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『血塗られた神話』新堂冬樹 第7回メフィスト賞受賞作

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新堂冬樹のデビュー作

1998年刊行作品。第7回メフィスト賞受賞作。いまやすっかりノワール系小説の書き手として地歩を固めた感のある新堂冬樹(しんどうふゆき)だが、実はメフィスト賞の出身の作家なのであった。現在では講談社以外からの作品の方が多いのでなんだか意外な気がする。

新堂冬樹は1966年生まれ。もともと金融畑(闇金融)出身らしく、本作はその当時の体験がふんだんに盛り込まれた内容となっている。特異な業界を経験してきた強みをしっかり活かして、現在に至るまで精力的に作品を発表し続けている。メフィスト賞出身の作家の中でも、成功している方の作家と言えるだろう。

血塗られた神話 (講談社ノベルス)

講談社文庫版は2001年に登場。

その後、2008年に幻冬舎文庫として再刊されている。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★★(最大★5つ)

デビュー当初の、まだ初々しい(現在からみるとかなり違和感)新堂冬樹作品を読んでみたい方。闇金融系、アンダーグラウンドな世界を舞台とした物語を読んでみたい方。ナンバリングが一桁台のメフィスト賞作品が気になっている方におススメ。

あらすじ

街金業を営む野田秋人はかつて悪魔と怖れられた程の凄腕の闇金屋だった。しかし、一人の女との出会いが野田を変えた。そして数年後。野田の会社から金を借りた男たちが次々と謎の死を遂げていく。偶然、それとも怨恨なのか。事件の調査に乗り出した野田の前に過去の闇が牙をむく。真相の背後には運命の女の影が見え隠れするのだが……。

ここからネタバレ

初々しい頃の新堂冬樹

本作はサラ金会社の社長が主人公。初書き故の初々しさが随所に溢れる作品で、どうしても稚拙に感じられてしまう描写が多いところはご愛嬌。滅多やたらに強い主人公はどうかと思うし、犯人像も現実味に欠ける。ヒロインのキャラクタの弱さも惜しい。闇金の世界に生きる男の人生観を変えるほどの、天使のような博愛主義者と言い切るにはヒロインの造形が物足りないのである。

最近のバリバリ書いている新堂冬樹作品は相応に評価されているようなので、きっと本作からかなりステップアップがなされているのだろう(ごめん読めてない)。最近の代表作も数作押さえておきたいところだ。どれだけ達者になっているのか確かめてみたい。

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