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『空ノ鐘の響く惑星で』渡瀬草一郎 全12巻+外伝1巻のネタバレ感想まとめ


『空ノ鐘の響く惑星で』全巻の感想を集約した

タイトルの読みは「そらのかねのひびくほしで」。2003年から始まって2007年に完結した渡瀬草一郎(わたせそういちろう)の代表作だ。愛称は「空鐘(そらかね)」。本編12冊+外伝1冊の大長編作品である。この話大好きなんだよね。

これまで各巻ごとに感想をわけていたのだけど、1つのページにまとめたほうが閲覧するのに便利そうなので集約してみた。「当時の感想」のテイストは残してあるので、現在読むと違和感があると思うけど、その辺はご容赦を。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★★(最大★5つ)

良質な国産ファンタジー作品を読みたい方。10巻程度できれいに完結しているファンタジー作品を探している方。ゼロ年代の電撃文庫の人気シリーズを読んでみたい方。ファンタジーに微妙にエスエフ的な要素が混入したタイプの作品が好きな方におススメ!

『空ノ鐘の響く惑星で』1巻感想

『空ノ鐘の響く惑星で』は古い例えで恐縮だが、「グインサーガ」の最初の16巻くらいまでとか、「アルスラーン戦記」みたいな架空王朝戦記モノ。ファンタジーをベースとした世界観にエスエフのスパイスが絶妙に効いているところも似ている。この手のジャンルは良質な書き手が少ないので貴重だ。

空ノ鐘の響く惑星で (電撃文庫)

なお「このライトノベルがすごい!」には毎回30位以内にランクインしていて(当時)2005年の第4位が最高位。

1巻あらすじ

天空に浮かぶ巨大な「御柱(ピラー)」。御柱は奇妙な力を持つ貴石を産出し人々の暮らしを潤していた。アルセイフの第四王子フェリオは、フォルナムの神殿で御柱の内部から出現した少女リセリナに出会う。負傷していた彼女を助けたフェリオだったが、リセリナは突如暴走し神殿からの逃亡を計る。その日を境として、平穏な日常は終わりを告げ、世界は混沌と激動の時代へと変貌していく。

主人公は王子さまなのだ

主人公はアルセイフ王国第四王子フェリオ。妾腹の子で母は既に亡く、大きな後ろ盾もないため僻遠の地、フォルナム神殿への友好大使という閑職を割り振られ本国からは捨て置かれている。権威とは縁遠く育ったので王族でありながら横柄なところが無く、素直。それでいて剣の腕前は達人級の腕前を持つ。平時であれば、そのまま田舎で朽ち果てていたかもしれない彼が、未曾有の大変事に巻き込まれ、様々な困難を乗り越え成長していく姿を描く。

凝った世界設定が気になる

「御柱」は世界に五本存在し、それぞれが風土火水、そして命の属性を強化する貴石(セレナイト)を産みだし、この世界を経済的に支える存在となっている。「御柱」には謎めいた部分が多く、一部の神殿関係者のみがその秘密を隠し持つ。いかにも科学文明の遺物っぽい「御柱」から登場した謎の少女リセリナの登場で物語は動き出す。

まさかのダブルヒロイン制(←ここ大事)

愛らしい少女の外見とは裏腹に超人的な身体能力を持ち、異世界からもたらされた高度な武装を所持するリセリナは暴走モードにスイッチが入ると手がつけられない最強の存在となるのだが、その代償として理性を失ってしまう。しかし、そんな時でも何故かフェリオにだけは心を許すリセリナ。ヒロインがとにかく可愛く書けているのがまず素晴らしい。

って思っていたら、この物語にはヒロインがもう一人居た!後半からは幼なじみにして、神官少女ウルクが登場する。清楚な美貌に柔らかな物腰、やんごとなき高貴な身分でありながら機知に富み、政治的判断力まで持っているという怖ろしい16歳。この作品は、どうやらダブルヒロイン制が採用されている模様。主人公が朴念仁設定っぽいので今後の三角関係の進展に期待である。

長大な物語が動き始めるヨロコビを堪能しよう

多岐にわたる伏線が張り巡らされた、長編作品の一作目ということで、序盤の展開は物語世界の説明や、キャラクターの紹介に多くのページを割いている。しかし、緩やかに思えたストーリー展開は最終章で一気に加速。このものすごい引きはリアルタイムで読んでいたらたまらんだろうな。できうるならば全巻手元に置いて、時間のある時に一気に読めたら至福の作品群だと思う。

『空ノ鐘の響く惑星で』2巻感想

シリーズ二作目。2004年刊行。来訪者(ビジター)軍団登場で本格的に面白くなる!

リセリナのそっくりさんイリス率いる、来訪者軍団の登場で俄然面白くなってきた本作。少しずつ世界の全容が見えてくる。架空王朝モノはいかに、それっぽい世界観を構築出来るがどうかが鍵だけど、ここまでは至って順調。いきなり全てを見せずに小出しにしてくるところが達者な書き手だなと思う。

空ノ鐘の響く惑星で(2) (電撃文庫)

難癖をつけるとすれば時間や距離の単位くらい創作してしまえばば良かったのに、ってことくらいかな。ファンタジー世界でメートルとかキロとか使われると萎えるのだ。でも、読み手の判りやすさ、伝えやすさを考えると致し方の無いところなのかな。

2巻あらすじ

リセリナを追って現れた新たな来訪者(ビジター)たち。彼らによってアルセイフは国王と王太子を同時に殺害されてしまう。王都セイラムではこれを好機と見る者たちの不気味な暗躍が始まる。好色な第二王子レージク、病弱な第三王子ブラドー、そして第四王子フェリオ。次の王位に就くのは誰なのか。王の葬儀で起きた惨劇は誰が仕組んだものなのか。フェリオは更なる陰謀の渦中に巻き込まれていく。

ウルクちゃん活躍巻だった

前巻ではリセリナに出番を奪われ気味だったウルクが今回は大活躍。恋する少女モード全開のウルクが素敵過ぎる。剣の腕は立つが人情派で後先を考えない体力バカ系の主人公を、裏から支えるウルク。自分の血筋を盾にとって発揮される政治力。瞬時の思い切りの良さ、決断力が痺れるなあ。卓越した戦闘力でフェリオを助けるリセリナとは対照的な立ち位置が面白い。

主人公の幼馴染なんて、昨今の風潮では負けヒロインの予感が濃厚に漂ってくるところだけど、セカンドヒロインに留まるのか、それを越えていけるかが、今後のウルクちゃんを見ていくうえで重要なポイント言えそう。武のリセリナと知のウルク。この二人のヒロイン争いに注目である。

フォルナム神殿での事件を契機に、王位争奪戦が勃発。物語の舞台は王都セイラムへと移る。退廃の第二王子レージクが登場。軍閥の名門サンクレット家のクラウス、ニナ兄妹も登場。更に当面の敵となりそうな、宗教王国ジラーハのカシナート司教も暗躍中と来たもんだ。魅力的なキャラクターが続々と出てくる。この話、これから更に面白くなっていきそうだ。

『空ノ鐘の響く惑星で』3巻感想

シリーズ三作目。2004年刊行。表紙絵に二人のキャラクターが登場するのがこの作品のコンセプトだったりする。

空ノ鐘の響く惑星で(3) (電撃文庫)

この作品の表紙は作中の登場人物二人の全身図がデザインされているのが特徴で、今回はウルクとフェリオ。前の巻がフェリオとリセリナだったから、一人ずつキャラクターが入れ替わっていく趣向らしい。第一巻に関してはリセリナのみ(2ポーズ)だったので、おそらく最終巻では再度リセリナが登場して円環的に輪が閉じるのではないかと予想している。

3巻あらすじ

王の葬列を暗殺者が襲う。軍務卿ガートルードをはじめ第二王妃、第三王妃らが死亡。フェリオはぎりぎりのところで難を逃れる。大きな後ろ盾を失った第二王子レージクは強引に即位を表明、ガートルードの遺子クラウスを傘下に加え権力の掌握に動き出す。政務卿ダスティア、王宮騎士団長ウィスタルは囚われの身となり、唯一脱出に成功したフェリオは彼らを救出すべく活動を開始する。

ここで、関係各国についてまとめてみる

主人公の属するアルセイフ王国は大国では無いが、フォルナム神殿から供給される貴石故に肥えた土壌を持ち、不作知らずの豊穣の国。ここしばらくは戦争も経験しておらず平和を享受し続けている。アルセイフの北西には大国ながらも食糧事情が厳しいタートムが存在し、虎視眈々と豊かなアルセイフへの侵攻の機会を窺っている。そして大陸の中心部には全大陸の神殿の総元締、ウィータ神殿に神姫ノエルを頂く宗教国家ジラーハがある。例えるならローマ教皇領みたいなものだろうか。

バトルシーンが楽しいは良作の証拠

さて、今回は一転して追われる身となったフェリオVS第二王子レージク編。北方民族出身にしてタートムの間諜シズヤとの対決シーンが燃える。戦いに淫するシズヤのエグくてエロいところがたまらん。まだ少年の主人公が最初から作中キャラで最強クラスの設定なのは出来すぎとも思えるが、面白いからそれもまたよしとしよう。

フェリオたちを追いかける本筋を進めながら、神殿側のカシナートの思惑についてもきちんと言及している。来訪者たちのフォローも忘れてはおらず、複雑な群像劇をきっちり書いてくれていて安心して読める。上手いねこの人。終盤はまたしても大ピンチの連続。健気に頑張るウルクに、再登場するリセリナ。フェリオどれだけ悪運強いんだよ(笑)。ご都合主義的展開だけど、盛り上がっているのでオッケー。どんどん物語に勢いが出てきているね。

『空ノ鐘の響く惑星で』4巻感想

シリーズ四作目。2004年刊行。ここでお話的には一区切り。本巻で、アルセイフ内乱編が終了するよ。

空ノ鐘の響く惑星で(4) (電撃文庫)

4巻あらすじ

王都セイラムを脱出したフェリオは外務卿ラシアンらと共に、王位簒奪者レージクに対し反乱軍を組織する。しかしセイラムには第三王子ブラドー、王宮騎士団長ウィスタルなど多くの重要人物が囚われの身となっていた。一方レージクは軍閥の名門サンクレット家の長子クラウスを軍務卿に抜擢する。アルセイフの内乱は、遂に両軍の直接対決の時を迎えようとしていた。

戦記モノとしての楽しさ

外務卿ラシアンの後ろ盾を得て、王都へと進軍を開始するフェリオ。おおっ、ようやく戦記モノっぽくなってきた。隻眼のベルナルフォン、政務卿の長子アゴール、クラウスの腹心ロセッティまでもが傘下に加わり駒が揃ってくる反乱軍の陣営。人望って素晴らしい。初陣で将としての器量さえも見せつけるフェリオ。これでまだ16歳なのだから怖ろしい。なんとなく『アルスラーン戦記』を思い起こさせる。

王都でこれを迎え撃つのは自ら即位宣言したレージク第二王子と、新たに軍務卿となった復讐に燃える智将クラウス。相手側がバカばかりで無いところが面白い。主人公サイドが勝つのは容易に予想出来るけど、やはり多少は苦労して勝たないといけない。これまでウルクの活躍の前に影が薄かったリセリナが、ここぞとばかりに直接戦闘では大活躍。反則級の無敵ユニットで、この点レージクには気の毒だった。

良い中ボスの存在は物語を盛り上げる

大方の予想通り、アルセイフ内乱編は今回でオシマイ。全体のバランスから見ても、長くは引っ張らないと思っていたのでこんなところだろう。売国奴としていかようにも悪く描くことも出来たレージクの行為を、それなりの紆余曲折を経た上での決断であったと、情状酌量の余地を残したところはいい感じの落としどころかと。シズヤとの最後の一幕まで描いて貰えて、悪役としては上々の退場シーンだったと思う。これはなかなかに良い中ボス。こういうキャラクターがいると、物語はピリッと引き締まるよね。

『空ノ鐘の響く惑星で』5巻感想

新章突入のシリーズ五作目である。2004年刊行。面白いのでガンガン先に進む。この巻でようやく、「世界地図」が登場。やっと状況設定が判りやすくなった。クオリティが落ちていないのに、三ヶ月に一冊という驚異的な早さで続巻が出ているのが素晴らしい(当時)。速筆はラノベ作家にとっての最大の武器だよね。

空ノ鐘の響く惑星で(5) (電撃文庫)

5巻あらすじ

フェリオたちの活躍によりレージクの王位簒奪は失敗に終わる。次なる王位は誰の手に?第三王子ブラドーとの間に新たな問題が浮かび上がってくる。一方、フォルナム神殿ではジラーハの司教カシナートが勢力拡大のため暗躍を開始していた。敵中に残されたウルクを襲う悲劇的な運命とは。全てを捨てて、フォルナムへ向けてフェリオは旅立つのだが……。

手順を踏んで加熱する三角関係

舞台は再びフォルナム神殿へ。 偉そうなこと言ってたわりにはあっさりウルクを奪われてしまったシルヴァーナはこれくらい苦労した方がいいと思うよ。チャンスの後にはピンチあり。レージクの反乱を退けたフェリオに新たな災厄が訪れる。幼なじみの神官少女ウルクに降りかかった未曾有の危機。これまで恋愛面では朴念仁だったフェリオが、ウルクの大切さを改めて認識する展開は、少年の成長物語としてはきちんと手順を踏んでいるなという印象。

並行して自らの恋心に気付いてしまったリセリナの葛藤もきちんと描かれおりソツがない。フェリオをめぐる女の戦いはこれからが本番。今後の三角関係がどう進展していくのかに期待したい。

本シリーズ最高のキャラはパンプキン(確定)

登場巻からして目立っていたけれども、ここらへんの巻から、パンプキンのキャラ立ちがものすごい勢いで加速し始めている。長身痩躯、頭にはカボチャの被り物。ビジュアル的にはネタキャラとしか当初は思えなかったのだけど、なんだか無性に格好良く見えてくるのは、やっぱり描き方が上手いからだよね。

最強クラスの戦闘能力に、騎士道精神を併せ持ち、独自の価値観に基づいた行動を取る。戦いに愉悦を感じる彼の性格は、これからの物語を大いに盛り上げてくれそうだ。

『空ノ鐘の響く惑星で』6巻感想

2005年刊行。引き続き、フォルナム神殿編が展開中である。

空ノ鐘の響く惑星で(6) (電撃文庫)

6巻あらすじ

フォルナム神殿はジラーハの司教カシナートにより制圧されてしまう。虜囚の憂き目を見る僧侶たち。記憶を失ったウルクを前に呆然と立ちつくしていたフェリオだったが、急転直下の事態に際し、とある決意を固める。一方、国境地帯では隣国タートムがアルセイフへの侵攻を開始。未だ新王は定まらず、アルセイフ王国は更なる激動に巻き込まれていく。

複数の陣営の攻防が楽しい

カシナートをはじめとするジラーハ陣営、そして来訪者たち。ラトロアの間諜シズヤ。複数の陣営がそれぞれの思惑を見せて動くところがこの手のお話の楽しいところ。主人公以外の陣営が戦い合うシーンが面白い。そしてウィスタルの甥、ハーミットが登場。これまで描かれなかった西の大国ラトロアの輪郭が見えてきた。

カリスマ的な王族がいるような国ではなく、民主制の国らしい。でも、かなり衆愚政治気味。元首のジェラルドはたぶん小物で黒幕は別に居るようだ。いちおう最大の敵国っぽいから、それなりのラスボスは用意しておいて欲しいな。

パンプキンの株が更に上昇

鬼畜リカルドクンは今回も外道大作戦に失敗。なんたる噛ませ犬っぷり。パンプキンの高潔さを示すための引き立て役として使われてしまうところが情けない。貞操の危機を危うく逃れたウルクだが、その記憶は依然として戻らないまま。失われた記憶と、未だフェリオを想い続ける潜在意識との間で苦しむ。安易に愛の力で無理矢理思い出しました!って展開にしないのがいいところかな。

いつもいつもいいところで終わる

ラストはラトロアから送り込まれた屍の兵の皆さんが大量に出現。ウルクとリセリナだけでも逃がそうとしたフェリオだったが、彼女たちの別働隊は最悪な事にイリス率いる来訪者チームの迎撃を受けてしまう。毎回毎回ラストの「引き」が凄すぎて、ついつい次をすぐに読んでしまう。本当に完結してから読めて良かった。リアルタイムで読んでいたら、続きが気になって仕方が無かったことだろう。

『空ノ鐘の響く惑星で』7巻感想

2005年刊行。シリーズ七作目。フォルナム神殿編これにて完結。フォルナム神殿編の終章にあたるお話である。

空ノ鐘の響く惑星で(7) (電撃文庫)

7巻あらすじ

東方の大国ラトロアの仕組んだ陰謀により、フォルナム神殿の御柱からは大量の屍の兵が出現する。対応に追われるフェリオたち。無限に増え続ける屍の兵を前にして、神殿騎士団長ベリエが謎の暴走を起こしウィスタルにその刃を向ける。一方、神殿からの逃亡を計ったリセリナたちはイリスの手中に落ちていた。緊迫した状況の中、人々は重大な決断を迫られることになる。

迫真のバトル展開が熱い!

最初から最後まで、一巻まるまる戦いっぱなし。終章に相応しい派手な巻になっている。屍の兵に対応するフェリオたちと、イリスたち来訪者チームを相手に奮戦するリセリナたち。二つの局面が交互に描かれ緊迫度アップ。これはなかなか良い展開ではないか。

ここに来て、地味キャラのライナスティに素敵な出番が!作中最強クラスの剣士パンプキンと互角に渡り合う姿に燃える。そしてウィスタルVSベリエ戦の団長対決も見逃せない。主人公以外のキャラクター対決が盛り上がるのは、作品としてキャラが立っている証拠なので、これはとてもいい傾向だと思うよ。主人公の戦いは、そりゃ主人公なんだから勝つでしょうと楽観して読めるけど、脇役VS脇役の戦いは時として予想もつかない決着をすることがあるので、意外に面白かったりする。

次はタートム編かな?

ベリエが片付き、リカルドもあんな状態だしこれで神殿騎士団側の面倒なキャラクターが一掃できた。ここしばらく悪役キャラであったカシナートにも、彼なりの正義があることが示された。これはきっと今後の伏線になるのだろう。いずれ味方陣営に加わるのだろうね。ラストはフェリオたちVS昇華モード(V-MAXとかトランザムみたいな時間限定最強モード)の来訪者と一気に盛り上げて終了。気がかりはウルクの病状が思ったよりも深刻なこと。この巻だけは決着がつかず先に引っ張るようだ。

次巻は孤独に国境で頑張っているベルナルフォンのお話になる見込み。VSタートム編だ。

『空ノ鐘の響く惑星で』8巻感想

2005年刊行。シリーズ八作目。今回はフォルナム神殿編の裏番組的なエピソード。フォルナム神殿編の裏で起きていた隣国タートムとの戦いの顛末を描く。

空ノ鐘の響く惑星で(8) (電撃文庫)

400ページ近いボリュームは過去最高。今回の主役はベルナルフォン、かと思わせておいて、意外なキャラクターが美味しいところを持って行く。まさか、彼がここまで出てくるとは思わなかったよ。対照的に、今回はフェリオの出番が少なめ。最後にやっと出てくる程度だ。

8巻あらすじ

タートム軍は国境を越え、アルセイフへと侵攻を開始した。軍務審議官として戦線に加わったベルナルフォンであったが、出自の低さと若さ故、古参の軍閥貴族に侮られ、思うように手腕を発揮することが出来ない。なんとか戦線を持ちこたえることが出来たのは、老少バロッサ・アーネストが率いた工作隊の働きだった。しかし、シズヤたちの玄鳥部隊が到着し戦況は一変。アルセイフ側は苦境に陥る。

物語の奥行を広げる良質なサイドエピソード

久々の大規模戦闘編ながらも、戦闘スタイルはオーソドックス。田中芳樹作品みたいに、次々と奇策や秘策を繰り出してくるような戦いはこの物語では発生しない。戦いは兵数の多寡と、特殊ユニットの有無で決まる。タートム側のカルバイやモーフィスといった武将が、バカではないし悪者でも無い、それなりの考えがあって動いているキャラとして書いているのが相変わらずいい感じ。単純な悪役を登場させないのは、このシリーズで一貫した特徴となっている。

地味キャラながらも老将バロッサと、その娘ソフィアが登場。ソフィアはベルナルフォンとフラグが立つかと思ったら、意外なキャラにフラグが立った。アルセイフ王家は王族の婚姻について寛容の度合いが高すぎるぞ(笑)。一方、フェリオ側ではウィスタルの甥ハーミットが登場。初のラトロア側キャラですな。出番は少ないのに表紙を持って行くところは卒がない。

そしてイリスが典型的なツンデレキャラになり果てている件。エンジュとの関係は微笑ましいけど、スレた読み手としてはありがち過ぎる展開でやや萎え。ウルクは散々心配させたわりには、最後でアッサリ回復してしまったのも拍子抜けなのであった。もう少し手間をかけても良かったような気がするよ。

『空ノ鐘の響く惑星で』9巻感想

2005年刊行。今回はインターミッション的な巻。

空ノ鐘の響く惑星で(9) (電撃文庫)

タートム編が終わり、次なるジラーハ編へと続くインターミッション的なつなぎの回。ウルクとリセリナ(+ソフィア)のドレス姿、それからディアメルのメイド姿を披露するための巻と見た。

9巻あらすじ

タートムの侵攻を退けたアルセイフ軍。フェリオたちは久しぶりに王都セイラムに戻り、束の間の静かな時間を過ごしていた。王宮では舞踏会が開かれることになり、フェリオの傍らに立つ二人の美少女に注目が集まる。しかし宴たけなわのその時、謎の仮面の男が乱入し現場は騒然となる。メビウスと名乗る不敵に微笑む男の正体とは……。

謎の変態仮面登場!ひょっとしてラスボス?

ビジュアル的にも性格的にも「ガンダムSEED」のラウ・ル・クルーゼっぽい。わざわざ仮面して出てくるくらいだから、これまでに出てきた誰かなのかと思って、正体はリカルドなのかと想像していたのだけど違っていた。ほほう、そう来るか。どうやらこいつがラスボスの予感がする。

ウィスタルの秘密が明らかに

ウィスタルの抱えていた秘密が想像以上にヤバくて衝撃を受ける。前王陛下よ、ウィスタルを手元に置いておきたかったのは判るけど懐深すぎだろ。っていうか、王家の血筋を大事にしなさ過ぎ。第四王子ならいいかと思っていたのだろうか。レージクの件もあったから、意趣返し的な側面もあったのかもしれない。でも結果として、有能な王宮騎士団長を確保出来たのだから、高度な政治的配慮と言えないこともない。そう考えると、けっこう腹黒い人だな。

つなぎ巻が終わっていよいよ終盤戦!

ブラドーお兄ちゃんにはソフィアとのフラグがつながり、長々と引っ張ってきたクラウス-ニナ問題も意外に世話焼きなベルナルフォンの仲介でまとまりそう。話の流れからして、彼らは本筋からは離れていきそうだ。ジラーハ編を前にして、アルセイフ側の人間関係整理が終了。いよいよ終盤だな。さてこの先どうなるか。

『空ノ鐘の響く惑星で』10巻感想

2006年刊行。シリーズ十作目。今回からは神殿の総元締め宗教大国ジラーハ編に突入である。

空ノ鐘の響く惑星で(10) (電撃文庫)

物語世界の説明をし過ぎないことが、よくも悪くもこの作品の特徴だろうか。口絵部分のライナスティ君がかなりフォローしているけど。ジラーハの描写は最低限に抑えて、物語を動かす方に注力している。ごてごて何もかも説明していたら、倍の枚数使っても終わらないだろうからね。

10巻あらすじ

タートムとの停戦処理。産出が止まったアルセイフのセレナイト。依然として予断を許さないラトロアとの関係。様々な諸問題を解決すべくジラーハを訪問したフェリオは、大陸の御柱(ピラー)を統括するウィータ神殿、宗教王国の持つ圧倒的な国力に瞠目させられる。神姫ノエルとの会見は彼とウルクとの関係に思わぬ波紋を及ぼすのだが……。

デレるカシナートに絶望した

ウルクの姉にして、神姫ノエルが本格的に登場。いきなりカシナートとラブラブかよ。傀儡に見えて、それなりに策略も使えるノエルが素敵。「女」としての自分も迷いなく使ってみせるところにしたたかさを感じる。もっと弱々しい存在なのかと思っていたよ。それにしても、マディーン司教が哀れに過ぎる。

最重要アイテム死の神霊登場

ラトロア側の描写も増えてきて、穏健派のダルグレイ議員が登場。しかしシュナイクはいくらなんでも子供過ぎだろ。人の子の親としてそれはどうなのよ。そして最重要アイテム死の神霊が遂に姿を現す。変態仮面メビウスの外道ぶりが冴えまくりで、やっぱりこいつがラスボスで決まりかな。リカルドは最後の出番もかませ犬。それでも、これだけのオールスターキャストを相手に健闘した方だろう。ご冥福を祈りたい。

三角関係はまだまだもつれそう

前巻の舞踏会編で酔った勢いでフェリオの唇を奪ったウルク。意外に策士よのう。フェリオをめぐるリセリナとの三角関係は更に深刻化。いい子過ぎて、逆に嫌みになりかねないウルクの性格をノエル側から指摘させる手回しの良さに感服した。読者からのツッコミ所を丁寧に潰しておく作者の几帳面さに「巧」である。ウルクとの差を完膚無きまでに思い知らされたリセリナは悩みモードに突入。これは終盤まで引っ張りそうだな。

ジラーハ内部の暗闘でまだまだ引っ張れただろうに、これ一冊で終わらせた思い切りの良さ。というか、ラノベ的な制限なのだろうか。ビランチャ大司教とか、クーガー大司教とかいいキャラなのに出番が少なくて勿体ない。そろそろ終わらせろよという、編集部的な圧力がかかっているのかもしれない。

『空ノ鐘の響く惑星で』11巻感想

2006年刊行。終わりが見えてきたシリーズ十一作目。

空ノ鐘の響く惑星で(11) (電撃文庫)

大詰め。遂にラトロア編。表紙はデレてるイリスにエンジュ。すっかり空気キャラのイリスが哀しい。別の意味での空気キャラ、これまで出番らしい出番の無かったカトルにすら見せ場があるっぽい。

空ノ鐘の響く惑星で(11) (電撃文庫)

空ノ鐘の響く惑星で(11) (電撃文庫)

 

この作者はどのキャラクターにも、それなりの落とし前をつけてくれるのがいいな。でも、ユーディエのプレゼントした香水は光学迷彩が最大の武器であるカトルには致命傷になりそうな気がするよ。同じく地味キャラだったバニッシュもだんだん黒くなってきて、これまで地道に貼ってきた伏線が生きてきた。ラストに向けて、ひたひたとテンションが高まっていく感じがいい!

11巻あらすじ

ラトロアからの使者シュナイクの要請に応える形で、ジラーハはウルクを大使として派遣する。フェリオ主従もこれに同行し、一行は首都ラボラトリへと入る。一方、彼らとは別に、死の神霊の奪還を目指す別働隊として動くリセリナたちは、その隠し場所を求め調査を開始する。メビウスが目論む、恐るべき計画とは何なのか。遂にその全貌が明らかになろうとしていた。

いよいよ物語は大詰めへ!

前の巻から落ち込みモードのリセリナは、養父の死が確定しさらにどん底へ。最終巻を前に落とすだけ落としておこうという措置みたい。でも「名無し」の連中は弱すぎだろう。北方民族抜きではこんなものか。ラスト直前の引きとしてはこれくらいの苦境設定は必要だったのかもしれない。アンジェリカの生死が気になるところ。

結末に向けて物語が収束していく

さあ、次巻がついにラストである。このシリーズのいいところは、長期にわたって仕込まれていた伏線や仕掛けを、キチンと回収してきてくれているところだろう。風呂敷を広げるのが上手い作家は多くても、畳むのが上手な作家は意外に少ないものなのである。

物語を美しく収束させるという行為は、物語の新たな可能性を摘んでいく行為でもある。それ故に、結末に向けて収斂していく物語は、読者に対して「ああ、終わってしまうんだな」という寂莫感を強く抱かせる。終盤に至って、読み終えるのが寂しいと思わせる作品は決して多くは無い。最後の一巻、楽しませて頂こうではないか。

『空ノ鐘の響く惑星で』12巻感想

2006年刊行。シリーズ最終作だ。

本シリーズの表紙は、これまで二人の主要キャラクターが描かれ、一巻ごとに登場キャラが入れ替わっていくスタイルだった。しかし、ラストとなる本巻では、表紙の法則性が崩れて、フェリオ、ウルク、リセリナの主役キャラ三人が登場する。これで終わりと言う感じがしてきますな。

空ノ鐘の響く惑星で(12) (電撃文庫)

しかし、最後だから仕方が無いとはいえ、一度しか表紙に出られなかったエンジュは可哀想。

12巻あらすじ

メビウスの真の目的は、かつてリセリナたちが暮らしていた「向こう側の世界」を訪れること。しかしその行為はこちらの世界の滅亡を意味していた。死の神霊を奉じる六番目の神殿「終末の黒い神殿」がラトロア首都ラボラトリに出現した時、惑星の存亡を賭けた最後の戦いが始まる。決戦の場へと赴くフェリオたち。果たして世界の命運は。

まずはウルクの最終ステージ

さて最終巻である。これだけの長編を三年で書いてしまい、大きな破綻もなく綺麗に幕引きが出来る才能はたいしたもの。名台詞のオンパレード。主要キャラ勢揃いでお送りする、見事すぎるくらいの大団円に拍手喝采だ。

前半はラトロアとの外交交渉を頑張るウルクの話。この後のラストバトル編では非戦闘員の彼女には出番が無いため、事実上これがウルクの最終ステージとなる。他国の大人相手に一歩も引かないウルク。政治家として神姫の妹としての責任を必死に果たそうとする姿が可憐で良きかな良きかな。どうせなら傍らにフェリオが居なかった方が、より緊迫度&必死度が高まって良かったと思うのだけど、それは高望みしすぎだろうか。

ラスボスとしてのメビウス

会談が一段落ついたところで、最終的な手段へと出たメビウスの暴走が発覚。世界の滅亡という事実の前に、己の野心よりも世界の存続を選択するジェラルド。まあ、惑星環境が崩壊してしまっては、ラトロアの覇権云々の話どころでは無いので、こう決断するしか選択肢が無いところなのだけど、ユーディエのエピソードをしっかり入れておいたのがここで効いてくる。

政治家としての野心と父親としての情愛。一つの人間の中に複数の立ち位置を用意することでキャラクター描写に深みが出てきた。メビウスみたいにぶち切れてしまった悪役キャラも必要だけど、ジェラルドのような地に足のついた敵キャラもこうした長編作品には大事なのだ。

熱く燃えるラストバトルへ

というわけで、対メビウス連合軍が結成される。フェリオ&リセリナにアルセイフ王宮騎士団、ジラーハの神殿騎士団&名無しの方々、北方民族の皆さんそしてバニッシュを除く来訪者軍団と豪華すぎるラインナップ。なんという呉越同舟。ラストならではの豪華ラインナップである。

これを迎え撃つのは変態仮面メビウスに、シズヤ主従、来訪者バニッシュ、そして無数の屍の兵の皆さん、そして頼りないながらもリーブルマン先生ってところか。出番が無いかと思われたウィスタル、バロッサの爺さんにまで出番があるとは!なんという熱く燃える展開。これだけ主要キャラクターが綺羅星のごとく登場するラストバトルで、美味しいところを全てもっていくパンプキンの冠絶した個性は異常(笑)。格好良すぎるだろう。

適切な戦闘規模のハナシ

このシリーズは、大兵力同士の直接戦闘シーンが当初思っていたよりも少なくて(結局タートム戦くらいでしょ)、戦記モノ好きとしてはややガッカリしていたのだけど、大勢登場するキャラクター個々の戦闘シーンを楽しむためには、この程度の戦闘規模で良かったのかもしれない、数千、数万と大軍同士での戦争になると個人個人の力はどうしても見せ場を作りづらい。戦術レベルの戦闘に止めておいたのは正解だったと思う。

天然こそ最強?

終盤。リーブルマンの爺さんごときに無力化されるハーミットはどうなのよ。フェリオに予備の神鋼の剣を渡すためだけにここまで連れてこられたハーミットの哀れさに合掌。そして真のラストバトル。フェリオ&リセリナVSメビウス。二対一とはメビウスがあまりに不利すぎて泣ける。やっぱり天然こそ最強ということなのか。最終局面では戦闘面で精神面でもフェリオの圧勝だった。王道を行く気持ちのいい決着の付け方に◎。

納得の重婚エンド、王族って素晴らしい

ラストバトルの後は、ちょっと長めのエピローグ。登場キャラクターが多かった分だけ、物語の幕を下ろすのにも手間がかかるのだ。思っていたより生存者が多かったのは驚きだった。メビウス、リーブルマン先生、バニッシュ、カトルくらいしか死んでいない。本当の悪党はこんなことでは死なないのよ!ってことで、しぶとく生き残るシズヤたちには笑った。ジェラルドにも再度の見せ場があるのも素晴らしい。

そして、懸案のフェリオ、ウルク、リセリナの三角関係は予想通りというか、それしか無いだろうという重婚エンドで決着。いやはや王族って羨ましい。しかしアルセイフ王家は王族の結婚に関して本当に寛容過ぎ。大事な存在を守るためには、何かを捨てなくてはならないときが来る。運命の選択を迫られたときに「オレはどっちも守る!」と言い切って、それを実現してしまうフェリオが本当に凄すぎる。

大ラスは再び空ノ鐘が響く季節で。空ノ鐘が鳴って始まった物語が、空ノ鐘の音と共に閉じていく。円環的な処理がお約束ながらも美しく決まった。最後に登場するのは成長したシアと、フェリオ、ウルク、リセリナの子供たち。そしてここでも美味しいところを持って行くかパンプキン。余韻を残した終わり方が見事。実に味わい深い、素敵な最終巻だった。

『空ノ鐘の響く惑星で 外伝 tea party's story』感想

2007年刊行。シリーズ13作目は10年後の物語である。

本作は、本編完結の翌年に上梓された後日譚編なのだ。わざわざ、完結してから一年過ぎて、こうしたファンサービス本が出ているわけで、当時はかなり人気があった作品なんだろうね。

空ノ鐘の響く惑星で 外伝 -tea party's story- (電撃文庫)

短編が四本収録されており、本編で語られなかった箇所について補足がなされている。更に各短編の間に幕間と称される掌編が挿入されている。これが連続した内容になっていて「tea party's story」のサブタイトルはここから来ている。

この部分の時間軸は本編終了から10年後の設定。購入した時には誰なのか判らなかったけど、本巻を読み終えていればこの表紙イラストは理解出来る。成長したシアがウルクにそっくりなのは意図的なのだろうね。

あらすじ

あの激動の日々から十年が過ぎた。平穏を取り戻したアルセイフ王宮に懐かしい人々が集い始める。隠された物語が紐解かれていく。ハーミットとシルヴァーナのその後を描いた「錬金術師ノ嘆息」。ライナスティの出生の秘密「幻惑ノ剣士」。ベルナルフォンの哀しい過去「二人ノ結婚式」。アルセイフ王ブラドーと王妃ソフィア。二人の驚愕の初夜の顛末「王ト王妃ノ今日コノ頃」。シリーズ初の外伝作品集。

これで本当に完結

本当の意味でこれにて大団円。一巻全て使ってのカーテンコールである。長い間ずっと読んできたファンとしては嬉しい一冊である。これで本当に完結したんだなという印象をしみじみと受けた。なんと素敵な幸せエンドだろうか。こういう作品集を最後に出せるのは、人気がある長期シリーズだから許される特権だよね。

登場するのがアルセイフ関係者のみなのが、惜しいといえば惜しいところだろうか。ジラーハ組がスルーなのはちょっと寂しいが、ボリュームを考慮すると仕方のないところかな。余力があったら、もう少し外伝を書いて欲しかったのだけど、作者としては新シリーズに注力したいのかもしれないね。

本作をまとめて読みたい方は、電子書籍版になるがこちらの合本版(8,459円)が存在する。ただ、どういうわけか、個別に13冊そろえたほうが安い(7,981円)という謎価格設定になっているのでご注意。こういう値付けはしっかりやって欲しい。

ただ、合本版もセールで劇的に安くなる時があるので、タイミングが合えば、こちらの方が安くなる場合もある。

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