ネコショカ

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トマス・H・クック『石のささやき』家庭内で起きた悲劇


現代を舞台としたクック作品

2007年刊行。クックお得意の回想型ミステリ。原題は『The Murmur of Stones』。

石のささやき (文春文庫)

クック作品と言えば、20世紀前半~中盤くらいを舞台とした話が多かった印象である。本作では珍しく物語の舞台が現代なので、これまで読んできた作品に較べると異質に感じる。インターネットなんて存在は、従来のクック作品では出てこなかっただけに違和感が大きい。

あらすじ

姉のダイアナは息子ジェイソンの死をきっかけとして精神の平衡を失っていく。夫であるマークとの離婚の後、怪しげな文献に没入し、不気味なインターネットサイトへのアクセスに耽溺するダイアナ。息子の死を事故と認められない彼女は、その責任をマークの背信行為だと思いこむようになる。破滅の淵へと追い詰められていく一人の女。果たして真実は何処にあるのだろうか。

血の呪縛のやりきれなさ

主人公ディヴィッド・シアーズは冴えない民事専門の弁護士。精神疾患の末に、狂気の中で死んでいった父を持つ。ディヴィッドには姉が一人。姉のダイアナがその一人息子ジェイソンを事故で死なせてしまったところから物語は転がり出す。この作品は過去の事件を遡って解き明かしていくターンと、取り返しのつかない「何か」が起きた後、刑事の尋問を受けている主人公のターン、両者が交互に綴られていく。

主人公は、父の精神疾患が自分や姉に遺伝しているのではないかという不安に常に曝されている。子供を失ったことで、実際に姉の精神は次第に失調を来していく。妄想を募らせていくダイアナは、主人公の娘パティを自身の妄想の中に引きずり込む。血の呪縛の中で、ダイアナが堕ちていく闇の陥穽を描いていく。

相変わらず上手ではあるのだけれども、家庭内の悲劇、とりわけ精神疾患に対してクックは容赦が無いというか、救いの可能性を残さないのは正直どうなのよと思う。父親が精神疾患を患っていたからといって、その子供達にまで影響が残るというのは救いがなさ過ぎる。ミステリとしてのキレも今ひとつだったので、ちょっと評価は下がるかな。クック作品だとどうしても要求水準が上がってしまう。

石のささやき (文春文庫)

石のささやき (文春文庫)