コンパイルがまだ元気だったころの「魔導物語」ノベライズ
本日ご紹介するのは、大昔の(20年以上前だ)ゲームノベライズ「魔導物語」三部作。あまりに有名なゲームタイトル『ぷよぷよ』。そのベースとなったソフト『魔導物語』をノベライズしたものが本シリーズ。
ゲームとしての『ぷよぷよ』は未だ健在だが、本来の販売元であるコンパイルは既に無く、キャラ絵も変わったりしてちょっと寂しい。昔は、ぷよまんとかゲームショーで良く食べてたな。
作者の山本剛(やまもとつよし)は1969年生まれのゲームデザイナー、作家。残念ながら2021年の8月に脳梗塞のため51歳の若さで亡くなられている。
『ぷよぷよ』のノベライズは、他に、織田健司版が存在するが、本日紹介するのは山本剛の『魔導物語』『新☆魔導物語』『超☆魔導物語』の3シリーズ、全9冊の方である。いずれも角川のスニーカー文庫から刊行されている。
- コンパイルがまだ元気だったころの「魔導物語」ノベライズ
- おススメ度、こんな方におススメ!
- 『魔導物語』あらすじ
- オリジナルのアバウトな世界観を再現
- 『新☆魔導物語』あらすじ
- 『魔導物語ARS』に準拠
- 『超☆魔導物語』あらすじ
- 『わくわくぷよぷよダンジョン』に準拠
- この時代のゲームノベライズならこちらも!
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
かつて『ぷよぷよ』にハマっていた方、いまでも『ぷよぷよ』が大好き!という方。『魔導物語』懐かしー!叫びたい方。「ぷよまん」が好きでよく食べていた方。あの当時のゆるいコンパイルのノリが好きだった方におススメ。
ここからネタバレ
『魔導物語』あらすじ
魔導学校の最上級生に進級したアルル。担任のルシファー先生から与えられた卒業課題は「シュテルン博士のところからあるアイテムを持ち帰ること」だった。お供のカーバンクル、悪友のルルーと共に、どこに居るのかもわからない博士の行方を求め、アルルの探索の旅が始まる。その行く手には幾多ものトラブルが待ち受けていた。
オリジナルのアバウトな世界観を再現
第一シリーズの『魔導物語』は1994年~1995年にかけて刊行されている。全三冊。
懐かし過ぎる。諸般の事情で読んでみたわけだが、世界観そのままに、ほのぼの&適当な物語展開がなんともそれっぽい。実際の戦闘シーンで『ぷよぷよ』をやるのはどう考えても不自然なのだが、作品世界の持つのほほんパワーがそれを許しているのがスゴイ。元ゲーマーとしては激しく懐かしい気分に。あの頃はコンパイルも元気だったよなあ。よもや、この後数年で倒産するとは思っても居なかった。
『ぷよぷよ』みたいに、きっちりとしたメインストーリーが無い作品のノベライズは土台からしてムリがあるわけだが、無数にいる、ゲームキャラにきちんと出番を与えて、メーカーや制作者の監修を受け、なおかつファンを満足させなくてはいけないわけだから難しい。もっとも、その反面基本的な設定さえ守れば、書き手の自由に物語を膨らましていけるメリットがあるんだろうけど。ファン向けのグッズの一種としては、それなりの内容に出来上がってる、、かな。
『新☆魔導物語』あらすじ
4歳の誕生日を迎えたアルル。彼女の父親はガイコツ魔導師との戦いで不帰の人に。落ち込むアルルを慰めようと、一計を案じた彼女の祖母は古い物語の書かれた本をプレゼントする。高名な南の賢者から貸し出されたというその本には不思議な力が!いつしか本の中の世界、「おとぎの国」へと彷徨いこんでしまうアルルだったが……。
『魔導物語ARS』に準拠
第二シリーズの『新☆魔導物語』は1996年~1997年にかけて刊行されている。全三冊。
第二シリーズはオリジナルのゲームの『魔導物語ARS』(懐かしのPC-9801ゲームだ)に準じていて、4歳のアルル(A)、16歳のルルー(R)、14歳のシェゾ(S)をそれぞれ主人公にしている。一作目の本編は主人公が4歳のアルルってことで、童話タッチのですます調で物語が進行していく。無理矢理な展開も、この世界観ならありかな。
第二巻は、これまでアルルの陰として虐げられてきたルルーを主人公とした作品。なのでアルルの出番は控え目。個性的なキャラクターの多い作品だから、こういうのもアリだろう。せっかく子供サイズになってしまったのだから、どうせならそれで最後まで話を引っ張ればいいのにと思ったけど、途中であっさりその問題は解決してしまって肩透かし。とにかく全編ルルー尽くしなので、ファンとしては嬉しい一冊かもしれない。
第三巻は、シェゾ・ウィグィィ編。主人公が主人公だけに、本作は比較的シリアスノリで、やや凝った構成になっている。で、ゴメン。ARSやってないのでどうもシェゾ・ウィグイイに詳しくなかったりして。「お前が欲しぃぃ」とか言いながらアルルに迫ってくる変態さんというイメージしか無いんだけど。こうして本が出るくらいなのだから、きっとそれなりにファンがついていたのだろうと想像。
『超☆魔導物語』あらすじ
第三シリーズの『超☆魔導物語』は1999年~2000年にかけて刊行されている。全三冊。
いずことも知れぬ辺境の地に突如として出現した巨大テーマパーク「わくわくぷよぷよらんど」。幾多もの迷宮をくぐり抜けた勇者には、"すっごい魔法のアイテム"が与えられると聞いて、多くの冒険者たちが群がるように集まってきた。ご多分に漏れず、この地へとやってきたアルル、ルルー、シェゾの三人は、そこでサタンの仕掛けたとんでもないトラブルに巻き込まれていく。
『わくわくぷよぷよダンジョン』に準拠
今回はセガサターン版の『わくわくぷよぷよダンジョン』をベースとしている。
ゲームは未プレイながら、話を読んでいる限りでは『トルネコ~』『シレン~』のようなダンジョン自動生成型のローグ系RPGなんじゃないかと思う。
過去の2シリーズと比べて、もっともゲームノベライズ色が強い作品。入るたびに構造が変わるダンジョン、っていう舞台環境が特殊なせいか、状況だとかシステムの説明をしていくだけでそこそこページが稼げてしまう。あまり内容は濃くないのだが、それでも三冊分の長さなってしまったのはそのせいだろう。
というわけで、山本剛の手による魔導小説はこれで終了。版元を変えて(ファミ通文庫)、執筆者も織田健司に変わって、もうしばらく「魔導物語」のノベライズは続いていく。織田健司版の感想はこちらから。
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