短命レーベル白泉社My文庫の一作
白泉社が2001年に創刊した白泉社My文庫の第二期シリーズの中の一冊。折り込みのチラシによると、このMy文庫は「愛と牙のあるミステリー」をキャッチコピーに、キャラ萌え読者からマニアまで、割と納得できるラインナップになっているとのこと。既に突っ込みどころ満載だが「割と」って何だよ「割と」って。ちょっと適当過ぎないか。
この時期、ライトノベルのミステリ叢書って近頃創刊が続いていた。角川や富士見のはどっちかというと男子向きなんだろうけど、こちらはイラストのノリから見ても女の子向けのレーベルっぽい。後発ってこともあるが作家の供給が続くかどうか、怪しいなと思っていたら次の第三期であっさり終了した模様。やはり厳しかったか。
ちなみに白泉社My文庫のラインナップは以下の通り。
第一期(2001年9月)
- フェイク! 有村央生のアート事件ファイル(徳田央生)
- イノセント・サマー 骨董屋店長事件簿(若杉桂)
- 累卵の朱 万象史記(大澤良貴)
第二期(2002年4月)
- 嘘つきパズル 究極の名探偵★誕生(黒田研二)
- 晴れ渡る青空の下でもう一度 The descendants of the onmyoji(海月一史)
- エンジェル&クラウン(如月香)
第三期(2002年7月)
- アルファベット荘事件(北山猛邦)
- イゾルデの庭(伊神貴世)
- 蒼い月は知っている The soul doesn't disappear(橘悠樹)
あらすじ
19世紀末のイギリス。ロンドン。新聞記者のコプランドは凄惨な殺人事件の現場に出くわしてしまう。そこでコプランドは犯人と思しき謎の男に出会う。しかし印象的なペールエールの瞳を持つその男は姿を現さないまま姿を消してしまう。その後名門エフィンガム家のスキャンダルに巻き込まれていくコプランドだったが、またしてもペールエールの瞳の男に出会ってしまう。
ロンドンへの愛に満ちた作品
如月香のデビュー作。イギリス、とりわけロンドンを愛好するこの方ならではのロンドン愛に満ちあふれた作品。空気の匂いやら光線のゆらぎ具合まで、こだわりをもって描いているのがよくわかる。レーベルから見て、普通にソフトやおい路線なのかと思っていたのだが(失礼過ぎ)、ちゃんとヒロインがヒロインとして機能していて、いい意味で裏切られた。
不幸な生い立ちから心を閉ざして生きてきた少女が、事件をきっかけに人間として成長し、新たに人生を自分の手で切り開いていく……。というような筋書きがストーリーの骨子なのだと思うのだが、それにしては雑駁とした要素が多すぎる。混乱するだけで、コプランドの視点そのものがいらないように思えるし、ましてや後半で出て来る変態医師は、口絵にまでなっているくらいだからおそらくお気に入りキャラなのだと思うがかなり余計。雰囲気はいい感じだったので、今後に期待!と思っていたのだけれども、その後は続巻が出なかったようでなんとも残念。