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『さよならも言えないうちに』川口俊和 「コーヒーが冷めないうちに」シリーズの四作目!


シリーズ、三年ぶりの新作

2021年刊行作品。『コーヒーが冷めないうちに』『この嘘がばれないうちに』『思い出が消えないうちに』に続くシリーズ四作目。三年ぶりの新作である。川口俊和(かわぐちとしかず)の小説作品としては本作が四冊目。この人、このシリーズ以外書かないよね。

さよならも言えないうちに

サンマーク出版によると、シリーズの累計部数が130万部を突破!とのこと。相変わらず売れている。

全文音声朗読された、Audible(オーディブル)版は、12/24にリリース予定

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

取り返しのつかない過去の過ちについて後悔していることがある方。シンプルだけど心にグイグイ迫ってくるハートウォーミングな短編集を読んでみたい方。「コーヒーが冷めないうちに」の新作を心待ちにしていた方におススメ。

あらすじ

ここは過去に戻ることが出来る不思議な喫茶店フニクリフニクラ。とても面倒なルールを乗り越えると、懐かしいあの人にただ一度だけ再会することが出来る。うわさを聞きつけて、今日もこの店にはさまざまな老若男女が訪れる。「さよなら」を言えなかった四人の男女。彼らのかかえた後悔と、この店にやってきたそれぞれの理由とは……。

ここからネタバレ

本作だけでなく、「コーヒーが冷めないうちに」シリーズ全体の内容に触れているのでご注意を。

めんどくさいルールを再確認

久しぶりの新作なので、あらためてフニクリフニクラのルールを再確認しておこう。この喫茶店では、特定の条件を満たすと、過去に戻ることが出来る。しかし、そのためには以下のようなルールを守る必要がある。

一、過去に戻っても、この喫茶店を訪れたことのない者には会うことができない
二、過去に戻ってどんな努力をしても現実は変わらない
三、その席には常白いワンピースを着た女が座っている。その席に座れるのはその女が席を立った時だけ

四、過去に戻っても、席を立って移動はできない
五、制限時間はカップにコーヒーを注いでから、そのコーヒーが冷めるまでの間だけ

『さよならも言えないうちに』より

また、これまでのシリーズから、以下のルールも明らかとなっている。

六、過去に戻れるのは一度だけ(二回目の挑戦は出来ない)
七、コーヒーが冷めてしまっても飲み干さなかった場合は、その時間に取り残され幽霊となる。
八、過去だけでなく未来にもいくことが出来る。但し未来は不確定であり、望んだ人物に必ず再会できるとは限らない
九、過去に戻れるコーヒーを淹れることが出来るのは時田家の女だけである
十、妊娠した子供が女児である時点で時田家の女はその力を失う

『コーヒーが冷めないうちに』より

時間の流れを飛び越えるのは、なかなかめんどうくさいのである(笑)。

さよならを言えなかった四人

本作には四編の作品が収録されている。共通するテーマは「さよならを言えなかった」である。研究に明け暮れて家庭を顧みなかった門倉紋二(かどくらもんじ)は、事故で植物状態になってしまった妻に大切な一言を言えなかった。疋田(ひきた)スナオは、愛犬の最期を看取ることが出来なかった。石森(いしもり)ひかりは、プロポーズを断ってしまった元カレの死を、後になって知らされた。雉本路子(きじもとみちこ)は、酷い言葉で追い返してしまった父親の震災死に打ちのめされる。

取り返しのつかない過ち。もはや二度と会えない最愛の存在に、最後の言葉をかけてあげることが出来なかった。その後悔はどれほどのものだろうか。悔恨が彼らの人生に重い影を落とす。

このような状態にある登場人物たちにとって、フニクリフニクラの存在は計り知れない救いとなったはずである。

新ルール「記憶は残る」

『さよならも言えないうちに』では、前述したルールに加えて、新たな事実が明らかとなった。二つ目のルール「過去に戻ってどんな努力をしても現実は変わらない」の陰に隠されていた、以下の事実である。

過去に戻ってどんな努力をしても現実を変えることはできない。ただし、ルールは現実を変えないためにその事象に関して影響を与えるが、人の記憶に干渉することはない。

『さよならも言えないうちに』より

門倉紋二の妻、三重子(みえこ)が意識を取り戻したのは、門倉が過去に戻ってメッセージを伝えたことに因果関係があるように思える。門倉三重子の場合、死亡ではなく植物状態であっただけに、未来を改変する余地があったのではないだろうか。

「コーヒーが冷めないうちに」シリーズの時系列

最後に確認。

『さよならも言えないうちに』は『コーヒーが冷めないうちに』の翌年のお話として設定されている。せっかくなのでシリーズの時系列をまとめてみよう。

⇒シリーズ一作目。

  • 『さよならも言えないうちに』

⇒シリーズ四作目。『コーヒーが冷めないうちに』の翌年のお話。

⇒シリーズ二作目。『コーヒーが冷めないうちに』の数年後のお話。

⇒シリーズ三作目。『コーヒーが冷めないうちに』の十数年後のお話。

これまでは、『コーヒーが冷めないうちに』『この嘘がばれないうちに』『思い出が消えないうちに』と、刊行順に作中の時間が経過していた。しかし『さよならも言えないうちに』は、『コーヒーが冷めないうちに』の翌年の物語として書かれている。

『この嘘がばれないうちに』よりも前の話なので、ヒロイン数(かず)の問題は解決されていないことになる。『さよならも言えないうちに』は単著で読んでも問題ないように書かれているが、可能であれば、シリーズの刊行順に読んでおきたいところである。

閖上のたこ焼きが美味しそう

おまけ。

第四話「父を追い返してしまった娘の話」で言及された宮城県名取市、閖上(ゆりあげ)のたこ焼きが気になったので調べてみた。

串にささってる。ソースがドバドバかかっている。タコの存在感がデカい。あたりがほかのたこ焼きとの違いである様子。これ見てると、めっちゃ食べたくなってきた。

「コーヒーが冷めないうちに」シリーズの感想はこちら