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『わが名はレッド』シェイマス・スミス 復讐譚を暗黒小説で


2002年「このミス」海外部門第二位

2002年刊行作品。2002年の「このミス」海外部門で第三位に入っている作品。原題は『Red Dock』。作者のシェイマス・スミスはベルファスト生まれのアイルランド人。

プロフィールがかなりユニークなので引用しておこう。

アイルランドのベルファストに生まれ、不良ばかりが集まる学校に通った。何の資格も取得しないまま卒業した後、季節労働に従事し、路上や橋の下で寝泊まりしながら数年間をヨーロッパで過ごす。現在はアイルランドに落ちつき、競争馬の飼育に携わっている。そのかたわら、完全な独学で小説作法を身につけ、1999年に作者と同様に型破りな犯罪小説「Mr.クイン」で作家デビューを果たした。

HMV&BOOKSシェイマス スミス プロフィールより

その他の作品に、デビュー作である2000年の『Mr.クイン』(原題『Quinn』)、第三作である2004年の『名無しのヒル』(原題『The Moles' Cage』)がある。

わが名はレッド (ハヤカワ・ミステリ文庫)

あらすじ

犯罪社会に生きる男レッド・ドック。悲惨な幼少期を過ごし、心身に癒しがたい傷を負わされた彼は、自らにその境遇を課した者たちに復讐を開始する。嬰児誘拐を手始めに、出生記録の捏造、関係医師の殺害とレッドは遠大な計画を着々と進めていく。しかし連続殺人犯「切り裂きピカソ」の登場によりその筋書きはおおきく狂わされていく。

復讐譚をノワール小説で

ふつうの復讐モノって、主人公が目的を遂げるために時に手を汚しながらも、内面では良心に苛悩まされたり、苦しんだりなんて描写が入ることが多い。一般的な行動規範では悪とされる領域に堕ちたとしても、その精神はなんとかして高潔さを保とうとするじゃない?

しかし、本作はそんなセオリーの真逆を行くのである。復讐モノをノワール小説で。というコンセプトが心底面白い。この作品では正義の主人公が悲壮感を漂わせながら、憎き仇敵を倒すとなんてありがちな流れは微塵も存在しない。根っからの悪党が愉悦感に充ち満ちながら次々と復讐を果たしていくストーリー展開には新鮮さを感じた。こういうの、あんまりないけどアリだよね。

終盤はちょっと呆気ない

それでいて単なる復讐譚に終わらせず、もう一人の犯罪者ピカソを絡ませてくるあたりの変化球のキレの良さにも感心。ラストが少々アッサリし過ぎているのが難点と言えば難点か。簡単に妥協しすぎだろ>>主人公。あっけなく死んじゃうところもいかがなものかと。決して長くはない分量の中で頑張って居るんだけど、もう少し終盤の描写にページ数を割いても良かったのではないかと思う。 

わが名はレッド (ハヤカワ・ミステリ文庫)

わが名はレッド (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

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