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『平面いぬ。』乙一 初期のファンタジー、ホラー短編集

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ノベルス版と文庫版でタイトルが違う

2000年刊行作品。集英社としては珍しいノベルススタイルでの登場であった(当時)。この時点でのタイトルは『石ノ目』。乙一(おついち)作品としては、『夏と花火と私の死体』『天帝妖狐』に続く三作目。

石ノ目

石ノ目

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その後、2003年に集英社文庫版が登場。その際にタイトルが『平面いぬ。』に改題されている。解説はジャンプ小説大賞の先輩である、定金伸治(さだかねしんじ)が担当している。

平面いぬ。 (集英社文庫)

今は亡き集英社の小説誌「ジャンプノベル」に掲載されていた三作品に書き下ろし一作品を加えた短編集。「石ノ目」はジャンノベルVol-16(1999/9/25号)、「はじめ」はジャンノベルVol-14(1999/5/3号)、「BLUE」はジャンノベルVol-15(1998/5/1号)にそれぞれ掲載されたもの。「平面いぬ」も本来はジャンプノベルに収録を予定していた作品なのだが、掲載を前にして雑誌の方が休刊となってしまい、宙に浮いていた作品らしい。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

ちょっと不思議なお話。とても不気味なお話。しんみり泣けるお話。なんだかよくわからないお話。一冊でいろいろなタイプの作品を味わってみたいと思っている方。最初期の乙一作品を読んでみたい方におススメ。

あらすじ

幼い頃に消息を絶った母の足跡を求めて故郷の山に登った私とその同僚。目を見ると石にされるという、妖怪石ノ目の伝説が残るこの山で、私は奇妙な老婆に出会う。表題作「石ノ目」を始め、幻聴としてしか存在しない奇妙な友人との交流を描いた「はじめ」、命が宿ったぬいぐるみの活躍を描く「BLUE」、タトゥーの犬が巻き起こす騒動を描く「平面いぬ。」の4編を収録した短編集。

以下、簡単にざっと各編を。

ココからネタバレ

石ノ目

まずは「石ノ目」。ノベルス版の時は本作が表題作であった。民間伝承を取り入れた作品。キャラクターの古風な台詞回しが特徴的で乙一らしい。しかし必ず一ひねり入れてきますな。この作家は。

はじめ

キーワードは、地方都市、地下水路、自分たちだけにしか見えない女の子。ひねりのない、直球勝負の作品なんだけど、この手のちょっぴり泣ける系ジュブナイル路線にめっぽう弱いのでイチオシとしておこう。

BLUE

いきなり舞台が海外に!横文字の登場人物に違和感を覚えるが、中身は乙一テイスト(当然といえば当然だけど)。これもいい話だがインパクトはちょっと弱いかな。

平面いぬ

ラストはこれ。ヘンな話だ。入れ墨で書いて貰った犬に生命が宿る。折しも自分以外の家族三人が不治の病であることがわかる!。なんだよそれ?と読み手を戸惑わせつつも、ラストには爽やかな感動が(ホントに!)。ある意味一番乙一らしい作品と言えるのかもしれない。

文庫版ではこちらが表題作となっているけど、「らしさ」という点では確かに本作が一番乙一作品らしいかも。

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