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グインサーガ続篇148巻『トーラスの炎』(最新刊) イシュトヴァーンの闇堕ちが止まらない


続篇グイン・サーガ2年4カ月ぶりの新刊

2022年刊行作品。続篇グイン・サーガとしては、なんと2年4カ月ぶりの新刊である。もう出ないのでは?打ち切りなのでは?と思っていた読者も多いはず(ちょっと思っていたわたし、スミマセン)。

トーラスの炎 グイン・サーガ (ハヤカワ文庫JA)

続篇グイン、もう一人の描き手であった宵野ゆめが、病気療養のため執筆陣から抜け、五代ゆうの一人執筆体制になってから五年。五代ゆう単独となってからの刊行状況をまとめてみた。

146巻までは比較的順調なペースだったのが、147巻以降、ペースが落ちているように見える。続篇グインは監修も入る、自由に書ける部分は少ないだろうし、ファンは年寄りばかりでうるさいだろうし、作家としてはかなり辛い作品だとは思う。

わたし的には書いてくれるだけでもありがたいので、なんとか継続していって欲しいところ。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

タイトルを読んで、トーラスの人たち(ゴダロ一家)の安否が気になって仕方ない方。どんどんダメになっていくイシュトヴァーンの闇堕ちのヤバさを実感したい方。ヴァラキア組(スカール、ヴァレリウス、ブラン、ヨナ、フロリー)たちのその後が気になる方におススメ。

あらすじ

イシュトヴァーンの息子で、アムネリスの忘れ形見であるドリアン王子を拉致したモンゴールの残党組がトーラスで蜂起する。クリスタルから急遽ゴーラに戻ったイシュトヴァーンは、討伐軍を組織し反乱鎮圧に向かう。一方、アグラーヤ王の意を受け、クリスタルへと向かうドライドン騎士団。また、ケイロアニアではパロから戻ったグインが、事態の対応に追われていた。

ここからネタバレ

この巻で起こること

今回の表紙絵はイシュトヴァーン(だよね?)。表紙を飾るのは135巻の『紅の凶星』以来。表紙イラストを見る限り、焼かれているのはトーラスではなく、イシュトヴァーン自身に見える。トーラスを炎上させつつも、自らも焼かれている感がよく表現されている一枚なのではないかと。地獄の業火の中を歩み続けるイシュトヴァーンの迷走が続く。

お話的には、ここしばらく続いていたモンゴール残党軍(アリオン、マルスら)の決起が、誰もが予想した通りに壊滅するところまで。並行してヴァラキア組のスカール、ブラン、フロリーらのその後。また、ケイロアニアでのグイン、オクタヴィア、リギア、マリウスらの動きが描かれる。

では、以下、章ごとにコメント

黒い炎

モンゴール残党の蜂起を知り、クリスタルを引き払ったイシュトヴァーンは、ユノを経てゴーラ本国に帰還。即座に討伐軍を組織、3万の軍勢でトーラスへ向かう。内政そっちのけのイシュトヴァーン。カメロン亡きいま、ゴーラの統治機構がどう機能しているのか謎。旧ユラニアの官僚組織がかろうじて動いていたりするのだろうか。

モンゴール残党軍はアリオンとマルスでそれぞれ15,000人。他、ガイルン砦に5,000人と総勢35,000人程度の規模。ガイルン砦はあっさり陥落して、烏合の衆的な印象は否めない。

イシュトヴァーンの元へはナリスの使者として魔導師カル・ハンが現れ、残党軍が拉致しているドリアンが偽物であることを告げる。

ちなみにこの章のタイトル「黒い炎」は、グインサーガ39巻のタイトルでもある。

39巻も舞台はモンゴールで、アリストートス(懐かしい)のどす黒い妄念、イシュトヴァーンへの執着が印象的な巻だった。およそ100巻の歳月を経て、アリの黒い炎はイシュトヴァーンを完全に覆い尽くしているかに見える。

進撃

ガイルン砦を突破したイシュトヴァーンは、5,000の兵のみを率いてトーラスを目指す。これをアリオンの20,000の軍勢が迎え撃つ。残りの10,000はマルスが率いてトーラスに残している。ガイルン砦の5,000もそうだけど、ただでさえ勝つ見込みが薄いのに、兵力を分散して、逐次投入しては全部撃破されているモンゴール軍がかなり残念。

本格的なトーラス攻略戦を前にして、ホン・ウェンが偽ドリアンを伴って逃亡。これでモンゴール軍は反乱の大義名分も失ったことになる。ホン・ウェンに同行を望まれたアリサはこれを拒否。トーラスに残ることに。

ホン・ウェンは単なる商人とは思えない。明らかにただものではない胡散臭さなので、ヤンダルなり、ナリスなり、もしくはグラチウスあたりの配下なのではないかと予想。ホン・ウェンの主だとされている、オル・ファンが何者なのかも気になる。

トーラス攻めということで、このシリーズでは貴重な癒しキャラ、煙とパイプ亭の主人ゴダロ一家の消息が気になるところだけど、息子のダンが避難を決意。これにゴダロとおかみさんも同行する模様。ゴダロ爺さん「俺はトーラスに残る!」くらい言うかと思ったけど、あっさり息子に従った。ともあれ、これで一安心。

トーラス炎上

トーラスに立てこもったモンゴール反乱軍もあえなく敗れ、アリオンとハラスが虜囚の憂き目に。このままイシュタールまで連行されて処刑される見込み。マルスが捕まっていないのが唯一の救いか。マルスは父親の因縁から、イシュトヴァーン的にトラウマを刺激する人物なので、またこれから出番がありそう。ともあれ、金蠍宮は焼かれ、トーラス市街にも火がかけられる。都市としてのトーラスとしてはその歴史を終わってしまうのか。

イシュトヴァーンの前に引き出されたアリサは、ミロク教徒故の嘘のつけなさで、今回のドリアンが偽物であること、本物はアストリアスが攫っていったことを話してしまう。ここでイシュトヴァーンは、フロリーの生んだ子、スーティの存在を改めて思い出し、改めてスーティ探しに本腰を入れることになりそう。

この章の後半はヴァラキア編。スカールは、フロリー親子に別れを告げる。フロリーは当面ヴァラキアで生計を立てるみたい。こんなところで大丈夫なのか?スカールはドライドン騎士団に同行しクリスタル目指す。

水面下では、アグラーヤ王ボルゴ・ヴァレンと、ライゴール評議長アンダヌスの密談が展開。沿海州総出でのパロ派兵が否決され、ボルゴ・ヴァレンはドライドン騎士団を雇うことで目的を達しようとしている。派兵に反対しながらも資金は融通してくれるアンダヌスの意図がわからぬ……。

ボルゴ・ヴァレンにもたらされた「中元最大の秘密の一端に触れるもの」は何なのか?アレ、実は古代機械を動かせたりするのかな。ファビアンの得体の知れなさも気がかり。カメロンの死を知ってショック状態にあったブランも、さすがにファビアンを怪しみだしたね。

なきひとへの哀歌

最終章はケイロニア編。黒死病蔓延から回復途上にあるサイロン。138巻『ケイロンの絆』で発見された白金鉱脈が思わぬ掘り出し物になって、経済回復に貢献している様子。そういえばそういう話あったね。

ディモスの叛意が明らかとなり、ラカント伯爵に幽閉されていた、アクテら妻子はグインに保護されている。温厚篤実だったディモスがなぜ裏切ったのか?アモンが使った魔の胞子の類が使われたのでは?という話が出るも、この話の中では否定されている。

アクテの弟である、アンテーヌ侯の子息、アウルス・アランは改めて、アウロラへの恋心を自覚。遂に、告白に打って出るも、実は腹違いのきょうだいという、裏の事情を理解しているアウロラちゃんはそれを断る(未練ありそうだが)。アウルス・アランは、シルヴィア探索の旅に派遣されそう。アウロラは果たしてこの後、どうなるか?

なお、アウロラちゃんの出生にまつわるあれこれは、外伝25巻『宿命の宝冠』を参照のこと。

モンゴール反乱軍が鎮圧されたこと、トーラスが炎上したことで、さっそくぶちぎれるマリウス(定期運航みたいなもんですな)。さすがにゴーラ内のいざこざには、グインも口を挟まない判断。

そして、クリスタルからマリウスを送り届けてきた関係で、サイロンに滞在していたリギアは、グインの口から「アルド・ナリスを名乗る人物」の存在を知らされ衝撃を受ける。このリアクションを見る限り、まだまだナリスの影響力はリギアにおいても大きいみたいだね。誘われたら裏切りかねない。

次巻は2023年中に出るかな(出て欲しい!)

以上、2年4カ月ぶりにグインサーガ最新刊の感想をお届けした。

149巻の『ドライドンの曙(あけぼの)』は2023年中に出るだろうか?タイトルから想定するに、パロに向かったドライドン騎士団の話となるだろう。スカール、ブラン、ヴァレリウス、そしてファビアンと濃いメンツが一緒に旅を!どんな活躍をしてくれるのかが楽しみではある。

ただ、あとがきを読む限り、書く側の苦悩が伝わってくる感じでなんとも痛ましい。あとがきを書くのすらも辛そうに思える。宵野ゆめの再登板はないのか?可能であるなら、もう少し負担を軽減してあげたほうがいいような気もするのだけど。

40年分のネタバレまとめ記事もあるよ

完全ネタバレ記事なので未読の方は注意!