ネコショカ

小説以外は別Blogにしました!
新書・実用書感想Blogビズショカ始めました

『新本格魔法少女りすか』西尾維新 魔法少女×ミステリの魅力


※2020/12/26追記 最終巻を読むために、一巻から再読をしています。なにせ十数年ぶりなので。とりあえず一巻を読み切ったのでレビューを刷新!二巻以降も随時レビューを修正していくのでしばらくお待ちを

西尾維新が描く”魔法少女”

2004年刊行作品。「ファウスト」のVOL.1とVOL.2に掲載された二作品に、書き下ろし一編を加えたもの。いちおうAmazonのリンクは貼ってみたけど、ノベルス版は現在入手困難である。

新本格魔法少女りすか (講談社ノベルス)

新本格魔法少女りすか (講談社ノベルス)

 

2005年に第二巻(第四話~第六話)、2007年に第三巻(第七話~第九話)が刊行された。「ファウスト」での連載では第十話が2008年に掲載されていた。

しかしその後、作品の執筆は中断。未完に終わるのか?と思われていたが、2020年に「メフィスト」誌に連載が移りようやく完結。同年最終の第四巻が発売された。

本作の執筆状況については例によってWikipedia先生をご覧いただきたい。

第一巻の講談社文庫版は2020年に登場している。表紙イラストは引き続き西村キヌが担当している。

新本格魔法少女りすか (講談社文庫)

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

初期の西尾作品を読んでみたい方。いーちゃんとも、阿良々木暦とも違う、ダークでシリアスな主人公像(でも小学生!)を楽しみたい方。魔法がある世界での能力バトルを楽しみたい方におススメ。

あらすじ

自らの野望のためにはいかなる犠牲をも払う男、供犠創貴。目的のためには手段を選ばない小学生だ。駒となるべき人材を捜していた創貴は、不登校の同級生水倉りすかが魔法使いであることを知る。閉ざされた魔法の王国長崎から、行方不明の父を追って佐賀県にやってきたりすか。彼女の持つ「時間」を操る力には恐るべき秘密が隠されていた。

ココからネタバレ

長崎が禁断の魔法王国に!

現代の日本のような時代を舞台としていながらも、長崎は城門の向こうの禁断の魔法王国だし、「魔法使い」も「魔法」使いもわらわら出てくるしと、設定的にはかなり弾けている感じ。西尾維新作品らしいと言ってしまえばそれまでだけど。

佐賀県や福岡県など、県名レベルでは実在の地名が登場するが、森屋敷市、河野市、博多市(福岡市はあるが博多市は存在しない)など市町村レベルでは架空の地名になっている。

長崎県は禁断の魔法王国となっており、その他の県とは城門で隔てられている。長崎県民は魔法が使えて当たり前。それ以外の九州各県とは全く異なる常識がまかり通っているようだ。ただ、この世界の魔法使いは何でも出来るわけではなく、個々の魔法使い固有の魔法が使えるだけ。能力バトルもので言うところの「能力」に近いかもしれない。

では、各エピソードごとに内容を振り返る。

第一話 やさしい魔法はつかえない。

英題:Subway Accident

地下鉄新木砂駅で、四人の男女が列車に飛び込み死亡する。現場に居合わせた供犠創貴(くぎ きずたか)は、事件の背後に魔法の力を感じ、その謎を探るべく調査に乗り出す。

今回お亡くなりになったのはこちらの四人。いちおうメモしてみたけど、西尾維新キャラにしてはフツウの名前なので、単なるモブなのかもしれない。

  • 賀川先郎(かがわさきろう) 高校生
  • 矢那春雨(やなはるさめ) 会社員
  • 真辺早紀(まなべさき) 主婦
  • 田井中羽実(たいなかうみ) 家事手伝い

赤の他人同士である四人が、同時に飛び込み自殺をする?そんなことがありえるのか?魔法によって行われた犯罪であるなら、それはいかにして実現されたのか。仄かにミステリ的な要素が入った作品構成となっている。

第一話ということで、キャラクター紹介と、基本設定の説明回。ネイティブの「魔法使い」と、後天的な学習者「魔法」使いの違い。「魔法使い」使いである創貴の独自性が示される。

登場する魔法使いはこの方。

  • 高峰幸太郎(たかみねこうたろう):「魔法」使い
  • 能力:真空刃(かまいたち)
  • 属性:風
  • 種類:召喚

ヒロイン水倉りすかの持つ能力はこちら。

  • 水倉りすか:「魔法使い」
  • 称号:赤き時の魔女
  • 能力:運命干渉系、自分の中の時間を操作できる能力
  • 属性:水
  • 種類:時間

死の危機を迎えないと発動しない呪いのような魔法である。水倉りすかは常にカッターナイフをカチカチさせている。水倉「りすか」とはもちろん、リストカッターを意識したネーミングなのだろう。

このエピソードでは驚かされるのは、主人公、供犠創貴の小学五年生(10歳!)とは思えない異常なメンタルである。自分以外の人間を見下す孤高性。りすかすらも駒と見做す非人道性。自らの肉体を傷つけてもなお怯まない精神の強さ。小学生らしからぬキャラクターがいかにして形成されたのかは、今後のお楽しみというところだろうか。

第二話 影あるところに光あれ。

英題:Shadow Kingdom

創貴とりすかの同級生である、在賀織絵(ありがおりえ)が誘拐される。犯人は悪名高き「魔法使い」影谷蛇之(かげたにへびゆき)。五つの称号を持つ、凶悪犯を相手に二人はどう戦うのか。

二話目にして能力的に格上の存在との対決である。このお話に登場する少女連続誘拐犯、影谷蛇之のスペックはこんな感じ。

  • 影谷蛇之(かげたにへびゆき):「魔法使い」
  • 称号:影の王国/豚歌い/鷲豚の輪廻/赤豚紳士/悪意の天才
  • 能力:影縫い(相手の動きを固定する)
  • 属性:光
  • 種類:物体操作

自分たちより能力が上の相手に対して、小学生の二人がいかにして勝利をもぎ取るか。このシリーズが能力バトルものであることがわかってくる。破格のスペックを持ちながらも使い勝手が難しいりすかを、創貴が自らの肉体の欠損をも覚悟で使いこなしていく。

救出した在賀織絵を、自らの手で殺害する創貴に、読者的にはかなりビビる。西尾維新作品の主人公は比較的女性に甘い印象があるが(阿良々木さんのせいだけど)、供犠創貴に限っては例外であるようだ。

第三話 不幸中の災い。

英題:From Beyond

在賀織絵の一件から、創貴とりすかの間には不穏な空気が生まれる。そこに、りすかの従兄妹である「魔法使い」水倉破記(みずくらはき)が登場。りすかを長崎に連れ帰ると告げる破記。成り行きから、創貴は破記と勝負することになる。

  • 水倉破記(みずくらはき):「魔法使い」
  • 称号:迫害にして博愛の悪魔
  • 能力:対象者に不幸をもたらす
  • 属性:水
  • 種類:運命

第三話はお兄ちゃんキャラの登場である。ヒロインの昔馴染みが登場。主人公との間にも溝が出来ている。二人の関係性にヒビを入れておきながら、再度関係性を強めて見せる、「雨降って地固まる」的なエピソード。

創貴に次々と襲い掛かる不幸と、逃げまどいながら水倉破記の能力を探る動き。能力バトルモノのエピソードとして純粋に面白い。能力ではなく、悪知恵とハッタリと糞度胸で戦う創貴のスタイルは、ジョジョ第二部を彷彿とさせられて個人的にも好み。

創貴が戦う理由は?

以上、ザックリと第一巻の内容を振り返ってみた。

気になるのは、驚異の10歳児、供犠創貴のアクの強さだろう。小学生なのに野心家で冷徹、大胆にして細心。状況如何では人殺しも躊躇いませんって、いくらなんでもこんな小学生いないだろ!

何がどう間違えばこんな小学生が育つのか?創貴の目的は何なのか?どうしてこれほどまでの強い意志を持つに至ったのか?その後の巻で、描かれていくのではないかと期待したい。

新本格魔法少女りすか (講談社文庫)

新本格魔法少女りすか (講談社文庫)

  • 作者:西尾維新
  • 発売日: 2020/04/15
  • メディア: Kindle版
 

『新本格魔法少女りすか』シリーズの感想はこちらから