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『きみとぼくの壊れた世界』西尾維新 未完の「世界」シリーズ一作目

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「世界」シリーズの第一作

2003年刊行作品。その後、『不気味で素朴な囲われた世界』『きみとぼくが壊した世界』『不気味で素朴な囲われたきみとぼくの壊れた世界』と続いていく、「世界」シリーズの一作目である。なお、2022年5月時点で未完のままである。

完結編となるシリーズ第5作目『ぼくの世界』が、「メフィスト」で連載されていたような気もするのだけど、まだ終わるには至っていないみたい。果たしてどうなる?

きみとぼくの壊れた世界 (講談社ノベルス)

「世界」シリーズは、シリーズが未完であるためか、刊行から十数年を経ているわりには文庫化されていない。

しかし、2007年に単行本化はされている。意味がわからん。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

西尾維新が手掛ける学園を舞台としたミステリ作品を読んでみたい方。濃厚なキャラクターが奇想天外な活躍を果たすタイプの作品がお好きな方。病院坂黒猫というヒロイン名に思わず反応してしまう方におススメ。

あらすじ

櫃内様刻と夜月の兄妹は順調な勢いで許されざる近親相姦関係に突入中。しかし夜月にちょっかいを出してきた数沢六人が殺害されたことで、その周囲は俄に慌ただしくなっていく。閉鎖された環境下で数沢は誰に殺されたのか。保健室の引き籠もり女生徒、病院坂黒猫と共に事件の解明に乗り出した様刻だったが、事態は意外な展開に……。

ここからネタバレ

西尾維新、二番目のシリーズ作品

戯言シリーズでもなく、JDCトリビュートでもないってことで、西尾維新としては二番目のシリーズ作品ということになる。

西尾維新のキャラクター命名における中二病テイストは、すっかりお馴染みのものだが、本作も相当にぶっ飛んでいる。

櫃内様刻(ひしうちさまとき)、櫃内夜月(ひしうちよるつき)、迎槻箱彦(むかえづきはこひこ)、数沢六人(かずさわろくにん)ってところまでは、まだ我慢するとしても、病院坂黒猫(びょういんざかくろねこ)って名前として、どうなのかと。

当時、戯言シリーズでこのあたりの感覚は、相当に麻痺していたのだが、新シリーズということで、まっさらな心で接してみると、やはり相当に無茶なネーミングであることに気付かざるを得なかった。

病院坂黒猫が最高!というお話

ネーミングセンスはさておき、話そのものは悪くない。西尾作品なのでミステリとしての外観は装ってはいるけど、それはあくまでも重要なものではない。近親相姦。学校内での殺人。黒猫の持つ秘密。閉塞的な八方塞がりの状況下で主人公が下した結論にはなんとも痛々しく慄然とさせられる。

西尾作品の主人公に共通した、この諦めてるわけでも、戦ってないわけでも無いんだけど、なんでそっちに行っちゃうのかな的な思考ベクトルの捻じれっぷりが面白い。

キャラクターネーミングの件では、グダグダ書いてしまったが、いざ読み終えてみると病院坂黒猫の存在感は群を抜いており、読み終える頃には彼女の虜になっている。表紙イラストのチョイスと相まって、病院坂最高!と叫ばざえるを得なくなっているあたり、西尾維新の術中にハマってしまっている気がするのである。

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