ネコショカ

毎日夜20時更新。ネコショカは猫の書架
雑食系の書評Blogです。なんでも節操なく読んでます
基本ネタバレありなので注意してね

大団円、完璧な王族エンド『空ノ鐘の響く惑星で12』


最終巻の表紙は主役級の三人で

2006年刊行。シリーズ最終作だ。

空ノ鐘の響く惑星で(12) (電撃文庫)

本シリーズの表紙は、これまで二人の主要キャラクターが描かれ、一巻ごとに登場キャラが入れ替わっていくスタイルだった。しかし、ラストとなる本巻では、表紙の法則性が崩れて、フェリオ、ウルク、リセリナの主役キャラ三人が登場する。これで終わりと言う感じがしてきますな。

しかし、最後だから仕方が無いとはいえ、一度しか表紙に出られなかったエンジュは可哀想。

あらすじ

メビウスの真の目的は、かつてリセリナたちが暮らしていた「向こう側の世界」を訪れること。しかしその行為はこちらの世界の滅亡を意味していた。死の神霊を奉じる六番目の神殿「終末の黒い神殿」がラトロア首都ラボラトリに出現した時、惑星の存亡を賭けた最後の戦いが始まる。決戦の場へと赴くフェリオたち。果たして世界の命運は。

まずはウルクの最終ステージ

さて最終巻である。これだけの長編を三年で書いてしまい、大きな破綻もなく綺麗に幕引きが出来る才能はたいしたもの。名台詞のオンパレード。主要キャラ勢揃いでお送りする、見事すぎるくらいの大団円に拍手喝采だ。

前半はラトロアとの外交交渉を頑張るウルクの話。この後のラストバトル編では非戦闘員の彼女には出番が無いため、事実上これがウルクの最終ステージとなる。他国の大人相手に一歩も引かないウルク。政治家として神姫の妹としての責任を必死に果たそうとする姿が可憐で良きかな良きかな。どうせなら傍らにフェリオが居なかった方が、より緊迫度&必死度が高まって良かったと思うのだけど、それは高望みしすぎだろうか。

ラスボスとしてのメビウス

会談が一段落ついたところで、最終的な手段へと出たメビウスの暴走が発覚。世界の滅亡という事実の前に、己の野心よりも世界の存続を選択するジェラルド。まあ、惑星環境が崩壊してしまっては、ラトロアの覇権云々の話どころでは無いので、こう決断するしか選択肢が無いところなのだけど、ユーディエのエピソードをしっかり入れておいたのがここで効いてくる。

政治家としての野心と父親としての情愛。一つの人間の中に複数の立ち位置を用意することでキャラクター描写に深みが出てきた。メビウスみたいにぶち切れてしまった悪役キャラも必要だけど、ジェラルドのような地に足のついた敵キャラもこうした長編作品には大事なのだ。

熱く燃えるラストバトルへ

というわけで、対メビウス連合軍が結成される。フェリオ&リセリナにアルセイフ王宮騎士団、ジラーハの神殿騎士団&名無しの方々、北方民族の皆さんそしてバニッシュを除く来訪者軍団と豪華すぎるラインナップ。なんという呉越同舟。ラストならではの豪華ラインナップである。

これを迎え撃つのは変態仮面メビウスに、シズヤ主従、来訪者バニッシュ、そして無数の屍の兵の皆さん、そして頼りないながらもリーブルマン先生ってところか。出番が無いかと思われたウィスタル、バロッサの爺さんにまで出番があるとは!なんという熱く燃える展開。これだけ主要キャラクターが綺羅星のごとく登場するラストバトルで、美味しいところを全てもっていくパンプキンの冠絶した個性は異常(笑)。格好良すぎるだろう。

適切な戦闘規模のハナシ

このシリーズは、大兵力同士の直接戦闘シーンが当初思っていたよりも少なくて(結局タートム戦くらいでしょ)、戦記モノ好きとしてはややガッカリしていたのだけど、大勢登場するキャラクター個々の戦闘シーンを楽しむためには、この程度の戦闘規模で良かったのかもしれない、数千、数万と大軍同士での戦争になると個人個人の力はどうしても見せ場を作りづらい。戦術レベルの戦闘に止めておいたのは正解だったと思う。

天然こそ最強?

終盤。リーブルマンの爺さんごときに無力化されるハーミットはどうなのよ。フェリオに予備の神鋼の剣を渡すためだけにここまで連れてこられたハーミットの哀れさに合掌。そして真のラストバトル。フェリオ&リセリナVSメビウス。二対一とはメビウスがあまりに不利すぎて泣ける。やっぱり天然こそ最強ということなのか。最終局面では戦闘面で精神面でもフェリオの圧勝だった。王道を行く気持ちのいい決着の付け方に◎。

納得の重婚エンド、王族って素晴らしい

ラストバトルの後は、ちょっと長めのエピローグ。登場キャラクターが多かった分だけ、物語の幕を下ろすのにも手間がかかるのだ。思っていたより生存者が多かったのは驚きだった。メビウス、リーブルマン先生、バニッシュ、カトルくらいしか死んでいない。本当の悪党はこんなことでは死なないのよ!ってことで、しぶとく生き残るシズヤたちには笑った。ジェラルドにも再度の見せ場があるのも素晴らしい。

そして、懸案のフェリオ、ウルク、リセリナの三角関係は予想通りというか、それしか無いだろうという重婚エンドで決着。いやはや王族って羨ましい。しかしアルセイフ王家は王族の結婚に関して本当に寛容過ぎ。大事な存在を守るためには、何かを捨てなくてはならないときが来る。運命の選択を迫られたときに「オレはどっちも守る!」と言い切って、それを実現してしまうフェリオが本当に凄すぎる。

大ラスは再び空ノ鐘が響く季節で。空ノ鐘が鳴って始まった物語が、空ノ鐘の音と共に閉じていく。円環的な処理がお約束ながらも美しく決まった。最後に登場するのは成長したシアと、フェリオ、ウルク、リセリナの子供たち。そしてここでも美味しいところを持って行くかパンプキン。余韻を残した終わり方が見事。実に味わい深い、素敵な最終巻だった。

空ノ鐘の響く惑星で(12) (電撃文庫)

空ノ鐘の響く惑星で(12) (電撃文庫)