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『酒仙』南條竹則 呑んで呑んで呑みまくる酩酊小説

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南條竹則のデビュー作

1993年刊行作品。作者の南條竹則(なんじょうたけのり)は1958年生まれ。本作で第五回の日本ファンタジーノベル大賞の優秀賞を受賞し、作家デビューを果たしている。

本業の英文学者(現在は作家専業だが)として数多くの翻訳書の実績がある。直近では、チェスタトンの『裏切りの塔』『知りすぎた男』『ポンド氏の逆説 新訳版』、ラブクラフトの『狂気の山脈にて』『インスマスの影』、ラフカディオ・ハーンの『怪談』などなど、お馴染みの作品がたくさん出てきて驚かされる。

もちろん作家としての著作も多く、現在に至るまでコンスタントに新刊を上梓している。ファンタジーノベル大賞系の作家としては、かなり息の長い作家の一人と言えるだろう。

酒仙

酒仙

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新潮文庫版は1996年に刊行されている。

酒仙 (新潮文庫)

ちなみに、『酒仙』が優秀賞を取った際のファンタジーノベル大賞は当たり年で、大賞は佐藤哲也の『イラハイ』。選外の最終候補作で小野不由美の『東亰異聞』、恩田陸の『球形の季節』が出ている。小野不由美、恩田陸を退けての優秀賞受賞となると、気になって来る方も多いのではないだろうか。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

酒好きの方。とにかく酒が好き。飲むのが大好き!という方。えっ!南條竹則って、翻訳者じゃないの??と思っていた方。ファンタジーノベル大賞系の作品を読んでみたい方におススメ。

あらすじ

暮葉家は江戸で代々続く富貴の家柄。しかしかつての大身代は七代に渡って蕩尽され、現当主左近に至ってはその日の酒にも事欠くありさま。とうとう一文無しになり、世をはかなんで死を選ばんとしたその時、蓬莱酔八仙人の一人鉄拐李に救われ、酒仙への道を歩むことになる。その行く手には、邪悪な<魔酒>を広めんとする悪徳業者三島業造が立ちはだかるのだが。

ココからネタバレ

読み手の酔覚を激しく刺激する作品

豊富な教養に裏打ちされた小気味よくも洒脱な物語。酒仙となった左近が、世界を救うために悪役の三島豪造と対決するというメインストーリーはあるのだが、そんなことは実はどうでもよかったりする。

古今東西の極上の銘酒を極上の肴を味わいながら、呑んで呑んで呑みまくる事。この物語では何よりも増してこの部分に重きを置いている。読んでいるだけでほんのりアルコールが回ってきそうな、読み手の酔覚を激しく刺激する一冊。下戸のわたしでもこれだけ、美味しそうなのだから、酒飲みだったらきっとこれは堪らないはず。

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