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『NO推理、NO探偵?』柾木政宗 第53回メフィスト賞受賞作


柾木政宗のデビュー作

2017年刊行作品。柾木政宗の第一作。第53回のメフィスト賞受賞作品である。作者の柾木政宗(まさきまさむね)は1981年生まれ。ワセダミステリクラブ出身。

NO推理、NO探偵? (講談社ノベルス)

『NO推理、NO探偵?』には、2019年に続篇的な存在の『ネタバレ厳禁症候群 ~So signs can’t be missed!~』が刊行されている。こちらは講談社タイガからの登場。本作同様に女子高生探偵のアイと助手のユウが活躍する作品である。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

メフィスト賞作品ならなんでも読む!主義の方。メフィスト賞らしい「変化球」系の作品を読んでみたい方。『NO推理、NO探偵?』のタイトルに何ぞや!?と惹かれた方。なんでも受け止めることができる、心の広い方におススメ。

あらすじ

女子高生探偵のアイを熱烈に応援する助手のユウ。ロジカルな思考で犯人を指摘するアイだったが、彼女の人気はいまいちパッとしない。ぶっちゃけ、推理って、別にいらなくない?アイをメジャーな名探偵に押し上げるべく、助手ユウの「推理をしない」名探偵プロデュースが始まる。NO推理、NO探偵。果たしてその結末は?

ココからネタバレ

メタ視点が炸裂する掟破りの飛び道具ミステリ

本作の帯にはこう書かれている。

メフィスト賞史上最大の問題作!!
「絶賛」か「激怒」しかいらない。
すべてのミステリ読みへの挑戦状ーー。

『NO推理、NO探偵?』帯より

これを読むと、おそらくは、まっとうなミステリ読みを激怒させる系の作品なのだと想像がつく。個人的な読後感としては、清涼院流水の 『コズミック 世紀末探偵神話』や、蘇部健一の『六枚のとんかつ』に近いだろうか(傾向は違うけど)。

本作で特徴的なのは頻出するメタ視点である。「メタ」の意味について、はてなブログタグから引用させていただくとこんな感じ。

メタ
(一般)
【めた】
meta[連結系]
after,beyond,with,changeなどの意

ギリシア語で「間に」「後に」「越える」「〜について」の意のmeta
に由来する接頭語

一般的に「メタな意見」「メタな態度」という場合の「メタ」はメタフィクションのメタで、「問題になっている物事の一歩上」、もしくは「枠外」から俯瞰している態度、視点を指す。

はてなブログタグ「#メタ」より

具体的に言うと、作中人物であるはずのユウは、本来認知しえない読者の存在を意識して語っている。登場人物の中にも、自分がフィクションの中のキャラクターであることを自覚している者が出てくる。

メタ視点は作品に重層的な深みをもたらすことができる仕掛けだが、やりすぎると作品のバランスを大きく崩してしまう。言わば飛び道具であり、掟破り的な存在なのである。

推理って、別にいらなくない?

そして、本作最大の特徴は「推理って、別にいらなくない?」である。

概して、名探偵は事件の謎を解くためにさまざまな聞き取りをし、証拠を集めてロジカルに謎を解く。しかし、現実の世界を考えて欲しい。警察が推理をするだろうか?警察はいちいち事件の謎を論理的に解いたりはしない。犯人を捕まえて当人に自白をさせればいいのである。

本作では「推理って、別にいらなくない?」という視点から、六つの事件を描いていく。各エピソードは、日常の謎系であったり、アクションミステリであったりと、それぞれに趣向を凝らしてある。ジャンル小説のパロディとなっている点もポイントである。以下、各エピソードについてツッコミを入れていきたい。

女子高生探偵物語のエピローグっぽいやつ

プロローグ。本作の探偵役は美智駆アイ(みちかるあい)。そして助手役は取手ユウ(とりでゆう)である。このエピソード中に逮捕された犯人の催眠術「ロックド流夢(ルーム)」によって、アイは自慢の推理力を奪われてしまう。

これにより助手のユウは、推理をしない名探偵の誕生を目論むことになる。

「今の時代はさ、別に推理が目的でミステリを読まない人も多い」は確かにその通り。かくいうわたしも「読者への挑戦」をまじめに解いたことが無い。

日常の謎っぽいやつ

地面に等間隔に置かれた石の謎をめぐるミステリ。犯人?と思われる少年、更田トマトの真意はどこにあるのか?

若い女性を主人公に据えた、日常系の謎ミステリのパロディとなっている。日常の謎系ミステリの文体模写が、読み手を苛つかせる。わざとらしく散りばめられた手がかりと、日常の謎系舐めてんだろ!と突っ込みたくなるようなオチ。わざわざこの話だけイラストで締めているのも挑発的である。

アクションミステリっぽいやつ

ビルから突き落とされた少年、月田巧(つきたたくみ)。街の不良少年グループ、ヘイトフルフォッシルとブラックスワンの抗争を描いたお話。

推理はしないので、今回は暴力で解決!が今回のコンセプト。ヘイトフルフォッシル四天王との、アホっぽい戦いを我慢して読めるかどうかが本作のキモ。アイもユウも女子高生でありながら、戦闘力が高く

なお、ロナルド・ノックス『密室の行者』のネタバレが登場するので、未読の方は注意しておきたい。

旅情ミステリっぽいやつ

河川敷で殺害された女子大生、西内清美(にしうちきよみ)。広義の密室とも言える状況下で彼女は誰に殺されたのか。埼玉県、小江戸と呼ばれる風情のある街、川越を舞台とした作品。

二時間ドラマ(最近はもうないのかな)的な、トラベルミステリ、旅情ミステリとしての解法を持ち込んだお話。

エロミスっぽいやつ

街の大富豪、花巻家。全裸の首つり死体で発見されたのは当主の娘、花巻愛華(はなまきあいか)。男好きで知られた愛華には、複数の交際者の存在が。彼女は誰に、どのようにして殺されたのか。

推理が出来ないので、今回は色仕掛けで自白させます!がコンセプト。キーワードは「いやーん(はーと) 犯してん(はーと)」である。アホくさ。

安楽椅子探偵っぽいやつ

最終エピソード。ここまでの悪行が祟ってか、悪目立ちが過ぎたのか、謎の人物にアイとユウは監禁されてしまう。二人を誘拐し、閉じ込めたのは誰なのか?

「推理って、別にいらなくない?」でやってきた本作だが、最終回に至ってアイの推理能力が復活する。これまで強引に解決して来た事件が、実は推理によっても解明が可能であることが明かされる。メタ視点をしっかり最後まで活用してのけたというか、開き直った解決法に脱力させられる。

不毛な会話劇が辛い

以上、雑に『NO推理、NO探偵?』の内容を振り返ってみた。

アイとユウの滑りまくる不毛な会話が読んでいて辛く、かなりの忍耐力が強いられる作品である。日常の謎や、アクションミステリ、旅情ミステリ、エロミスなどのジャンルパロディも露悪的で、苛々せずに読み切るのはかなりの懐の深さが必要である(わたしは無理だった)。

こういう飛び道具でメフィスト賞を獲ってしまった作家がこの後、どんな作品を書いていくのかが気になる。ミステリマニア向けに振り切った内容だけに、一般の読者はなかなかついてこられないのではないだろうか。

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