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『人類最強の初恋』西尾維新 哀川潤メインの戯言シリーズスピンアウト作品

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戯言シリーズのスピンアウト作品「最強シリーズ」

西尾維新の「戯言シリーズ」には、いくつかの派生シリーズがある。殺人鬼の一族零崎家の人々を描いた「人間シリーズ」、そして作中最強の人物である哀川潤を主人公に据えた「最強シリーズ」である。

「最強シリーズ」はこれまでに、2015年の『人類最強の初恋』、2016年の『 人類最強の純愛』、2017年の『人類最強のときめき』の三冊が上梓されている。本日ご紹介するのは、シリーズ一作目の『人類最強の初恋』である。

『人類最強の初恋』には、2014年Vol.1『メフィスト』誌に掲載された「人類最強の初恋」、そして同Vol.2掲載の「人類最強の失恋」の二編が収録されている。

 

人類最強の初恋 (講談社ノベルス)

講談社文庫版は2020年5月に刊行される見込み。西尾維新作品のノベルス版が文庫化される際には、表紙が書下ろしになるケースが多かったように記憶してるけど、今回は変更なしなのね。

人類最強の初恋 (講談社文庫)

人類最強の初恋 (講談社文庫)

  • 作者:西尾 維新
  • 発売日: 2020/05/15
  • メディア: 文庫
 

ちなみに、「戯言シリーズ」のスピンアウト作品は、更に別系統の「哀川潤の失敗」シリーズがあるのだが、これについてはまた別の機会にご紹介したい。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

とにかく哀川潤が好きな方、最強の色は赤だと思う方、強者の気持ちを知りたい方、戯言シリーズは一通り読むと決めている方におススメ。

あらすじ

人類最強の請負人、哀川潤は退屈していた。あまりに強すぎるが故に、世界から爪はじきにされ、まったく依頼が来ない状態になっていたのだ。そんな彼女に驚くべき事態が訪れる(人類最強の初恋)。

制裁が解除され、再び依頼を受けることが出来るようになった哀川潤。しかし、彼女にもたらされた依頼は意外なものだった(人類最強の失恋)

ココからネタバレ

まさかのエスエフ展開

「戯言シリーズ」本編はミステリ作品だった(後半異能バトル化するが)、「人間シリーズ」は徹頭徹尾異能バトルモノ。そして今回の「最強シリーズ」は、タイトルからして恋愛モノなのか?と想像していたのだが、読んでみてビックリ。まさかのエスエフ作品なのであった。えー、エスエフなのかよ!

西尾維新らしい、読み手の期待の裏切り方と言えるが、哀川潤でガチの恋愛小説を読んでみたいと思っていた人間としてはちょっと肩透かし。

以下、収録されている二編についてコメント。

人類最強の初恋

なんとエスエフ作品の定番中の定番「ファーストコンタクト」モノ!である。

宇宙から飛来してきた謎の異星人は、見る人によって外見も反応も言葉も違って認識されてしまう。そしてやたらに対象者の好意の感情を掻き立ててくる「恋愛星人」であったという設定。

哀川さんクラスになるともはや人類レベルでは恋愛の相手すら見つからないのか(笑)。それはそれで可哀そうな気もするけど、本人はきっと微塵も気にしないんだと思う。規格外の強さに対する強烈な自負心。強者は強者としてただただ傲慢に生きるべき。そんないかにも「哀川潤らしい」考え方を知ることが出来る一編。

もっとも、戯言シリーズファン的には、いーちゃん・玖渚友夫婦に待望の第一子誕生の方が、本編よりも驚いたかな。女の子で、名前の読みは哀川潤リスペクトで「じゅん」であるらしい。

人類最強の失恋

「最強シリーズ」エピソード2は、なんと月世界での大冒険!

ER3システムの陰謀で、片道分の燃料しか積まないロケットで月に行かされた哀川潤は、果たしてどうやって地球への帰還を果たしたのか。「人類最強の初恋」からのご縁で、哀川潤係にされて、さっそく巻き添えくらってる長瀞とろみが悲惨過ぎる。

哀川さんなら、自力で月重力脱出して、無傷で地球まで生還できるじゃない?って気がしないでもなかったけど、そこまで破天荒な設定ではなかった模様。とろみとの「天才と凡人」談話が、ちょっと興味を引いたくらいで、本筋は至って地味な内容。

饒舌な、あまりに饒舌な

一人称の物語で、主人公が過剰なまでにしゃべり倒すのは西尾維新作品の特徴の一つである。一番成功したのはやっぱり「物語」シリーズかな。

今回の『人類最強の初恋』でも、哀川さんがとにかく喋って喋って喋り倒すのだが、「物語」シリーズの時ほどには、良い効果を出せていないように思える。言葉遊びが控えめだから?哀川さんのキャラが強すぎて、どんなピンチを与えてもテンションが上がらないからなのか?喋れば喋るほど、本筋のネタの希薄さが目立ってくるようで、読後感的にはかなり物足りないのである。冗長感だけが強まっていく……。

この点、今後のシリーズ展開で改善されるのかどうか。とりあえずは一通り読んでみるつもりではある。

おまけ:哀川潤の名言

凡人にはなかなか到達できない境地である。

自分が人類最強だってえ自覚症状は、そりゃ最高楽しいに決まってんだろ。

あたしは弱い奴が弱音吐いてるよりも、強い奴が弱音吐いてるほうがムカつくな。いいとこにいる奴が、自分はまだまだみたいな謙虚な姿勢を示すのってどーかと思う。もっと傲慢になれよ、もっと嫌われろよって思う。

お前がお前だって感覚と、そんなに変わらないーーただし、お前が人生を楽しんでいる限りにおいて。

人類最強の初恋 (講談社ノベルス)

人類最強の初恋 (講談社ノベルス)

  • 作者:西尾 維新
  • 発売日: 2015/04/23
  • メディア: 新書
 

 

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〇最強シリーズ

人類最強の初恋 / 人類最強の純愛 / 人類最強のときめき