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『首鳴き鬼の島』石崎幸二 希少な「ミリア&ユリシリーズ」ではない作品

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唯一の非講談社系作品

石崎幸二(いしざきこうじ)は、2000年の『日曜日の沈黙』で第18回メフィスト賞を受賞して作家デビュー。その後、2001年に『あなたがいない島』『長く短い呪文』、2002年には『袋綴じ事件』を上梓したが、その後しばらく新刊が出ていなかった。

本日ご紹介する『首鳴き鬼の島』は、石崎幸二としては、五年ぶりの新作ということになる(当時)。

首鳴き鬼の島 (ミステリ・フロンティア)

石崎作品はこれまで、すべて講談社から刊行されていたが、本書は珍しいことに東京創元社のミステリ・フロンティア枠から世に出ている。過去四作に登場した石崎やミリア、ユリの女子高生コンビは今回登場しない。

ミリア&ユリシリーズの滑りがちなギャグテイストが、個人的にはあまり正直タイプで無かっただけに、新しいキャラクターで勝負してきたことは正解だったと思う。

ちなみに、文庫化はされていない。というか、石崎幸二作品は、講談社系の作品も文庫化されていない。これはこれである意味凄い。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

孤島を舞台としたクローズドサークル系の、本格ミステリ作品を読んでみたい方。石崎幸二の著作は「ミリア&ユリシリーズ」しか読んだことがない!という方におススメ。

あらすじ

相模湾に浮かぶ頸木島。別名首鳴き島。ここではいまでも「オーンオーン」と失った腕と首を求めて彷徨い歩く鬼が出るのだと云う。編集者の稲口は怪奇スポット記事の取材のため、頸木島を訪れる。島は大企業オーナー竜胆家が個人所有しており、稲口は社長の恭蔵、その息子の慎一郎と知己を得ることになる。台風が接近し、外界から隔絶された島内で、惨劇の幕は切って落とされるのだが……。

ここからネタバレ

メイントリックはいい!

孤島、嵐、連続殺人、見立て。基本的な本格ミステリのガジェットは全部揃えてみました、という態なのだが、相変わらず文章がうーん。本格ミステリなのだから、キャラクターの魅力は二の次と考えるのもありだけど、女性登場人物たちの平板さが気になった。会話文の滑り具合も相変わらずだけど、これはこの人の味だから、もはや突っ込んではいけないような気もしている。

メイントリックの秀逸さは十二分に評価すべきなのだろうけど、それを補うべき作品の肉付けが上手く描けていない。土曜ワイドショー(もう死語かもしれない)のような、ありがちな幕引きもいかがなものかと。メイントリックが良かっただけに惜しい。

その後はミリア&ユリシリーズ

なお、本作刊行後の石崎作品は、再びミリア&ユリシリーズに回帰する。『復讐者の棺』『≠の殺人』『記録の中の殺人』『第四の男』『皇帝の新しい服』『鏡の城の美女』と、その後は毎年一冊、ミリア&ユリシリーズが刊行されていく。

が、残念ながら2013年の『鏡の城の美女』以降は新作が出ておらず、ちょっと消息が気になるところではある。

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