「ブギーポップ」シリーズの外伝
本日は懐かしの上遠野浩平(かどのこうへい)作品。『ビートのディシプリン』SIDE1~4まで、全四作を一気にご紹介したい。
本作は上遠野浩平の代表作「ブギーポップ」シリーズの外伝的なエピソードである。ブギーポップ本人は登場しないものの、フォルティッシモや統和機構などお馴染みの連中はぞろぞろ出てくるので、「ブギーポップ」読者であれば違和感なく読めるはずである。イラストも同じ緒方剛志(おがたこうじ)だしね。
逆に言うと、そうでない方には意味不明な点が多いかもしれない。けど、まあ本作を先に読んでしまう方は少ないかな。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
「ブギーポップ」シリーズは読んでるけど、外伝的な作品も読んでみたい方、能力バトル系、特に知恵と勇気で勝負する系のキャラが好きな方におススメ。
ここからネタバレ
『ビートのディシプリン SIDE1』あらすじ
統和機構の合成人間ピート・ビートはフォルティッシモの依頼により未知なる存在「カーメン」の探索を始めた。それ以来ビートの前には次から次へと刺客が現れるようになる。ふとしたことがきっかけで知り合った女子高生浅倉朝子もまたビートに巻き込まれるかのように運命を変転させられていく。
地頭の良さで勝負していくタイプの主人公
2002年刊行作品。電撃HP9号~15号までに連載されていた作品をまとめたもの。
ディシプリンとは試練のこと。決して腕っぷしが強いわけではないビートが知恵と技で数々のトラブルをかわしていくストーリー。無理矢理たとえてみると二代目ジョジョ(ジョセフ)みたいな感じだろうか。ブギーポップが出てこないせいか、文体が微妙に軽い気がするのは気のせいだろうか?
『ビートのディシプリン SIDE2』あらすじ
重傷を負ったピート・ビートは反統和機構組織<ダイアモンズ>の合成人間パールによって救われる。しかし統和機構からの刺客、バーゲン・ワーゲンの襲撃が迫る。奇しくも行動を共にすることになった人間戦闘兵器ジィドと共に反撃に転ずるビート。だが、その脳裏には忘れられない過去の残滓が蘇ろうとしていた。
ビートの過去が明かされる
2003年刊行作品。電撃HP16号~22号までに連載されていた作品をまとめたもの。
腕っ節ではなく、知恵と度胸で難局を次々と乗り越えていく統和機構の合成人間ビート君の活躍を描く第二作。今回はつなぎの巻らしく、意外に重要人物というか、実は最強キャラなのかもしれないビートの過去について詳述。モ・マーダーとか、スプーキーEとか、懐かしいけどもう覚えてないよ。何だったっけかこいつら。
「ブギーポップ」シリーズもあまりに長大な作品になってしまったので、そろそろ再読が必要かもしれない。
『ビートのディシプリン SIDE3』あらすじ
追撃者バーゲン・ワーゲンの襲撃を退けたビートたちだったが、安息の日々は長くは続かなかった。同行するラウンダバウトとジィド、二人の目的は何なのか。新たなる刺客モータル・ジム。その異様な能力は彼らを圧倒する。数々のピンチを切り抜けていくビートだったが、その行く手に最強の男フォルティッシモが立ちはだかる。
フォルティッシモ登場!
2004年刊行作品。電撃HP23号~28号までに連載されていた作品をまとめたもの。
本編の超有名キャラ、フォルティッシモが登場し、ちょっと盛り上がってきた。物語的には終わりの始まりがようやく見えてきたくらい。雑誌連載作品ってこともあるんだろうけど、一冊の本として見た場合にはなんともまとまりに書けるというか、メリハリが無くて盛り上がらないのが難点。上遠野浩平には、ここまでの長さの作品はあまり向いてないよう気もするのである。
『ビートのディシプリン SIDE4』あらすじ
フォルティッシモとの死闘を辛うじて生き延びたビートは、柊と名乗る見るからに影の薄そうな男に助けられる。一方、高代亨ことイナズマと行動を共にする浅倉朝子はリキ・ティキ・タビと名乗る謎の人物に遭遇する。ビートを追うフォルティッシモとの最後の対決の時が近づいていた。カーメンとは何なのか。いまその秘密が明らかにされる。
意外に爽やかな幕切れ
2005年刊行。電撃HP29号~35号までに連載されていた作品をまとめたもの。四年かけて遂に最終巻である。
フォルティッシモにイナズマという「ブギーポップ」シリーズ中でも最強クラスのキャラクターを揃えてきただけあって緊迫度が上がって終幕らしい派手な展開。すっかり忘れていたそもそもの謎「カーメン」の秘密がようやく白日の下に。意外にも正攻法というか、清々しいジュブナイル作品らしいオチでビックリ。
ラストがこれまた急展開で続きは別シリーズなのか、ブギー本編なのか気になるところ。どうでもいいことながら朝子はその女子高生スタイルで中東を歩くのは無理があるぞ。
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