ネコショカ

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『黒い悪魔』佐藤賢一 黒い肌を持つフランス人将軍の物語


フランス革命を舞台とした立身出世物語

2002年刊行作品。「オール讀物」の2002年1月号から12月号に連載されていた作品を単行本化したものである。

黒い悪魔

黒い悪魔

 

文春文庫版は2010年に登場している。

黒い悪魔 (文春文庫)

あらすじ

フランス人貴族とカリブの黒人奴隷との間に生まれた男は、苦難の少年時代を経て、父の待つフランスへと単身大西洋を渡る。しかし上流社会に憧れた彼を待っていたのは、黒い肌への偏見と蔑視だった。男は失意の中で軍に身を投じるが、やがて勃発したフランス革命がその運命を変えていく。黒い悪魔と恐れられた将軍トマ=アレクサンドル・デュマの生涯を描く。

アレクサンドル・デュマの父親の生涯

作者お得意のフランスモノ。かの文豪アレクサンドル・デュマの父親の辿った波乱の生涯を描いた一代記。トマ=アレクサンドル・デュマの詳しいプロフィールはwikipedia先生を参照頂きたい。

ja.wikipedia.org

ということは、アレクサンドル・デュマ(有名な作家の方)って、1/4はカリブ人の血を引いてるわけか、無知ながらこれは知らなかった……。物語はフランス革命の少し前からスタート。フランス史的には一番面白いところである。

フランス革命がデュマの運命を変える

旧体制下で、侯爵を父に持つとはいえ黒い肌を持つ混血児が軍隊で立身出世出来る余地は全くなかった。変転する革命の大義の中で政権が如何に腐敗していようとも、本人の気持ちがどうであれ、生きていくためにデュマだけは熱烈に革命を支持せざるを得なかった。出自で劣るデュマはコンプレックスを抱えながらも、持ち前の才能を発揮して異常な速さで昇進を続けていく。単なる痛快出世譚になっていないところがさすがはサトケン。この作家の主人公は常に悩めるヒーローなのだ。

更に上を行く天才ナポレオンの登場

この物語は二部構成になっていて将軍になるまでの前半分が第一部。そして後半分の第二部では遂に革命の英雄ナポレオンが登場してくる。自分こそは戦争の天才だと自惚れていたデュマの前に現れたその上を行く天才。なんて燃える筋書きだろうか。

ナポレオンの強運と冠絶した軍事の才能に激しく嫉妬しつつも、真の時代の寵児はナポレオンなのだと、最後には諦念と共に認め、それでも男としての筋は一本通してみせたデュマ。これは惚れる男である。実在の人物を登場させながら、虚実織り交ぜた見てきたような嘘を付く。この辺の手際の鮮やかさはいつもながら見事なものなのである。

黒い悪魔 (文春文庫)

黒い悪魔 (文春文庫)

 

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