ネコショカ

小説以外の書籍感想はこちら!
2023年に読んで面白かった新書・一般書10選

『嫉妬と階級の『源氏物語』』大塚ひかり

『聖女チェレステ団の悪童』ステファノ・ベンニ 無茶なサッカーバトルが笑える

本ページはプロモーションが含まれています


イタリアのベストセラー作品

1995年刊行作品。原題「Compagnia dei Celestini」でオリジナルのイタリア版は1992年刊行。作者のステファノ・ベンニ(Stefano Benni)はイタリア人作家で1947年生まれ。邦訳されている作品は少ないながらも、本国では相応の実績を積み重ねてきている作家である模様。

聖女チェレステ団の悪童

イタリアでは初版2万部は破格の大部数らしく、刊行当時、本作はウンベルト・エーコ級の大人気作品だった(と聞いている)。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

現代イタリア人作家の作品で、イタリア(的な)場所を舞台とした作品を読んでみたい方。サッカー好きの方。予想もつかない奇想天外な展開を堪能したい方。ステファノ・ベンニに興味のある方におススメ。

あらすじ

聖女チェレステ孤児院。ここはかつての領主マリア伯爵によって娘チェレステが殺害され、その後昇天した地だった。そして現代。不気味な預言が現実とものとなり、孤児院の悪童メモリーノは仲間たちと共に孤児院を脱走。伝説のストリートサッカー大会に参加すべく旅に出る。旅の果てに彼らがたどり着いた場所では驚くべき事態が待ちかまえていた。

ここからネタバレ

現実のイタリアを風刺した物語

舞台となるグラドニア国は現代のイタリアを痛烈に風刺しながら戯画化したもので、きっと同国人であればこのキャラクターのモデルは誰それで、この団体はこれこれ、この事件の元ネタはこれと行った感じで、きっとニヤニヤしながら楽しく読めたのではなかろうか。この点、もう少し注釈があれば判りやすくて良かったのではと思う。

これに限らず、本作では様々な場面で、思わせぶりな仄めかしや、そこはかとない暗喩隠喩が多用されているので、読み手の理解度や知識量が試される。素養の無い自分としては付いていくのがやっとだったなあ。

メチャメチャなサッカーバトルが楽しい

が、実はそんなことは全くわからなくてもこの作品は十分楽しめる。孤児院地下の大迷宮での探検。謎の少女チェレステとの出会い。仲間を探し求めての波乱の旅。迫り来る追跡者からの逃避行。そして少林サッカーもかくやとも言うべき、メチャメチャなストリートサッカーバトルの数々。イタリア人こういうの好きそうだよね。

破天荒でとことんバカバカしい独特のノリは、一見とっつきにくく感じるのだが、慣れてくるとこれがまた妙に癖になる不思議な味わいなのである。ただ、一番楽しい筈のサッカーシーンがやや少なめだったことが残念といえば残念かな。

海外作品のおススメはこちら