基本ネタバレありなので注意してね。
現在試行錯誤中につき、デザインころころ変わってます
しばらくしたら落ち着くと思うのでご容赦下さいませ

山本譲司「累犯障害者」どうして障害者たちは犯罪を繰り返してしまうのか

服役した元代議士が見たものは

今週のお題「読書の秋」便乗シリーズ、本日はノンフィクション系からこちらを。

累犯障害者 (新潮文庫)

累犯障害者 (新潮文庫)

 

2006年刊行。雑誌「新潮45」に発表された三編に書き下ろし四編を加えて単行本化したもの。2009年に文庫版も刊行されている。

内容

衆議員議員山本譲司は秘書給与流用事件で実刑判決を受ける。獄中で彼が直面したのは、刑務所内に占める障害者率の驚くべき高さだった。「これまで生きてきたなかで、ここが一番暮らしやすかった」そう語る彼らのような存在はいかにして生み出されてくるのか。決してマスコミが報道しない現代日本の究極の不条理を告発する。

服役して知った、刑務所内の障害者率の高さ

筆者の山本譲司は「♪みちのく一人旅~」の人ではなくて、何年か前に秘書給与流用問題で逮捕された元国会議員の人。執行猶予ではなく、本当に服役していたのか。まずその点が驚き。逮捕前後の頃は評判は散々だったけど(カツラ疑惑とかあった!)、刑務所での生活からはそれなりに得るものがあったようで、当時の体験をつづった『獄窓記』 はけっこう話題になったようだ。本書は獄中での体験を元に、新たな取材を行い書き下ろした第二弾となる。

筆者は服役中、障害者の受刑者と同じセクションに割り当てられていて、所内に占める障害者率のあまりの高さにショックを受けたのだという。ちなみに所内では障害者に向けた特別な更生プログラムは一切存在しないのだそうだ。本書ではタブー視されて報道されないできた障害者の犯罪について鋭く切り込んでいく。

2004年の統計ではこの年の受刑者3万人余のうち、知的障害者と認定されるレベル(知能指数69以下)が、実に22%!測定不能者を加えると30%弱もの数に上っていることが明らかにされている。有名な事件では下関駅が全焼した放火事件、少し前のレッサーパンダ通り魔事件。これらはいずれも知的障害者の犯罪だったが、いずれも犯人が特定されてからは報道はトーンダウン。これらの犯罪が障害者によるものであったことはほとんど知られていない。

福祉の手がもっとも届きにくいところ

本書ではマスコミの勝手な自主規制から世に知られることが無かった、障害者による犯罪についてのルポルタージュ。その内容はとにかく衝撃的だ。身元引受人が居ない知的障害者を率先して引き取り、養子縁組までして障害者年金にたかる暴力団組織。親子揃って売春婦の知的障害者。ろうあ者だけで組織された暴力団。ろうあ者のろうあ者に対する犯罪。同時代の日本で起きていることとはとても思えず絶句する。

犯罪を犯した障害者は福祉の手が一番伸びにくい部分で、刑務所を出たとしても結局のところ、ホームレスになるかヤクザになるか、閉鎖病棟に送られるしかないというのが寒々とした現状だ。結局のところどうすればいいのかという問いには、本書でも回答は出せていない。そもそも問題そのものが不可視になっている状況が、よりいっそう問題の解決を困難にしているように思える。その意味では本書が上梓されたことは、非常に意義のあることだったと思う。