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『殺しも鯖もMで始まる 地底の密室!』浅暮三文 講談社ノベルス20周年記念「密室本」の一冊

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浅暮三文による「密室本」

2002年刊行作品。1998年に『ダブ(エ)ストン街道』で第8回のメフィスト賞を受賞した浅暮三文(あさぐれみつふみ)としては6作目の作品となる。

殺しも鯖もMで始まる―地底の密室! (講談社ノベルス)

なお、文庫化はされていない。

作者の浅暮三文は1959年生まれ。作家になる前はコピーライターだった。メフィスト賞受賞後はほぼ毎年コンスタントに新作を上梓しており、作家歴も二十年を越えた。短命に終わることも多いメフィスト賞系作家の中では健闘している作家の一人言えるだろう。最新刊は2022年の『我が尻よ、高らかに謳え、愛の唄を』(凄いタイトルだ)。

講談社ノベルス20周年記念「密室本」

2002年。講談社ノベルスでは創刊20周年記念として「密室本」と称した作品群を刊行した。内容的にはもちろん密室を扱った作品なのだが、書籍そのものの物理的な特徴として作品全体が袋とじ(密室)となっていた。つまり立ち読みは完全に不可能なのである。なんとも凝った造りである。本作もそのラインナップの中の一冊。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

密室をテーマとしたミステリ作品を愛している方、密室モノのミステリを読んでみたい方。ダイイングメッセージモノも好き!という方。浅暮三文作品をとりあえず一冊読んでみたい方(わりと短めだ)におススメ。

あらすじ

村上の爺さんと、その愛犬ゴンが掘り出した死体は浅草の寄席芸人、魚屋黒妖斎だった。掘削された痕跡の全く残らない地中の空洞で彼は餓死していたのだ。自殺?殺人?それとも事故なのか。北海道警の刑事加藤は、黒妖斎の弟子たちに容疑の目を向ける。捜査の過程で訪れた雪の山荘で、加藤は第二の事件に巻き込まれるのだが……。

ここからネタバレ

ミステリ的に「薄い」気がする

『ダブ(エ)ストン街道』しか読んでいなかったので(当時)、それだけで判断してしまうのも強引かとは思うけど、ミステリ体質じゃないだろこの人。ミステリ的な「薄さ」をどうしても感じてしまう。せっかくの講談社ノベルス20周年だし、メフィスト賞受賞者だし、ってことで密室をテーマに一冊書き下ろしをしてみたものの、他のラインナップと比べると、毛色の違った作風に思えてしまう。

あえて軽いタッチにしているのか?

密室+ダイイングメッセージという形は古式ゆかしき本格ミステリの立て付けなのだが、やっぱり浅暮流は健在。読者の意気込みを受け流すネタの応酬と、脱力系キャラ樫山青年の存在で、独特の味を醸し出すことに成功してしまう?トリック的にはけっこう真面目にミステリ書いてるのに、どうしてにこんなに軽いトーンにしてしまうんだろう。

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