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『兇人邸の殺人』今村昌弘 『屍人荘の殺人』シリーズの第三弾が登場!


今週のお題「読書の秋」に便乗しちゃう。

シリーズ累計で100万部の人気シリーズ

2021年刊行作品。『兇人邸(きょうじんてい)の殺人』は『屍人荘(しじんそうのさつじん)の殺人』『魔眼の匣(まがんのはこ)の殺人』に続くシリーズ第三弾である。今村昌弘(いまむらまさひろ)の第四作にあたる。

表紙の装画は今回も遠田志帆(えんたしほ)が担当。『Another』といい、『medium 霊媒探偵城塚翡翠』といい、ヒット作の装画にはこの人という感が強い。

兇人邸の殺人 屍人荘の殺人シリーズ

東京創元社の特設サイトによると、シリーズ累計で100万部を突破したとのこと。今村昌弘の場合デビュー作の『屍人荘の殺人』がいきなりの大ヒットなのだから、これはかなり凄い。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★★(最大★5つ)

『屍人荘の殺人』『魔眼の匣の殺人』と読んできて、葉村と比留子ちゃんのその後が気になって仕方がない方。特殊設定系の本格ミステリを読みたい方。館モノのミステリがお好きな方におススメ。

ただし、シリーズ作品なので、前作の『屍人荘の殺人』『魔眼の匣の殺人』を読んでから、本作を読むことを強く推奨。

あらすじ

神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と剣崎比留子は、班目機関の謎を追い、廃墟テーマパークとして知られる馬越ドリームシティを訪れる。園内に聳え立つ、異様な雰囲気の館「兇人邸」に潜入した彼らを思いもよらぬ存在が襲う。圧倒的な暴力の前に、次々と殺戮されていく同行者たち。そんな中で起こる殺人事件。果たして二人は謎を解き、生還することが出来るのか。

ここからネタバレ

このブログは基本的に「ここからネタバレ」行以降は、ネタバレ感想となっているが、本ページに関しては『屍人荘の殺人』『魔眼の匣の殺人』の内容についても言及しているので、未読の方はご注意いただきたい。

VS巨人!?

今村昌弘作品の面白さは、本格ミステリとしての謎解きもさることながら、「謎を解いてる場合じゃないような生命の危機」が常に迫っている点にある。『屍人荘の殺人』ではまさかのゾンビ大量発生を描き、屍人に襲われないように逃げ回りながら、本格ミステリとしての謎解きも行う凝った構成となっていた。

以前に書いた『屍人荘の殺人』の感想記事ではこう書いた。

本作は通常ではありえないシチュエーションを設定することで、本格ミステリの可能性をググッと拡張することに成功した(笑)

『屍人荘の殺人』今村昌弘 ミステリランキング三冠の問題作! - ネコショカ(猫の書架)より

二作目の『魔眼の匣の殺人』では、この「謎を解いてる場合じゃないような生命の危機」的な要素は薄まっていたが、シリーズ三作目では、改めてこの要素を前面に押し出してきた。

『兇人邸(きょうじんてい)の殺人』では、身長二メートルを超える巨人が登場する。謎の巨人は怪物的なパワーと、圧倒的な身体能力を併せ持ち、銃弾を受けても容易には死なない。巨人は生きている人間は無条件で殺害し、しかもその首を切断し運び去る。唯一の弱点は太陽光線で、昼間は活動を行わない。

閉鎖空間の中で殺戮を続ける巨人がいる。それでいて、明らかに巨人ではない第三者による殺人事件が発生する。なぜこのような状況下で殺人が起きなくてはならないのか。特別な環境の中だからこそ成立する犯行動機、トリックが面白い。特殊設定ミステリの作り方が今村昌弘は相変わらず上手い。

館の構造が複雑すぎる

概ね本作には満足しているのだけど、惜しむらくは、兇人邸の構造が複雑すぎることだろうか。主区画と副区画、本館と別館がそれぞれ存在して混乱する。文中の表現だけ読んでも、邸内の構造がよくわからない。冒頭の見取り図を見てすら、いまいち理解できていないわたし(自分だけかな)。

版元的には、より分かりやすくなるように3D化した兇人邸のモデルを、ウェブか何かでご提供いただきたいところである。

剛力京の視点と、ケイとコウタ

本作で特徴的なのは葉村の視点以外に、フリーライター剛力京(ごうりきみやこ)の視点が存在する点。そして、「追憶」パートで登場する、ケイとコウタの存在が挙げられる。彼らが登場することで物語の構造が重層的かつ、多視点となり、ぐっと複雑なものになっている。

剛力京=ケイなのか?と思わせるミスディレクションには、見事に引っかかってしまい、作者の思惑にすっかりハマってしまった。ただ、コウタが誰なのかについては、唯一ファーストネームが明らかになっていない人物がひとりだけ居るので、わりと想像がつきやすかった。

ケイの意外な正体と、「コウタ」が最後の最後に見せた決意。比留子と葉村、そして「コウタ」との信頼関係が、事件の解決に繋がるラストの展開はなかなかに感動的だった。「頼ってもいいのよ!」と、迷える比留子の背中を押す剛力のひと言にも胸を打たれた。

主人公カップルの関係性の変化に注目

本格ミステリ小説で、主人公とヒロインがわきゃわきゃしながら絆を育んでいく展開が個人的に好みだったりする。『屍人荘の殺人』で出会った、葉村譲(はむらゆずる)と剣崎比留子(けんざきひるこ)は、『魔眼の匣の殺人』の事件を通して「俺のホームズ」「私のワトソン」としての関係性を深めてきた。

本作では探偵役の剣崎比留子は閉鎖環境に封じ込められた形となっており、葉村との意思疎通はできるものの、本人が直接動くことが出来ない。結果として、葉村が証拠を集め比留子が謎を解く、安楽椅子探偵の構造となっており、この制約がうまく物語内でうまく作用している。比留子が直接動けない分、どうしても無理をしてしまう葉村。そんな葉村を気遣う比留子の構図が、いかにも青春ミステリといった体裁で微笑ましい。

「望む未来をつかみ取るために」一歩前に進むことが出来た、二人の今後に期待したい。

謎の引きに戸惑う

さて、大ラス。最後の一ページで登場した重元充(しげもとみつる)には何の意味があったのか。忘れている方も多いかと思うが、重元充は『屍人荘の殺人』に登場した、映画研究部に所属する学生である(わたしも忘れていた)。

猟奇的映画のマニアで、小太りのオタクキャラと言えば、思い出す方も多いかな。映画版では矢本悠馬が演じていた(かなり小説とイメージ違ったけど)。

 
 
 
 
 
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重元って、確か『屍人荘の殺人』では結局行方不明だっけ?明確には死んでいなかったはずで、再登場は班目機関絡みか?とても気になる引きだけど、続きは続編でってことなのだろう。こうなると早く続編を出してほしくなるね。

今村昌弘作品の感想はこちらから