井上剛のソノラマ作品
本日は懐かしのソノラマ文庫作品をご紹介したい。『響ヶ丘(ひびきがおか)ラジカルシスターズ』は2004年の刊行作品だ。
作者の井上剛(いのうえつよし)は京都在住のサラリーマン兼業作家。2001年の『マーブル騒動記』で、日本SF作家クラブ主催の日本SF新人賞を獲得し作家デビューを果たしている。
井上剛の著作リストは以下の通り。
- 『マーブル騒動記』:徳間書店(2002年)
- 『死なないで』:徳間書店(2003年)
- 『響ヶ丘ラジカルシスターズ』:朝日ソノラマ(2004年)
- 『悪意のクイーン』:徳間書店(2014年)
- 『きっと、誰よりもあなたを愛していたから』:徳間書店(2019年)
寡作ではあるが息の長い活動を続けている作家と言える。一番知られているのは再文庫版まで刊行された『死なないで』だろうか。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
宝塚的をモデルとした団体が登場するライトノベル作品を読んでみたい方。元気な女の子があれこれ頑張る系のお話が好きな方。日本SF新人賞出身の作家に興味がある、井上剛作品を読んでみたいと思っている方におススメ。
あらすじ
響ヶ丘音楽学校は天下に鳴り響く名門校。ヒビキジェンヌへの道を目指して全国から数多くの優れた少女たちが集う。まどか、由宇、忍の三人は入学一年目の予科生。彼女たちはふとしたことから、学園創設者が残したメッセージを発見する。それは響ヶ丘に訪れる危機を予言するものだった。舞台上の女子禁制を掲げる急進派集団「征服座」の暗躍に三人は巻き込まれていく。
ここからネタバレ
宝塚愛に満ちた一冊
あらすじを読めば判ると思うが、響ヶ丘=宝塚であることは明白なので(あとがきにも書いてある)、よって、その筋に詳しい人が読めば宝塚のパロディ小説としてそれなりに楽しめるのかもしれない。が、関東圏の男性で、なおかつその方面に詳しく無い人間としては、その点正しく読めているのかどうかは大いに不安が残るところだ。
敵対組織の「征服座」の描き方が、シリアスなのかギャグ混じりなのか徹底しきれないところがあって、この物語の性質がなかなか読み切れず中途半端になってしまったのがまず残念。超自然現象が出てくるわけでもなく、スーパーな女子高生という設定でもない普通の女の子三人がオトナ相手に戦うってのも、かなり無理がある。もっとギャグ路線に世界観を振ってしまえば、それでも納得出来たのだけれど。