ネコショカ

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『アース・ガード ローカル惑星防衛記』「小川一水」としてのデビュー作


「小川一水」名義で書かれた最初の作品

1998年刊行作品。1996年に第6回ジャンプ小説大賞で大賞を受賞した、河出智紀名義の『まずは一報ポプラパレスより』に続く二作目の作品である。

本作から筆名が小川一水に変わっている。つまり小川一水名義で刊行されたのは本作が最初の作品ということになる。

『強救戦艦メデューシン』『ハイウィング・ストロール』など、小川一水の初期作品は、その多くがソノラマ文庫から世に出ているが、本作はその最初の一冊でもある。

earth guard

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

デビュー当時の小川一水作品を読んでみたい方、90年代のソノラマ文庫作品を読んでみたい方、少し昔の名古屋の姿を懐かしく振り返りたい方におススメ!

あらすじ

宇宙人、広域指定窃盗犯九〇一号であるガーネットは、未開の惑星地球での生活を謳歌していた。ガーネットは不思議な力を持つ男、宗野水砂樹(そうやみさき)に追われることになるが、二人の追走劇に割って入ったのは、星間刑事警察機構(SCPO)の追跡刑事クレラードだった。彼らの知らぬところで、地球の存亡を左右する一大事が起きようとしてたのだが……。

 

↓ここからネタバレ。

90年代風ドタバタエスエフアクション

高度に発達した宇宙文明が地球に襲来。劣勢ながらもこれに対して抵抗を開始する地球人。この構図は、昔からあるお馴染みの設定で、ソノラマ文庫で同種の作品を挙げるとすれば、笹本祐一の『ARIEL』シリーズが名高いだろうか。

本作では何故か地球人に違和感なく女子高生として同化している宇宙人ガーネットと、「アース・ガード」として地球からパワーを引き出すことが出来る能力者、宗野水砂樹を軸に物語が展開していく。

90年代のソノラマ作品らしい、コメディタッチのドタバタ劇が繰り広げられる。昨今の重厚な小川一水作品と比較すると隔世の感があるのは確か。しかし、未熟な知性体としての人類と、それを見守る高度な宇宙文明という構図は、後々の小川作品でたびたび垣間見られる組み合わせで、初期のころから「らしさ」は出ているのだなと感心させられた。

愛すべき名古屋小説

 

本作ではまず最初に名古屋の地図が登場する。20年以上も前なのでかなり懐かしい印象を受ける。この作品は1998年刊行だから、名古屋ドームが出来たばかり。JRセントラルタワーは1999年竣工だからまだ存在しない。中部国際空港(セントレア)が出来るのは2005年だからまだまだ先。この頃はまだ、大名古屋ビルヂング(初代が大好きなわたし)も健在だった筈である。

今でこそ、名駅(名古屋駅)周辺は超高層ビルが林立しているが、この頃はまだ昭和の面影が残っていたギリギリ最後の時期であろうか。作中ではガーネット&宗野水砂樹と追跡刑事クレラードの戦いが、名古屋の街を舞台として華々しく繰り広げられるのである。執拗なまでに事細かに言及される名古屋地名に、中京圏以外の読者は相当に面食らったのではないだろうか。

あとがきで作者はこう書いている。

この本が、名古屋ローカルSFとでも言うべき内容になってしまったわけは、この国の東京一極集中にひとこと物申す!という気概があったからです。

『アース・ガード ローカル惑星防衛記』p284より

小川一水は岐阜県出身で、現在も愛知県在住。実力、人気共に兼ね備えた売れっ子作家となってからも、依然として地元愛を貫いているのである。

今となっては懐かしい固有名詞も散見されるが、少し前の懐かしい名古屋の街を楽しめるのも本書に魅力の一つである。

その他の小川一水作品の感想はこちらからどうぞ

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