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『模倣の殺意』中町信 復刊したら40万部も売れてしまった作品

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何度もタイトルを変えて復活した中町信のデビュー作

作者の中町信(なかまちしん)は1935年生まれ。出版社勤務を経て1989年から専業化。90年代に数多くのミステリ作品を発表した作家であるが、残念ながら2009年に他界されている。

2005年刊行の作品だが、本作の刊行経緯は少々込み入っている。

模倣の殺意 (創元推理文庫)

オリジナルは1971年の第17回江戸川乱歩賞の最終候補作であった『そして死が訪れる』である。乱歩賞の入賞は逃したものの、内容は高く評価され1972年に雑誌「推理」上にて『模倣の殺意』のタイトルで掲載され、これが翌1973年に『新人賞殺人事件』と改題されて双葉社より単行本が上梓された。

これが後の1987年に『新人文学賞殺人事件』として徳間文庫に収録される。

ここから18年を経て2005年に、創元推理文庫から刊行されたのが本書である。刊行されるごとに改稿が繰り返されており、創元版がその最終稿とされている。

創元推理文庫版はメチャ売れたらしい

ちなみに、この創元推理文庫版の『模倣の殺意』は、40万部近くを売り上げた大ヒット作になった。以下、産経新聞の記事をアーカイブより引用。

リンク先にはトリックのネタが書いてあるので注意してね。

平成16年に出た創元推理文庫版は4万5000部の段階で在庫切れになっていたが、昨年末、大手書店チェーンの文教堂が始めた品切れ商品発掘企画の一冊に選ばれると、それから半年で計34万部を増刷。累計は25刷38万5000部に達している。

産経新聞2013.7.13 08:09記事より

ダヴィンチにも記事があったのでリンク。

2013年の記事でこれだから、現在ではさらに部数を伸ばしているものと思われる。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

昭和の名作ミステリを読んでみたい方。日本のミステリ史において、重要な作品を是非抑えておきたいと思っている方。昭和時代、特に高度成長期の社会の雰囲気を感じ取りたい方。売れている人気作品を読んでみたいと思っている方におススメ。

あらすじ

作家坂井正夫が青酸カリによる服毒死を遂げる。小説家としての行く末に悩んだ末の自殺と警察は判断するが、恋人の中田秋子はその死に不審を感じ独自の調査を開始する。一方、ルポライター津久見伸助は同人仲間であった坂井の死の真相について、記事にするよう週刊誌から依頼を受ける。調査の過程で津久見はとある有名作家の盗作疑惑にたどり着く。事件の意外な真相とは。

ここからネタバレ

高度成長期が舞台のミステリ作品

さすがに50年近くも前の作品なので古さは否めないが、それはそれで高度成長期が舞台のミステリと割り切ればそれなりに楽しめる。

肝心のトリックについてだが、ヒントはけっこう出ているので、最初の違和感に気付けば比較的容易にネタは割れる。今でこそ当たり前に使われるこの手のトリックも、当時としてはこれが先駆であったという点が評価されての復刊なので、歴史的価値も含めて堪能すべきだろう。

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