「世界」シリーズの第二作
2007年刊行。『きみとぼくの壊れた世界』の続編というか、直接的な続編というわけではなく、世界観を共有した姉妹編的な作品である。「世界」シリーズとしては第二作に相当する。シリーズの続巻としては『きみとぼくが壊した世界』『不気味で素朴な囲われたきみとぼくの壊れた世界』がある。
こちらはノベルズ版だが、同時に講談社BOX版も出ている。 紛らわしいけど内容は同じ。違いはイラストの有無。たぶんあとがきも違うのかな(未確認)。いつものことながら講談社の考えることはあざとい。
なお、シリーズ未完であるためか、刊行から十年以上を経ているにも関わらず、文庫化はされていない。
前作のわたし的最愛キャラ病院坂黒猫がなかなか出てこず、ファン的にガッカリだったのだが、ラストで登場してくれていちおうは満足。次は黒猫ちゃんメインで書いて欲しい。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
ライトノベルテイストの学園ミステリを読んでみたい方。西尾維新描くところの、性格がぶっ壊れたキャラクターが活躍する作品がお好きな方。無口なヒロインキャラの可能性を追求してみたい方におススメ。
あらすじ
上総園学園に入学した串中弔士(くしなかちょうし)は、校内随一の奇人、病院坂迷路(びょういんざかめいろ)に出会う。静かなる人払い令の異名を持つ彼女の周囲からはいつしか人が消えていくのだと云う。その魅力に惹かれ迷路の元へ通い詰める弔士。校内に暗然たる影響力を持つ奇人三人衆との交流はいつしか危険なものへと変貌していく。そして起きた殺人事件。時計塔に隠された秘密とは……。
ここからネタバレ
主人公がクズ(いつものことだが)
西尾作品にはよくあることだが、相変わらず鼻持ちならないような壊れたキャラしか出てこない。特に主人公は最悪で身近にいたら絶対殴っているだろう。冷めていたり、ひねくれているだけならまだしも卑怯属性が付与されているのが最低。こんな12歳の子供がいたらホントに嫌だろうな。ま、それだけ読者に嫌悪感を与えることに成功しているのだから、そこは作者の狙い通りってところか。
とにかくキャラ立てが命
超天然の姉。身内でも常に敬語な主人公。絶対に嘘しかしゃべらないろり先輩。そして最初から最後まで一言もしゃべらない病院坂迷路!毎回毎回変人を考えるのも大変だ。しかしながらキャラメイクに神経遣いすぎて、本筋が見失われがちなのはいかがなものかと。会話を省いたらほとんど内容が残らないのではなかろうか。
キャラクターの暴走に身を任せた挙句に、メインストーリーが希薄になるのは「物語」シリーズでも見られる、2000年代後半あたりからの西尾維新作品の特徴とも言える。まあ、それが楽しいと言えば楽しいのだが。
病院坂迷路の無口属性はやりすぎ?
結局一言もしゃべらなかった病院坂迷路のキャラ造形については正直うまく機能しなかったかなという印象が強い。極端に無口な替わりに表情が豊かなのはいいとしても、いくらなんでも物語の謎解きまで表情だけで表現するのは無理だと思った。
実はこの人存在なんかしてなくて、主人公の妄想脳内キャラなのか?って叙述トリックも疑ったのだけど、さすがにそれは考えすぎだった模様。正直、影が薄すぎて、うまく機能しなかったように感じた。
「世界」シリーズの感想はこちらから