ネコショカ

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『M.G.H. 楽園の鏡像』三雲岳斗 SF×ミステリの良作品


第1回日本SF新人賞受賞作品

2000年刊行作品。作者の三雲岳斗(みくもがくと)は1970年生まれ。

1998年の『コールド・ゲヘナ』が第5回電撃ゲーム小説大賞に選ばれ作家デビュー。翌年の1999年には『アース・リバース』が第5回スニーカー大賞特別賞に。そして本作『M.G.H.』は、第1回日本SF新人賞を受賞と、デビュー早々三つの賞を取ってしまい、ラノベ、エスエフ系の界隈でちょっとした話題になった。

 

M.G.H.―楽園の鏡像

2006年に今は亡き、徳間デュアル文庫より文庫版が登場している。こちらはレーベルの特性もあってか、かなりライトノベルテイストな装丁となっている。

M.G.H.―楽園の鏡像 (徳間デュアル文庫)

M.G.H.―楽園の鏡像 (徳間デュアル文庫)

 

短命に終わった日本SF新人賞

日本SF新人賞は、日本SF作家クラブが主催していたエスエフ系の新人賞で、徳間書店のエスエフ雑誌『SF Japan』が後援についていた。1999年に始まり、残念ながら2010年で終了となってしまった。『SF Japan』が休刊になってしまったのも痛かったかな。

この賞は20人余りの作家を世に送り出したが、活躍度で言うと三雲岳斗が群を抜いている印象である。エスエフからミステリまで幅広くこなし、作品数も圧倒している。

あらすじ

大学院生の鷲見崎凌は従姉妹の森鷹舞衣の懇願により、偽装結婚の末に宇宙ステーション「白鳳」へ赴くが、そこで思わぬ事件に遭遇することになる。無重力空間内での墜落遺体。それは果たして事故なのか殺人事件?はたまた覚悟の末の自殺だったのか。あり得ない死亡原因に愕然とするステーションスタッフたち。そして第二の事件が……。

エスエフ×ミステリの愉しみ

重力が無い筈の無重力空間でどのようにすれば墜落死が出来るのか。エスエフマインドに溢れた魅力的な謎の設定はなかなか良い感じ。エスエフならではの特殊状況を、ミステリ的に解き明かしていくのである。

この作者の他の作品に比べると地味で、外連味も少ないものの、わりとコンパクトによくまとまった良作なのではないかと。セカンドライフ(懐かしい)もどきの仮想ネットスペースをこの時点で予見出来ていたのはさすが。

M.G.H.―楽園の鏡像

M.G.H.―楽園の鏡像

 

なお、後に刊行される『海底密室』は本作の十数年過去の時間軸の物語で、登場人物も一部リンクしている。こちらについても後程感想をあげる予定。

海底密室 (徳間デュアル文庫)

海底密室 (徳間デュアル文庫)