矢野龍王のデビュー作
2004年刊行作品。第30回のメフィスト賞受賞作品。作者の矢野龍王(やのりゅうおう)は1965年生まれ。メフィスト賞の受賞者としては比較的年齢高めの方だろうか。文章的には、どことなく岡嶋二人っぽい。最近あまり見かけなくなった、懐かしさを感じるテイストである。
デビュー早々、柏原崇(←懐かしい!)と綾瀬はるかのコンビで、よみうりテレビにてドラマ化されているのだが、放映が関西地区だけだったのでわたし的には未見。デビュー前から仕込んでないと、こんなの作れないと思うのだが、どういう仕掛けになっていたのだろうか。
講談社文庫版は2013年に登場している。現在読むならこちらの版かな。Kindle版もあるので、その点はありがたい。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
ゲーム的要素。特に生き残りをかけた推理ゲーム的なお話がお好きな方。パズラー的要素の強いミステリ作品がお好きな方。矢野龍王作品に興味がある。メフィスト賞関連作品はとにかく読む!と思っている方におススメ。
あらすじ
駒形祥一が目覚めたとき、そこは見知らぬ館の内部だった。夏の館と称される密閉空間に集められた7人の男女は自らの生死がかかった推理ゲームへの参加を余儀なくさせられる。生き残るには犯人を指摘しなくてはならない。しかも、冬の館と呼ばれるもう一つの建物での事件をも推理しなくてはならないのだ。次々と命を落としていく参加者たち。駒形は最後まで生き延びることが出来るのか。
ここからネタバレ
オチがわかりやすい
館が二つある場合に起こりうるパターンを、古今のミステリ事例を思い出しながら考えていくと比較的容易にネタは割れてしまう。というか意図的ですか、ってくらい判りやすく書いてくれている。これで極限推理です!って言い張られても少々物足りないのだが、ミステリマニアだけでなく、より幅広い層にリーチさせるという意味ではありなのかもしれない。
キャラクター造形に突っ込んでみる
それからこの手のお話にキャラクター造形が云々と突っ込むのも野暮なのだが、主人公やヒロインを含む登場人物の作り込みが、全般的に平板で類型的なのである。終始緊迫感に欠けた「ゲーム」ノリで、盛り上がりに欠けたのも残念な部分である。ストーリー展開的には、かなり逼迫したものになっている筈なので、終盤はもっと劇的に盛り上げても良かったのではないかと思われる。
矢野龍王の第二作の感想はこちら
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