチにより廃人となってしまっている。ここでようやく赤ずきんの旅の目的が「マッチ売りの少女を殺す」ためであることが判明するのである。

これまでのエピソードで登場した魔女のバーバラや、てんとうむしのエイミー、伊達男のナップたちが再登場。最終話らしい盛り上がりを見せて本作は幕を閉じる。それにしても、最後の物理トリックは強引に過ぎるような……。エレンも自分の金で作らせているなら、構造の確認くらいしておこうよ。

赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。

赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。

  • 作者:青柳碧人
  • 発売日: 2020/08/19
  • メディア: Kindle版
 

前作『むかしむかしあるところに、死体がありました。』の感想はこちら!