ネコショカ

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宵野ゆめによるグイン・サーガ続篇132巻『サイロンの挽歌』


宵野ゆめパートのケイロニア編がスタート

2013年刊行。『グイン・サーガ・ワールド』5巻~8巻に掲載されていた作品を文庫化したものである。

サイロンの挽歌 (ハヤカワ文庫JA)

グイン・サーガ「正篇の続篇」は、五代ゆうと宵野ゆめ、二人の書き手を立てる異例の体制を取っていた。前巻の『パロの暗黒』は五代ゆうが担当したが、グインを中心としたケイロニアパートは宵野ゆめが担当するようである。今回は、宵野ゆめ版正篇グインの一冊目となる。

宵野ゆめプロフィール

今回は宵野ゆめのプロフィールを引用させて頂こう。

1961年東京生、千代田工科芸術専門学校卒、中島梓小説塾に参加、中島梓氏から直接指導を受けた。『宿命の宝冠』でデビュー

グイン・サーガ132巻『サイロンの挽歌』奥付より

wikipediaに記事が無かったので奥付からの引用である。栗本薫は1980年代の半ばから雑誌『JUNE』誌にて「小説道場」と題した小説家養成講座を連載していた。この講座からは、江森備や秋月こおらのプロ作家が登場しているが、宵野ゆめもその流れを汲むひとりであるようだ。

デビュー作は『グイン・サーガ・ワールド』1巻~4巻に掲載されていたグイン・サーガ外伝25巻となる『宿命の宝冠』である。

宿命の宝冠 (ハヤカワ文庫JA)

宿命の宝冠 (ハヤカワ文庫JA)

 

あらすじ

「七人の魔導師」事件から一年、復興半ばの、ケイロニアの都サイロンには新たな危機が訪れようとしていた。黒死病の蔓延、大量発生するトルク(ネズミ)、市民の怨嗟の声は<売国妃>シルヴィアに向けられ、各地で暴動が頻発する。激発した人々の群れは、シルヴィアの住まう闇が丘へと向かう。

この巻で起こること

前巻同様に、未読の方が斜め読みしても判るように、当該巻で発生した主要イベントについてまとめていく。時間の無い方は、見出しと強調部分だけ読めばオッケー。

『七人の魔導師』から一年後のサイロンが舞台

外伝第一巻の『七人の魔導師』から一年が経過。未だそのダメージからサイロンは立ちなおっておらず、新世代キャラクターのアトキア選帝侯マローンや、引きこもり薬師ニーリウスなんかが地味に活躍。ケイロアニは相変わらず人材が豊富で羨ましい。『七人の魔導師』のヒロインで、現在はグインの愛妾となったヴァルーサは懐妊中

シルヴィアの子が存在していたことがグインにバレる

ハゾスが内々に処理していたはずの、シルヴィア懐妊問題がグインの耳に入って、不穏な雰囲気に。この時点では、生まれた子供はハゾスが自ら手にかけて殺したことになっていて、グインには未だその生存は明らかにされていない。この事件がグインとハゾスとの関係性にダメージを与えるのかどうかが今後気になるところ。

シルヴィアは離宮から流され行方不明に

トルク(ネズミ)の大発生を受け、サイロンの秘密兵器「ケイロンの大いなる竜の口」が発動。地下水脈の奔流でトルクを押し流したものの、離宮の地下に幽閉されていたシルヴィアも流されてしまい行方不明に。

サイロンの騒動だけでなく、ハゾスの息子が謎めいた事故に遭ったり、なにものかの暗躍が想定されるけど、黒幕はグラチウスではない模様。やっぱり「あのお方」なのかしらん。

 

アキレウス大帝が死にそう

ここしばらくすっかり耄碌してしまって、精彩を欠きまくっていたアキレウス大帝がついに危篤に。最大の問題点は皇位継承問題が決着していないこと。この後揉めるの判ってるんだから、なんとかしておくべきだったのではと思わないでもないのだけど、こうしておかないと話が続かないから仕方ないのかな。

宵野グインにはさほど違和感なし

アルド・ナリスを復活させるという禁じ手を使ってきた五代ゆうと比べると、さすがは栗本薫直系の弟子ということなのか、冒険はせずにオーソドックスに手堅くまとめてきたという印象。グインが出てくると物語が安定してくるのは、栗本薫時代もそうだったから、キャラクターの力に拠るところも大きいのかもしれない。

しかしながら、現在の「正篇の続篇」では、宵野ゆめは病気療養のため降板となってしまっており、結局、五代ゆうが一人で執筆を担当する形となってしまっている。この点いかにも残念なのだが、復活の可能性は無いのだろうか。