ネコショカ

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破局噴火がもたらす大惨事を描いた災害小説『死都日本』


いきなりハードカバーで登場したメフィスト賞受賞作

2002年刊行。第26回メフィスト賞受賞作。

通常のメフィスト賞作品はノベルスで出るのが常だけれど、講談社的に自信作だったのか、そこそこレベルの高い作品の場合、いきなりハードカバーで勝負を賭けてくることがある。本作はそんな作品のうちの一つ。

作者は1954年生まれで本業は医師。この作品が処女作となる。

死都日本

講談社文庫版は2008年に登場している。

死都日本 (講談社文庫)

死都日本 (講談社文庫)

 

あらすじ

西暦20XX年。九州南部。存在すら知られていなかった有史以前の活火山加久藤カルデラが長い沈黙を破り破局的大噴火を起こす。その予兆を感じ取っていた政府は火山学者の黒木らを擁しその対応に乗り出していたが、噴火はあまりにも早く起きてしまい全ての対応は後手後手になってしまう。噴火を間近で体験した黒木は迫り来る火砕流を逃れ妻の待つ日南市を目指す。

火砕サージが恐ろし過ぎる

30万年前に大噴火を起こし、以後沈黙を守ってきた霧島山系の加久藤火山が再度の破局的噴火を起こしたらという設定で描かれる災害小説。20年くらい前までは火山の噴火といえばドロドロとした灼熱の溶岩流がのっそりと流れてくるイメージが強かったんだけど、そのイメージは1991年に起きた雲仙で火砕流災害の大惨事によって大きく塗り替えられていた。しかしその認識すら甘かったことをこの作品では思い知らされた。

ちなみに火砕流とは溶岩が粉砕されて高温ガスと一体化したもので、地面との摩擦が少ないので時速100キロを越える事もあるらしい。雲仙のケースはまともに観測された世界最初の火砕流なのだそうだ。確かにこれでは近くで起きたら逃げようが無い。本作では更に、この火砕流によって引き起こされる火砕サージ(熱風)の存在を紹介。火砕流本体に先立ってやってくる数百度の熱風は山も越えるし海だって渡ってしまう。火口から100キロ先でも生きていられないかもしれないという怖ろしいものなのだ。うわ、マジで怖えええ。

国家規模の大災害を描く

科学的視点をベースにした災害小説といえばやはり往年の名作『日本沈没』を想起せずにはいられないけど、久々にその後継とも言える作品が出てきた。南九州は噴火から数時間でほぼ壊滅。瞬く間に数百万人が死亡。そしてこれほどの規模の噴火は当然日本全体にも影響をもたらす。大量の降灰とそれによる洪水で日本は再起不能に近い大ダメージを受けてしまうのだ。

未曾有の大災害の中で少しでもより良い対策をと奮起していく政治家や官僚の姿は、いささか出来すぎの感はあって胡散臭さはどうしても残るけど小説の中でくらい頑張って貰わないとな。総理大臣がバリバリ活躍する小説って、こんなテーマでもなきゃ書けないだろう。処女作ならではの文章の硬さや、展開の強引さ(総理の終盤の対米政策とか)はあるけど、災害小説としてはよく書けていると思う。

地図を見ながら読むと楽しいよ

ちなみに本書には読者の理解を助けるために現地の地図が挟み込まれているが、どうせならばGoogle mapを併用しながら読み進めることをオススメしたい。間違いなく面白さがアップする。ちなみにこちらが今回の噴火ポイント周辺である。

死都日本

死都日本