「卓球場」シリーズの二作目
2002年刊行作品。『赤城山卓球場に歌声は響く』に続く、野村美月の「卓球場」シリーズの続編である。Amazonの書影小さっ!古い作品だからってあんまりだ。エンターブレイン(KADOKAWA)の人、人気作家なんだから初期作品も大事にしてあげてほしい。
前作は女声合唱団R=H=S=V=Oの皆さんが、「ドナドナ」の歌声で支援効果を上げながら、巫女装束のヒロインが卓球の力で世界の危機を救うという、想像を絶した物語だった。書いている自分でも何だかよくわからなくなる程の無茶な設定であった。
シリーズ一作目『赤城山卓球場に歌声は響く』の感想はこちらからどうぞ。
あらすじ
R=H=S=V=O(ロイヤルハーモニースペシャルボイスオーケストラ)の女子大生三人組は松尾芭蕉ツアーの途中、日光東照宮の眠り猫に導かれ怪しげな扉を開いてしまう。扉の向こうで彼女たちを待っていたのは「救世主」を待ちわびる人々の一群だった。何故か鬼退治をする羽目になってしまった三人は、この地に伝わる哀しい伝説を知ることになる。
変な設定だけど暖かく見守るしかない
前回も変な話だったが、今回もそのあたりの基本路線は変わらない。今回の舞台は那須高原。荒唐無稽な状況設定の中で卓球の力で神様と戦うのも同じ。
いやしかし、どう考えてもこの設定ヘンだよヘン!誰か突っ込む編集者は居なかったのか。主人公まわりの連中が多少イカれているのは百万歩譲ってアリだとしても、今時鬼のたたりを怖れて逃げまどう一般民衆っているのかよ!
野暮な希望ではあるけれど
女の子同士でほのぼの仲良くしている空気感はいいと思うし、感動的なシーンも比較的良い感じに書けているのだが、取り巻く周辺環境があまりに無茶過ぎるので、そこまで感情移入できないのである。このシリーズを読んでいくには、自らのツッコミ力は捨てて、虚心坦懐に本作のほのぼの設定を受け入れるしかないものと考える。
ライトノベルなんだし、奇想天外な設定や展開は当たり前。深く考えなくてもいいんじゃない?という気もするのだが、最低限の納得感は欲しいところ。
連作障害か?
もっともデビュー年の野村美月は「卓球場」シリーズで二作、続いて『フォーマイダーリン! 』、「天使のベースボール 」シリーズと、一年間で四作も書いている(年明け早々、更に「卓球場」シリーズの続編が出ているので実質五作)。書く側としても、編集者側としても、十分なクオリティコントロールが出来ていなかったのではないかと、思わずにはいられない。