ネコショカ

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壮絶な潜入レポート『アマゾンドットコムの光と影』


 

ユニクロ潜入前に書かれたアマゾン潜入記

2005年刊行作品。筆者は1963年生まれ。

物流業界紙の編集長を経てフリーのジャーナリストに。ネット全盛の昨今にあってそれでも頑なに現場主義を守る、との著者紹介文にもあるとおり、半年にも渡って実際のアマゾンの物流センターにアルバイトとして勤務。その実体験に元に、急成長を遂げたアマゾンドットコムの内面に切り込んでみようとした意欲的な作品が本書である。

アマゾン・ドット・コムの光と影

アマゾン・ドット・コムの光と影

 

今となっては本書よりも、2011年に刊行された『ユニクロ帝国の光と影』の方が有名かもしれない。下の書影は2013年に出た文庫版。

ユニクロ帝国の光と影 (文春文庫)

ユニクロ帝国の光と影 (文春文庫)

 

つまり筆者は潜入調査のプロなのである。このアマゾンでの体験を元に、筆者は潜入調査のノウハウを獲得していったのであろう。

内容

2000年の日本上陸以後、着実に勢力を伸ばし、僅か五年で、独走状態を築き上げつつあるアマゾンジャパン。売上規模も公開されず、取材もほとんど受けない徹底した秘密主義。出版界のタブーに挑戦し勝利した強さの秘密はどこにあるのか。筆者自らがアマゾンの物流センターに潜入取材を敢行。巨大な市場を支える流通システムの実態を暴き出す。

謎の企業アマゾンジャパンだった

アマゾンジャパンは米国アマゾンのアジア部門の一子会社に過ぎず、単体での上場もしていないことから実は年間の売上金額すら公開されていない。本書の推定では2003年でその売り上げは実に500億。これは紀伊国屋や丸善といったリアル書店大手に継ぐ実績なのだそうだ。

なお、本書の執筆から十余年を経た、アマゾンジャパンの推定売り上げはなんと1.3兆円!すさまじい成長力である。

netshop.impress.co.jp

なお、つい昨日の報道だが、アマゾンジャパンの経団連入りが報道されている。さすがにこの規模の売り上げに達すると、経済への影響力は甚大であり、なんらかの役割は担わされてしまうということなのかな。とはいえ、なにせアマゾンなので巧みにその立場を利用して振る舞って来るだろうけどね。

www.itmedia.co.jp

壮絶な体験レポート

自らアマゾンの物流センターにアルバイトとして勤務。しかも半年間って凄すぎる。この物流センター、時給900円(後に850円にダウン)、契約は二ヶ月単位、昇給無し、交通費支給無し、冬でも暖房無し、そして残業すらさせない緻密なシフト管理と、コストを下げるための寒々としたノウハウがこれでもかとばかり凝縮された労働現場なのだ。学生時代にトーハンで似たようなバイトやっていたことがあったけど、ココほど徹底しては居なかったなあ。

いくらITだハイテクだともてはやされても、こうしたリアルな部分で動く現場は常に必要で、極限までにコストを切りつめるためにはこの部分を絞り上げるしかない。そこで働く人間の生の声が伝わってくるのは潜入ルポならでは。

でもこの本読んで「なんだ我が社ももっとコストカット出来るじゃん」って素直に感心してしまう連中も当たり前のようにいるんだろうな。暗澹たる思いがすると同時に、それはそれで仕方のないことなのではと納得してしまう自分もいたりする。

ただ、あまり真相には迫れていない印象

しかし物流センターのルポは迫真の出来で非常に興味深く読めたのだが、肝心のアマゾンの実態についてはあまりに非公開情報が多すぎるせいかどうもぱっとしない内容。切り込もうにも分厚い秘密主義のベールに阻まれて、結局のところなんだかよくわかりませんでしたとボカされてしまっている感があってとても残念。

ただ、2010年に文庫版が刊行されており、その際に大幅な加筆が施されているので、読むならこちらがおススメかと。というか、こちらを読んでみないとね。

潜入ルポ アマゾン・ドット・コム (朝日文庫)

潜入ルポ アマゾン・ドット・コム (朝日文庫)