基本ネタバレありなので注意してね。
現在試行錯誤中につき、デザインころころ変わってます
しばらくしたら落ち着くと思うのでご容赦下さいませ

歴代斎王たちへの愛がほとばしる「斎宮―伊勢斎王たちの生きた古代史」を読む

専門家による斎宮と斎王のガイドブック

今週のお題「読書の秋」もそろそろ終盤、本日ご紹介するのはこちらの一冊。

斎宮―伊勢斎王たちの生きた古代史 (中公新書)

斎宮―伊勢斎王たちの生きた古代史 (中公新書)

 

本書は2017年刊行。筆者は三重県立斎宮歴史博物館勤務。斎宮関連の著作も多い。

ちなみに、こちらは斎宮歴史博物館入口にある館名標識。メチャ素敵!(というか行ったことあるわたしw)

字体がかっこいい!

字体がかっこいい!

こんな内容の本

古代、天照大神を祀るために伊勢に送られた天皇家の未婚の皇女を斎王と呼ぶ。この斎王が暮らした場所が斎宮だ。斎王は天皇の代が替わるまでは帰京を許されない。
自らの血縁者を祭祀に捧げることで、天皇の権威は高まる。王権の伸長と共に制度が整備されるが、武家勢力の拡大とともに斎宮制度は衰え、南北朝時代には完全な終焉を迎える。

歴史上存在が確認出来る斎王は60人を超える。名目の上ではもちろんこの上なく名誉な役割だが、人身御供の側面は否めない。本書では歴代斎王の中から、特にキャラのたった7人のプリンセスを紹介しつつ、斎宮をめぐる悲喜こもごもを綴っていく。

斎宮、そして斎王という存在をご存じだろうか?

斎宮制度のルーツは、古くは飛鳥時代以前、神話の時代にまで遡る。天皇が代替わりするたびに、未婚の皇女が伊勢に送られ、天皇に替わって神に仕える。このシステム、なんと室町時代、南北朝の終わりあたりまで、続いたというのだから、800年以上の歴史がある制度なのである。

いたいけな内親王さまやら、女王の皆さんが、貧乏くじを引かされて、若い身空で、人生のもっとも美しい年代を、僻遠の地である伊勢で暮らさなくてはならない。この設定、ファンタジーなの?ライトノベルなの?と疑いたくなるくらい、魅力的だと思うのはわたしだけ?当事者の斎王さまにはまことに申し訳ないのだが、ぶっちゃけ素晴らしくないだろうか?(悶え中)

恥ずかしながら、わたしが最初に知った斎王は、フィクションの人物で恐縮だけど、『源氏物語』に出てくる、六条御息所の娘である斎宮女御こと、秋好中宮だ。物語故のフィクション的な設定なのかと思ったら、本当に存在した制度と知ってびっくりした記憶がある。

ちなみに、何故か今回に限って写真盛りだくさんなのは、わたしの斎王愛故の聖地巡礼の結果である。

名誉な職だけど、貧乏くじ的な側面も

斎宮は当初は内親王(天皇の娘)が担っていたが、当然この条件は厳しすぎて、該当者がなかなか出てこない。そのため、後代になるにつれてその条件は緩和されて、女王(親王の娘)あたりまでオッケーですよ、母方の出自が高くなくても大丈夫ですよという具合に候補が拡大されるようになる。

斎王の地位や権威、かけられるコストは後代になればなるほど低下していったようで、周辺の治安も悪くなっていく中、平安時代後期以降の斎宮送りは、かなりの「貧乏くじ」であったに違いない。

よくもまあ室町時代初期まで、制度が保ったと逆に言うべきであろうか。

著者の炸裂する斎王たちへの愛

本書を読まれた方は気付くかもしれないが、マンガのキャラクターイラストや、一人称の口語体で語られる斎宮ストーリーなど、中公新書にしてはやけにテイストが柔らかい。というか緩いのである。

ずいぶん珍しい書き方だなと思い、最後まで読んでみたところ、あとがきに氷室冴子に関する言及があってなんとなく腑に落ちた。さらに調べてみたところ『氷室冴子: 没後10年記念特集』に寄稿までされている方なので、かなり熱心なファンなのではないだろうか。ライトノベルとかコミックの類もかなり読みこんでいる方なのではないかと推察する。
本書では全編を通じて筆者の斎王愛が溢れんばかりに詰め込まれていて、その熱量に読み手の心も高まるのである。

斎宮は一度行ってみるべき!

ちなみに近鉄伊勢線には「斎宮(さいくう)」という名の駅がある。地名で言えば三重県多気郡明和町大字斎宮になる。ここはかつて、斎宮が置かれていた場所なのだ。

近鉄伊勢線斎宮駅

近鉄伊勢線斎宮駅

ここ十数年で発掘調査や、周辺整備が進み、在りし日の斎宮が健在であった時代のよすがを、微かながらも偲ぶことが出来るようになっている。

斎宮跡

斎宮跡

斎宮ミニチュア復元図

斎宮ミニチュア復元図

筆者が所属している斎宮博物館もこの地にあるので、セットで訪れてみると良いかと思われる。歴史愛好家なら垂涎の斎宮ワンダーランドである。

 

斎宮歴史博物館

斎宮歴史博物館