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『新本格魔法少女りすか2』西尾維新 心地よい王道展開

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※2021/1/6追記 文庫版がリリースされたのに伴い再読中。既にレビュー済の作品だが、加筆修正の上で再アップ!

新本格魔法少女りすかシリーズの第二弾

2005年刊行作品。りすかシリーズ二作目。「ファウスト」のVOL.3とVOL.4に掲載された二作品に書き下ろし一編を加えたものである。第四話~第六話までを収録している。

新本格魔法少女 りすか2 (講談社ノベルス)

新本格魔法少女 りすか2 (講談社ノベルス)

  • 作者:西尾 維新
  • 発売日: 2005/03/16
  • メディア: 新書
 

2020年にようやく講談社文庫版が登場した。

新本格魔法少女りすか2 (講談社文庫)

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

能力バトルものが好きな方。十五年前の西尾維新がどんな作品を書いていたか気になる方。グロ描写に耐性のある方。ちょっと陰のある小学生男子が好きな方におススメ。

あらすじ

五つの称号を持つ魔法使い影谷蛇之を激戦の末に退けた創貴とりすか。ニャルラトテップ水倉神檎の手がかりを得るべく、影谷の残したディスクを追い求め廃病院を訪れる二人。そこで出会ったのは天敵と呼ぶしかない異形の存在だった。ツナギと名乗る少女に秘められた恐るべき能力。彼らは絶体絶命の窮地から逃れることが出来るのか。

ココからネタバレ

仄かに垣間見える悲劇の予感

ようやくこの世界にも読み手として馴染んできたのでサクサク読めた。お仲間キャラも増えてきて、手に汗握る少年ジャンプ的な能力バトルを素直に楽しめるようになってきた。

小学生離れした野望を持つ主人公。今回は僅かではあるけれども、そのモチベーションの秘密の一端が明かされ、悲劇の予兆を感じさせてくれている。いーちゃんの秘密も相当引っ張っていたくらいだから、終盤まで当分秘密のままなんだろうな。

では、以下各エピソードの感想を簡単に。

第四話 敵の敵は天敵!

英題:Eating One

水倉神檎が残したとされるディスクの争奪戦。本作における主要キャラの一人。ツナギこと、繋場いたち(つなぎばいたち)が初登場する。何でも食べてしまうことで、魔法を解呪してしまう反則級の能力に対してどう戦う?というお話。

ツナギの能力はこんな感じ。

  • ツナギ/繋場いたち(つなぎばいたち):「魔法使い」
  • 能力:身体中に512の口がある。食べることで魔法を解呪できる。
  • 属性:肉
  • 種類:分解

ツナギの能力はなんでも分解してしまうけど、分解速度には限界があるのでは?ってことで、りすか本体と影谷蛇之の「矢」。更に、創貴の一部までもを、一気に食わせる飽和攻撃に打って出る。

創貴とりすかの戦いは常に痛々しい。度重なる損傷で、創貴の肉体が半分以上りすかと同着していたが故の勝機。それにしてもここまでやってのける小学生の覚悟が凄すぎて、やはりそのモチベーションの源泉が謎である。

ちなみに本来登場予定であった、恐るべき雑魚、というかとても可哀そうな魔法使いはこの人。いちおう書いておこう。

  • 火住峠(ひずみとうげ):「魔法使い」
  • 能力:不明
  • 属性:火
  • 種類:不明

第五話 魔法少女は目で殺す!

英題:Evil Eye

辛うじてツナギとの戦いに勝利した創貴とりすか。そこに、転校生を装ったツナギ(繋場いたち)が現れる。更に城門委員会、委員長秘書の椋井(むくい)むくろが登場。奪ったディスクを渡すよう交渉される。

遂に六人の魔法使い、最初の一人である眼球倶楽部・人飼無縁が登場。能力はこちら。

  • 人飼無縁(ひとかいむえん):「魔法使い」
  • 称号:眼球倶楽部・魔眼遣い
  • 能力:魔眼(実際は電気ショック)
  • 属性:雷
  • 種類:操作

前回登場したツナギがさっそくデレてくれて、あっさり仲間になる展開は王道パターンですな。ツナギは仲間になってくれるとけっこう情が深くていいキャラかも。

魔法式も魔法陣も、呪文の詠唱もなく発動できる「魔眼」。無敵感漂う相手に対しての知能戦が楽しい。創貴の「魔法使い」使いらしさがよく発揮された一編。

第六話 出征!

英題:up-down game

夏休みを迎えた創貴とりすかは、魔法の王国長崎への出征を決意する。一方、旅立ちを目前に控えた創貴の前に、父、供犠創嗣(きずきずつぐ)が見送りに現れる。これまで明かされていなかった、供犠家の秘密がようやく描かれる。

このお話は戦闘シーンなし。長らく引っ張ってきた創貴の戦う理由が、見えてくる。供犠創嗣の四番目の妻、供犠(折口)きずなは、創貴にとって血が繋がらないながらも「家族」として大きな存在感を持っていた女性である様子。ただ、彼女は魔法使いとの戦いの中で、おそらく死亡しているのではないかと思われる。

創貴の中で、未だその死は認識されていないようで、その傷跡の深さが伺える。

供犠きずなは自称魔法使いらしいので、いちおうスペックを書いておく。

  • 供犠きずな(くぎきずな):「魔法使い」
  • 能力:予知能力、未来視
  • 属性:獣
  • 種類:知覚 

「魔法の王国長崎県」がとても気になる

スゴイ敵登場⇒倒す⇒仲間!という由緒正しい少年漫画の王道を着実に歩んでいく第二巻。ツナギのキャラクターは能力的にもビジュアル的にもなかなか秀逸。きっと次巻では「仲間になった途端ヘタレになる」「新キャラに速攻倒されてその強さを引き立てる」「ここはアタシに任せて先に行け!と叫んでその場を守って横死」というパターンを踏襲するのでは無いかと想像。

魔法の王国長崎県(笑)に何があるのか興味は尽きない。三巻を早く読んでしまおう。

新本格魔法少女りすか2 (講談社文庫)

新本格魔法少女りすか2 (講談社文庫)

  • 作者:西尾維新
  • 発売日: 2020/08/12
  • メディア: Kindle版
 

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