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『後宮の烏6』白川紺子 新展開!烏漣娘娘の半身を求めて

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※2022/05/06追記 最終巻『後宮の烏7』の感想を書きました。

シリーズ累計90万部突破!

2021年刊行作品。『後宮の烏』『後宮の烏2』『後宮の烏3』『後宮の烏4』『後宮の烏5』に続く、『後宮の烏(こうきゅうのからす)』シリーズの六作目にあたる。

後宮の烏6 (集英社オレンジ文庫)

四巻発売時に累計50万部。五巻発売時に累計80万部と周知されてきた本シリーズだが、六巻の帯によると累計90万部突破とのこと。次は100万部行きそうだな。

後宮の烏6巻帯

ちなみに、この巻には鳥の羽を模した栞がついてきていた。こういうのはファン的には嬉しい。リバーシブルになっていて片面は黒い羽の烏のもの。もう片方は金色の羽となっている。こちらは金鶏、星星(シンシン)の羽かな。

烏羽の栞

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★★(最大★5つ)

前の巻があんな終わり方だったので、続きが気になって仕方ない!という方。いま、もっとも売れている話題の中華ファンタジーを読んでみたい方におススメ。

といっても、もちろんこの巻から読む人はいないと思うので、きちんと第一巻からどうぞ!

あらすじ

香薔の封印が解ける。しかし、鼈の神の干渉により、欒王朝の血を引く寿雪の秘密が周囲に明らかとなってしまう。寿雪の意識は戻らず、魂を呼び戻すには血縁者の存在が必要であることが明かされる。董千里と令孤之季は、海中に没したとされる烏漣娘娘の半身を求め、界島へと赴く。一方、沙那賣家の長男晨は、故郷の賀州へと帰り着く。

ここからネタバレ

表紙イラストの二人が気になる

表紙絵の寿雪はミレーのオフィーリア風?

これは回廊星河(かいろうせいが)に流されていた時のものだろうか。寿雪の髪の色が黒でなく、少し銀髪っぽく描かれているのが新鮮。

気になるのは左側に描かれているもうひとりの人物だろう。文庫の帯で隠されていて、一見するとわからないのだが、この人物は両手の指の先が欠損していることから、最初の烏妃(うひ)、香薔(こうしょう)であることがわかる。第六巻の第三エピソード「冬の咎人(とがびと)」での情景を描いているものなのかな。

以下、各編ごとにコメント。

血の縁

香薔の封印は解かれたものの、寿雪の魂は回廊星河に流されてしまう。寿雪が前王朝、欒(らん)家の生き残りであることが知られてしまい、高峻(こうしゅん)は対応策に苦慮する。寿雪の魂を現生に帰すには、血縁者の協力が不可欠。これまで寿雪との関係をひた隠しにしてきた、腹違いの兄、衛青(えいせい)は、大きな決断を迫られる。

第一エピソードは、前巻で起きた騒動の後始末編。

これまで霄(しょう)の国では、前王朝欒家の生存者はすべて皆殺しにされてきた。高峻の代になってようやく法が改められたが、依然として欒家の血縁者は警戒されている。宰相の明允(めいいん)ら、寿雪の存在を危惧する宮廷上層部を、高峻がどうやって納得させるのか。緊張感の高まる展開だが、さすがは絶対権力者の皇帝、高峻。あらゆる策を講じて全力で護り切ったという印象。

とはいえ、寿雪の正体は、宮中に知れ渡ってしまったと思われるので、その後の後宮内での立場がどうなっていくのか気になる。

意外だったのは、呼び出された梟によって呼び出された、烏漣娘娘(烏)のキャラクターが、思っていたよりもアホの子であったこと。杼(ひ)の王に騙され、香薔に騙され、その身を半分に裂かれて、深い孤独の中に追いやられている烏漣娘娘。兄である梟が来たことで、なんとか制御可能な存在になってくれるとよいのだけど。

タイトルの「血の縁(えにし)」は、寿雪と衛青の兄妹関係だけでなく、梟と烏漣娘娘。もう一組の兄妹関係をも示唆しているように思える。

冬の咎人

香薔の結界には破ろうとすると、その術者を殺す罠が仕掛けられていた。寿雪は香薔の結界を破った代償として回廊星河に流されてしまう。回廊星河は幽宮(かくれのみや)と楽宮(ささらのみや)を繋ぐ、再生を待つ魂が廻る場所。そこで、寿雪は、事態の元凶となった女、香薔に出会う。

第二エピソードは回廊星河に流された寿雪が現生に戻ってくるまでのお話。

ここで最初の烏妃、香薔が登場。欒王朝の始祖、欒夕(らんゆう)こと、晁華(ちょうか)との関係性が語られる。香薔は一途なタイプだが、愛が重たすぎるキャラクターで、晁華への愛が高じた結果、逆に疎まれて遠ざけられてしまう。回廊星河の中で、やがて転生してくるであろう晁華を待つ香薔が怖い。香薔の魂が、今後救われることがあるのか。晁華との馴れ初めも含めて、これから描かれていくのではないかと予想。

海より来りて

董千里(とうせんり)と令孤之季(れいこしき)は、失われた烏漣娘娘の半身を求めて、界(ジェ)島を訪れる。界島の市舶使長官、馮若芳(ふうじゃくほう)、そして案内人楪(ちょう)との出会い。そして、島の歴史を知る、序氏、昭氏の縁者を通して、この島でかつて起きた大災害の真相が明らかになっていく。

第三エピソードは、董千里と令孤之季の界島レポート編。

王朝の暗部を歴代の烏妃に押し付けて冬官、董千里ならではの悔恨と。亡き妹を殺した相手への憎しみを捨てきれない令孤之季。それぞれの想いを抱えた、この二人を組み合わせて来るとは面白い。

千年前に起きた、鼈(ごう)の神と、烏漣娘娘との戦いは、海底火山の噴火として界島の人々に伝承されている。着々と力を蓄えつつある鼈の神。界島には、宮中を脱した白雷や、衣斯哈らも身を寄せているようで、この先は界島を舞台に、物語は大きく動いていきそう。

血の鎖

沙那賣(さなめ)家の長兄、晨(しん)は、故郷の賀州への帰還を果たす。冷酷にして厳格。一族の長である父、朝陽(ちょうよう)に対して、忸怩たる思いを抱える晨。再会した、母の乳母であった老女浣紗(かんさ)から、晨は思わぬ話を聞かされる。

最終エピソードでは賀州の有力者、沙那賣家の人々を描く。

沙那賣朝陽が、思っていた以上にヤバいキャラクターであったことに衝撃を受ける。朝陽は、一族の生き残りと繁栄のために、権謀術数を巡らしている冷静な人物なのかと思っていた。ところが、亡き妹(晨は妹との子だった)への妄執に未だ囚われている危険なオッさんだった。これは、さすがに晨も全力で引く。

朝陽の意を受けて北辺山脈へ向かった次男の亘(こう)は、羊舌慈恵に出会う。一方で、賀州を去った晨は、皐州の地で寿雪に再会する。

って、さらっと書かれてるけど、寿雪が後宮から出てる!寿雪の能力なら、この時の晨の状態の悪さは見た瞬間に分かったのだろうなあ。

寿雪、後宮を出る!

歴代の烏妃を後宮に縛り付けていた香薔の呪いが遂に解けた。しかし、依然として寿雪の中には烏漣娘娘が封じられたままである。寿雪と烏漣娘娘が対話できるようになったのは大きな進展かな。物語はいよいよ後宮の外へと広がっていく。従来の既刊が、後宮内で寿雪に持ち込まれたトラブルを解決していくスタイルだっただけに、物語が一気に動いた印象が強い。

気になるのは、前巻のラストで寿雪が、鼈の神のコントロールを受けていたように思えていた点。舞台は後宮から、界島。さすがにここまで高峻はついて来られないだろうから、寿雪がいかにして鼈の神と対峙していくのかが、これから先の見どころだろうか。

『後宮の烏7』はいつ出るの?

最後に恒例の、続きはいつでるの予測。これまで『後宮の烏』シリーズは、以下のタイミングで刊行されてきている。

2018年4月『後宮の烏』
2018年12月『後宮の烏2』
2019年8月『後宮の烏3』
2020年4月『後宮の烏4』
2020年12月『後宮の烏5』
2021年8月『後宮の烏5』

いずれもきっちり八か月置きに新刊が出ているので、『後宮の烏7』の発売は2022年4月と予想しておこう。

※2022/4/22追記 7巻予想通りに刊行!しかも最終巻!!これから頑張って読む。感想はしばしお待ちを。

「後宮の烏」シリーズ既刊分の感想はこちらから!

第一巻『後宮の烏』の感想はこちらから。

第二巻『後宮の烏2』の感想はこちらから。

第三巻『後宮の烏3』の感想はこちらから。

第四巻『後宮の烏4』の感想はこちらから。

第五巻『後宮の烏5』の感想はこちらから。

最終巻『後宮の烏7』の感想はこちらから。