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『密室の鍵貸します』東川篤哉のデビュー作はユーモア×本格ミステリ

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東川篤哉の第一作はKAPPA-ONE登龍門から

2002年刊行作品。作者の東川篤哉(ひがしがわとくや)は1968年生まれ。短編作品でのキャリアは1996年からあったものの、本作が最初の長編作品となっている。

「光文社のメフィスト賞」的な存在のKAPPA-ONE登龍門(かっぱわんとうりゅうもん)枠からの初選出作品。つまり同様にこの年KAPPA-ONE登龍門から『アイルランドの薔薇』でデビューした石持浅海とは同期生ということになる。

2002年から始まったKAPPA-ONE登龍門だが、残念ながらそれほどうまく行かなかったようで2008年を最後に運用が止まってしまった。短命に終わった企画だが、東川篤哉そして、石持浅海を世に送り出した点では十分に価値のある賞であった。

なお、光文社文庫版は2006年に登場している。表紙のテイストが全然違うね!

密室の鍵貸します (光文社文庫)

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

本格ミステリだけど、ユーモア要素たっぷりの作品を読んでみたい方。タイトルが気になるミステリ愛好家の方。「光文社のメフィスト賞」、KAPPA-ONE登龍門に興味がある方。東川篤哉、デビュー当時の作品を読んでみたい方におススメ。

あらすじ

烏賊川市立大学映画学科の四年生戸川流平は人生始まって以来の窮地に立たされる。別れたばかりの彼女が殺害され有力な容疑者として流平の名前が挙がる。しかしその犯行当時、流平は完全密室の中で大学の先輩の死体を発見していたのだ。動転のあまり現場を逃げ出してしまった流平に警察の追っ手が迫る。果たして真相は如何に??

ここからネタバレ

本格×ユーモアミステリ

なにせ密室モノだから紛れもない本格ミステリなのだけど、カッパノベルズはこういうのが好きなのか、重厚感や古色蒼然たる本格の雰囲気は皆無。ユーモアペーソス溢れるライトなテイストとなっている。

お間抜けな主人公に、間抜けな探偵役、饒舌な警部に、元ヤンキーの部下刑事。類型的だけどキャラの書き分け頑張ってますっていう作者の"配慮"が透けて見えてしまう当たりは新人故ってところかな。この頃はまだまだぎごちない。

しかし、トリックはともかくとして、あの犯人(その1の方)の設定は、さすがに無理があるような……。こういう立ち位置の人を犯人にしてしまうのは反則なのでは?意外云々以前に拍子抜けした。そりゃないだろうと思うなあ。

でもバカミスなんだけど、端々までしっかり考えて作ってあるところは好印象。この芸風が正統進化して、後の大ヒット作『謎解きはディナーのあとでシリーズ』につながっているようにも思えるのだ。

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