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『銀盤カレイドスコープ Vol.2 フリー・プログラム』海原零 トリノ五輪編に突入!

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「銀盤カレイドスコープ」シリーズの二作目

2003年刊行。海原零による、「銀盤カレイドスコープ」シリーズの第二作である。

現実を先取りして(当時)、今回はトリノ五輪編である。この時点で作中では2006年の設定になっていた。

銀盤カレイドスコープ vol.2 フリー・プログラム:Winner takes all? (集英社スーパーダッシュ文庫)

あらすじ

オリンピック日本代表の座をつかんだ桜野タズサはショートプログラムに続いて、フリープログラムの改編にも手を付ける。幽霊のピートと共に居られるのは、奇しくもフリープログラムが行われる日まで。遂に決戦の地トリノへと乗り込んだタズサは善戦し、最終組に残るが、フリーの滑走順は大ラス。しかも女帝リアの直後。かつてないプレッシャーがのしかかる。

続々と登場するライバルたち!

タズサの霊媒生活もこの巻でオシマイ。ピートと一緒にいられるのがトリノ五輪のフリーの演技の日までってのはどうみてもご都合主義に過ぎる設定だよなあ。でも、それで盛り上がるのならばまあいいか。オリンピック編に突入で世界の強豪が続々と登場。彼女たちがメチャクチャ格好いい。リアルタイムでオリンピックを見ていた時期(当時)にこの物語を読めたのは幸せだった。

臨場感を高めるアナウンスの工夫

この作品では場内アナウンスを[ ]の記号で囲って表している。演技の前に[オン、ジ、アイス。リプレゼンティング、ジャパン。タズサ・サクラノ]なんて感じで入るんだけど、その瞬間から作品のテンションがグッと高まって、スケーターたちが作り出す世界に切り替わる。それはそれはゾクゾクするような魔法の瞬間で演出効果としては抜群。計算して書いているのだとしたらセンスいいな。

終盤の展開が熱い

フリープログラム最終グループ。誰もがノーミスで大技を決めまくる中で、最終滑走がヒロイン。しかも直前に滑るのは無敵の女王リア。猛烈に燃える展開ですなあ。もはや自らの半身ともいえる存在になっていたピートとの別れという意味合いでも涙無くしては読めない見事なクライマックス。このラストダンスには燃えた。

当初は二巻で終わる予定だった疑惑

幕引きはややあっさり目。既刊が六冊まで出ている状況で読んでいるので、ピート無き後の世界選手権でいきなり銀を取ってしまったのは驚いた。半身を失った喪失感とか葛藤って無いのか?展開が駆け足過ぎる!

想像するに、このシリーズもともとは上下巻構成で、この巻でキレイに終わる筈だったのだと思う。そもそもが新人賞の応募作品であるわけだしね。とはいえ、この二冊の評判が良くてシリーズが続いたのだと考えれば結果オーライかな。