映画化決定!ネット発の不動産ミステリ&ホラー
筆者の雨穴(うけつ)は2018年頃から活躍してる、Youtuber、ライター、作家である。Webメディア「オモコロ」主催の第5回オモコロ杯で頭角を現し、ライターとしてはオカルト系の記事で人気を博す。Youtubeチャンネルの登録者は70万人超を誇る(2022年11月現在)人気Youtuberだ。
本書『変な家』は2021年刊行作品。もともとは雨穴によるオモコロ上の記事、【不動産ミステリー】変な家がベースとなっている(2020年10月12日)。
この記事は雨穴自身により動画化されYoutubeチャンネルにて公開された(2020年10月30日)。
この動画は再生回数1,050万回を突破(2022年5月時点)しており、この実績が評価され書籍化に繋がったものと思われる。
映画化も決定しているらしく、今後の展開が楽しみ!
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— 飛鳥新社 📚公式@私が見た未来50万部突破 (@ASUKA_SHINSHA) March 14, 2022
🎥#変な家 映画化決定‼️🎬
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第二作の『変な絵』も2022年に発売され好評を博している。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
いろいろな部屋の間取りを見るのが好きな方。変な不動産物件、おかしな間取りの部屋が気になる方。実際に間取りを見ながら謎を解いてみたい方。今、大人気のネット初の作品を読んでみたい方におススメ。
あらすじ
「私」は知人が購入を検討している、中古の一軒家の間取りを見て違和感を覚える。一階のキッチンとリビングの間に存在する謎の空間は何なのか?間取りを見た設計士の栗原は、二階の子供部屋の異常な配置を指摘する。不思議な間取りには何の意味があるのか。家の近くで起きた左手の無い他殺死体。事件の背後に横たわる、とある一族の闇の歴史とは……。
ここからネタバレ
この間取りの謎が解けますか?
まずは、この家の間取りを見ていただきたい(画像はオモコロの【不動産ミステリー】変な家から引用)。
パッと見では、ふつうの一軒家の間取りに見えるかもしれない。しかしよく見ると奇妙な違和感を覚えないだろうか。
- 一階の台所とリビングの間に謎の空間がある
- 二階の子供部屋に窓がない
- 子供部屋に入るには二重の扉を通る必要がある
- 子供部屋に入るには夫婦の寝室を経由する必要がある
- 子供部屋には独立したトイレがついている
- 二階には浴室があるのに別にシャワー室がついている
とにかく子供部屋があやしい。
『変な家』では、この変な間取りの家を発見した、雨穴自身が語り手となって物語が進行していく。ドキュメンタリータッチのフィクション作品、いわゆるモキュメンタリーの体裁を取っている。先日紹介した小野不由美の『残穢』と同じシステムである。
間取りを読み解くのが楽しい
ネットの記事や、Youtube動画で描かれているのは小説版の第一章あたりまで。第二章以降は小説版オリジナルの展開となっている。
第二章では殺害された宮江恭一の妻を自称する宮江柚希が現れ、『変な家』の住人が、以前に住んでいたと思われる奇妙な家の間取り図を提示する。続く第三章では柚希の記憶の中に残る片淵家の旧家屋の間取り図が登場。次から次へと登場する「変な間取り」を読み解いていくのがとにかく楽しい。
本文中には実際の間取り図が繰り返し掲出されているので、何度も戻って読み返す必要も少なくこの点はとても親切。SUUMOなどの不動産紹介サイトで、物件の間取りを眺めるのが好きな人なら、ワクワクしながら怖がれるのではないだろうか。
『変な家』を読んでいると、マンション物件のパイプスペース(間取り図では「PS」と書かれている部分だ、配管を通す穴である)のようなちょっとした隙間すら、いわくありげに見えてくるから不思議である。
片淵家の呪いと突っ込みどころ
最終章となる第四章では、事件の発端となった片淵家の呪いの全貌が明らかになる。片淵宗一郎と妻の潮。そして弟である清吉との因縁。残された「左手供養」の掟。代々伝わる一族の妄念が、柚希の祖父である重治を狂わせ、現代にまでその呪いを伝えてしまう。
とまあ、もっともらしい結末はつくのだが、現実的に考えると片淵家の『変な家』には多数の突っ込みどころが残る。
- 子供部屋だけを隠蔽しても意味がないのではないか?
子供部屋以外をあえて見せることで疑いから逃れようとする。「カーテンを開け放した家の中で殺人が行われている、とは誰も思わない」とあるが、そもそも、「家の中で殺人が行われている」ことを普通の人は想定しないのではないか?
- 謎の空間が狭すぎる
一階の台所とリビングの間に作られた移動用の隠し通路だが、間取り図を見る限りガスコンロの半分ほどの奥行きしかないのである。せいぜい30センチ程度ではないだろうか?利用するのが子供だったとはいえ、さすがにこれは狭すぎる。
そもそも家族全員が共犯なのだから、普通に自宅内を移動すれば良いのではないか。
- 転居するなら解体しないと
これほどのギミックを凝らした片淵家の殺人ハウスだが、仕事を理由にあっさり家を手放している。普通の家ではないのだから、手放すとしても解体するなり、痕跡を消すなりの対応は必要だったのではないだろうか。
と、突っ込みどころは満載なのだが、初めに第一章の部分が先行して存在し、人気が出たのでそれ以降を追記したという形なので、ちょっと無理が出てしまっている点は否めない。
それでも、間取りを使った謎解き要素は面白かったので、まだまだこの仕掛けは使えそう。続編化されそうな気がするよ。
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