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『レキオス』池上永一 千年の眠りから覚める沖縄の封印

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池上永一の第四作

2000年刊行。『バガージマヌパナス』『風車祭』『復活、へび女』(後に改題されて『あたしのマブイ見ませんでしたか』)に続く池上永一の四作目である。

早川書房の『SFが読みたい!』2001年版で、国内部門の第2位にランクイン。2001年版の「このミステリーがすごい!」の国内部門では、第20位にランクインしている作品でもある。

レキオス

単行本は文芸春秋から刊行されているが、何故か文庫版は2006年に角川から登場。角川版には大森望と豊崎由美による解説的な対談がおまけとして収録されている。

美人女子高生から、数千年を生きる伝説の魔導師まで、奇人変人群れ集っての壮絶な魔法バトルを描く。高橋克彦の諸作品を、沖縄を舞台に変えて、池上永一風味でアレンジすると出来上がり、って感じの作品。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

沖縄を舞台とした作品を読んでみたい方。南の島ならではのゆったりとした時間間隔にあこがれている方。ファンタジー、エスエフ、伝奇、さまざまな要素をごちゃ混ぜにした大長編作品に興味のある方におススメ。

あらすじ

沖縄に異変が訪れようとしていた。謎の米国軍人キャラダインは魔術を駆使してレキオスの封印を解こうとする。複雑な事情の下で育った混血の少女デニスは、自らの持つシャーマニックな力に目覚め、レキオスを巡る騒動に巻き込まれていく。入り乱れる各国の諜報機関。野心に燃える天才科学者。事態は加速度的に混迷を深めていく。

ここからネタバレ

ゆるやかに流れる南の島の時間

全編を通じて南方諸島特有のおおらかさというか、適当さが貫かれていて、カチッカチッと何事も綺麗に揃っていないと気が済まないタイプには向かないお話だろう。時間も空間すらもこの作品の中では確かなものではなく、過去と未来、此岸と彼岸とがゆるやかに入り交じりながら、行きつ戻りつしながら物語が綴られていく。この流れに身を委ねられるか、もどかしいと思うかで真っ二つに評価が分かれそうだ。

沖縄が返還されていなかったら?

「日本に返還されなかった沖縄」というパラレルな世界は歴史のifとして、非常に興味深い設定なので、どうせならもっとページを割いて欲しかった。

琉球王国時代から現代に至るまでの沖縄史を作中各所に織り込みながら、未だ真の意味では解放されていない沖縄。そんなこの土地の過酷な現実を、ファンタジーな世界の中で痛烈に風刺してみせた力業は見事なものだと思う。

レキオス

レキオス

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