『復活の地』シリーズの第一作
なんとなく、毎週月曜は続き物作品の紹介を続けている。先週で『導きの星』四部作の紹介が終わったので、今週からは同じく小川一水作品である『復活の地』全三巻の感想をお届けしたい。
本作は2004年刊行。ベストSF2004国内部門第三位の作品。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★★(最大★5つ)
とにかく熱い熱い物語を読みたい方、災害復興に関する作品を読みたい方、志を持った公務員たちがキチンと頑張るお話を読みたい方におススメ。
あらすじ
念願の惑星統一を果たし、宇宙進出を目前に控えていたレンカ帝国を未曾有の大地震が襲う。首都トレンカは一瞬にして壊滅的打撃を受け、国会開催中の議事堂は崩壊。皇族、政府閣僚、有力官僚たちの大多数が死亡してしまう。偶然首都に帰還していた植民地総督府の官僚セイオは、生き残りの官僚中、自身が最高位であることを知らされ愕然とする。
ココからネタバレ
小川一水が描く震災復興小説
『復活の地』は 小川一水版『日本沈没』もしくは『首都消失』とも言える災害復興シミュレーション小説だ。関西大震災、関東大震災からネタを拾っている雰囲気。かつて真保裕一は公務員を主人公とした小役人シリーズの書き手として知られたが、SF界でもっとも公務員を主人公に使っているのが小川一水だろう。本作では現場の人間ではなく、キャリア官僚(帝国高等文官)を主人公に据えている点が新しいかな。
本作では、空前の大惨事の後、困難な大都市復興事業に挑戦していく人々の戦いを描いていく。主人公の想定モデルは関東大震災後の帝都復興院総裁だった後藤新平あたりではないかと思われる。ここまで私心の無い、公僕としての生を全うしようとする堅物人間はフィクションの中にしか存在し無さそうだが、理想の公務員を描こうとする心意気を買いたい。
戦前の日本を想起させる設定
高皇を最上位とする君主制の国家体制といい、再三政治に横やりを入れる強大な陸軍、労役のために強制連行された被征服民族ジャルーダ人の存在、虎視眈々と進出の機会を狙う星間列強等々、トレンカを取り巻く状況は戦前の日本の状況に極めて近い形に擬せられていて、非常に判りやすい反面、少々被せ過ぎなのかなと冷めてしまう瞬間もあり、ちょっと加減が難しい。
第一巻の見所は主人公セイオが、僻地に飛ばされていたが故に、唯一難を逃れた第四皇女ハルハナミア内親王スミルに面会するシーン。皇族相手でもタメ口という傲岸無比なこの男が、膝を屈して摂政位への就任を請う下り。これ、作品の冒頭部分の場面なのだけれども、その後の大震災の惨状やセイオの性格が判ってくるにつれて、いかに血を吐くような魂の叫びであったかが実感出来てくるのだ。これを最初に持ってきたのは大正解だった。